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外伝(1)

すまん!どうしても書きたいやつに出逢ってしまった!ちょっとだけつきあって……


……いや、まあ、そんなことないんですけどね。

これは最後まで投稿しようか迷いました。

息抜きで書いたやつなんで息抜きで読んでくれたら嬉しいです。読まないという選択肢もアリっちゃアリ、ただ私が泣くだけです。……ぅぅっ。




ぴりりりり…

目覚まし時計の音が響いた。

暖かな日差しが部屋に差し込んでいる!


「ん…朝か。ふぁぁ〜」


勇一は布団から体をおこした。


「とりあえず昨日の洗濯物を洗濯機から出して干さないとな」


勇一は布団から洗濯機に向かった。


「あ〜めんどくさいなぁ、全部自分でやらなくちゃいけないのが一人暮らしの辛いとこだな」


勇一はブツブツ呟きながら、洗濯機の蓋を開けた。

なみなみと水が満ちている!


「……ん、アレ?おかしいな。昨日の洗濯物がないぞ、なんでっ、っわぁぁ!」


中から突然女の子が飛び出した!

勇一は洗濯機から溢れ出た水を全身に浴びた!


「うわわ、な、なんだぁ!えっ!?人!?なんで洗濯機から人がっ!?つうか、水、水凄いこぼれてるっ!水浸し!」


「成功ッ!」


「はぁ!?な、なにがだよ!誰だよ!どうやって中に入ってたんだよ!まさか泥棒ッ」


「ギャーギャーうるさいわね。肝っ玉の小さな男はモテないわよ」


「水の中にいたのかよ!?あ、お、俺の洗濯物はっ!?」


「消滅したわ」


「えっ!?」


「あなたの洗濯物は次元トンネルにより生じた時空乱流に飲まれたの」


「ちょっ、ちょっと待てよ!い、意味がわからない。つ、つうか、君は誰だよっ!?」


「よくぞ訊いてくれたわ」


少女は洗濯機の縁からピョンと降りて勇一の前に立った。

勇一よりも小柄な少女だ。


「私はスフィン・バル・サミコ。宮廷魔術師。以後よろしくね」


「えっ、ま、魔術師って、っえ?な、なにそれっ!?」


「サンドイッチ王国に宮仕えする魔術師、響きはいいけどようはただの小間使いよ。今回は魔王が復活して困ったので異世界の勇者様に助けを求めに来たの」


「…ごめん、ちょっとまって、寝起きのせいか頭がうまく回らない。えーと、ゆ、勇者様って、」


「鈍いわね。あなたのことよ!」


「ええええ〜〜」


――――――――


俺は思わず一時停止のボタンを押し片手で額を軽く押さえた。

斎藤がしつこく進める深夜アニメのDVDを鑑賞中、あまりの展開に脳が追いつかなくなったのだ。

『面白いから!絶対雨音もハマるから!一回見てみろ!DVD貸してやるから!』

とかなんとか、半ば強制的に渡されたDVD。

見ないのも忍びないので仕方無く鑑賞していたが、なんだよこの展開。


軽く息をついてパッケージの裏を見てみる。

『あの頃、忘れていた切ナさをアナタに……』

なにこの紹介文……。

軽い目眩を覚えつつ、それをまた裏返した。

どぎついピンク一面のパッケージに浮かぶタイトル。


『マジカルファラOH!☆スフィンたん』

これ、おもしろい?ねぇ、ほんとにおもしろい?


――――――――


「そんで、なに?大魔王が復活してその…家宝が盗まれたから取り戻したいんだよね」


「家宝じゃなくて宝具。間違えないで!国宝なんだから!」


「……ともかく、そんなの自国民で勝手に解決すりゃいいじゃん。なんでそれを俺がやらなくちゃなんないの?」


「魔王を封じ込めた魔術師が一人、アラモニア・ペペロンチーネの予言に『世界、再び混乱に貶められる時。異世界より現れし勇者、コレを封ず』とあるの……意味わかる?」


RPGをやりこんで勇者は即座に少女の言わんとする意味を理解した!


(その異世界からの勇者が俺をさすわけね……)


「言いたいことはわかったけど、荒唐無稽すぎて理解出来ない」


「もう、グダグダとしつこい!ともかく私に付いてくればいいの!ほらいっしょにいきましょ!」


ついていきますか?

 はい

▽いいえ


「それだよっ、それ!そこが意味わからないんだよっ!なんで俺が勇者なんだよ!ちょっとまってて」


「ん?」


勇者は携帯を取り出して父親に電話をかけた。

眠そうな父親が勇者の鼓膜を震わせる!


「もしもし、親父ぃ?」


『…おう、勇一か。突然電話どうした?今何してるんだ?』


「今から洗濯物干そうとしてるんだ」


『そうかそうか。うんうん、干せる時に干しとかないといかんぞ。最近のお天道様は恥ずかしがり屋だからな。それで要件はなんだ?お前からかけてくるなんて珍しいじゃないか』


勇者はメルヘンチックな発言を聞き流した!


「あ、そうそう、ちょっと訊きたいことが出来たんだけどさ」


『おう』


「先祖に勇者っている?」


勇者は単刀直入に聞いた!


『?』


「だから勇者。勇気ある者と書いて勇者だよ。ウチの血筋に世界を救った英雄がいるとかそういう話ないの?」


『なにバカな事言ってんだ?代々ウチは農家だっていってるだろ。現在過去未~来、ずっと農業で生計をたててきたんだ』


「それが聞きたかった」


『……お前、本当にどうしたんだ?飯ちゃんと食ってるか?毎日インスタントラーメンなんてことは……』


「あ、いやなんでもない。近い内に帰るよ!それじゃ!」


勇者は携帯を閉じてポケットに閉まった。


「ほらねっ!」


「は?」

「だからウチは代々農家だから勇者の血筋なんて微塵も入ってないんだよ。俺だって農大で農業について学ばなきゃだし、そんな俺が勇者なわけないんだよ」


「なにを言ってるのよ?勇者に血筋は関係ないわ。勇者に必要なのは、勇気ッ!」


「……」


「アナタにはその素質がある」


スフィンの目はキラキラと輝いている!


「あ、えっと、その、出来れば遠慮願いたいな……いきなり洗濯機からでてきた素性の知れない人に付いて行くのは、……ほら、知らない人に付いて行ってはいけないって、一番最初に習う事柄だろ?」


「いいから行くわよ」


スフィンは勇者の腕をぐっとつかんで洗濯機に引きずりこんだ!


「ちょっ、わぁぁ〜」


勇者の景色がグルグル回る!

勇者は意識を失った!


―――――――


「はぁッ!?」


えぇ〜、な、なにこの展開。

思わず独り言を呟いていた。


ありえん、超ありえん。

フィクションにリアリティを求めること事態不毛なことだけど、これはないだろう。

な、なんでいきなり洗濯機から女の子が飛び出してくるのかわからないし(大きさも合わない)、その子の髪が非現実的色のピンクというのに突っ込まない主人公も少し頭おかしい。

うぅぅ、理解出来ない。

俺は草冠の萌えより燃えなのだ。女臭いのより男臭い方が好きなのだ。

それだからこんな起承転結があやふやなフィクションは楽しもうとしてもシビアな目になってしまう。

アニメに熱くなるのは、んー、小さい時に卒業したからな。

ああ、そうか。

大人になるってこういう事なんだね……。


―――――――


「うぅ…」


勇者は目が覚めた!

ズキズキと頭が痛む!


「水を飲んだのかな……。ん?こ、ここは」


勇者の視界には青々とした草場が広がっていた。


「目、覚めた?ここはプリンチョコ平原。それはそうともう時間がないわ。スピーディーに済ませましょう。次は伝説の剣を取りにいくわよ」


「……う、夢じゃなかったのか……」


「言うに事欠いて夢とは随分ね。少なくともこれは現実に間違いないわ」


「そうか、うんまぁ、認める、大人しく認めるよ。体験したからね。それより問題はウチの洗濯機がなぜこんな草っ原につながってるのか、ってことだよ」


勇者は手のひらで草を撫でなでた!感触は間違いなくリアルである!


「良い疑問ね!いい?我が国に預言者ペペロンチーネが伝えた一つにこういうのがあるの。『青き満月、渦造る機械に通ず』。青き、というのは、そこの、」


スフィンは勇者の背後にある湖を指差した。

勇者は振り向いた。


「クリームソーダ湖を、渦造る機械とは洗濯機をさす。つまりクリームソーダ湖の水面に反射した満月の月明かりに飛び込むとソチラの世界の洗濯機なる装置に繋がるというわけよ」


「……なにが『つまり』なのかわからない。いやでも仮に異世界の扉がそれで開かれるにしても、なんでウチの洗濯機なのさ?洗濯物がなくなる理由もわからないし。設定がまんまおじゃ○丸じゃないか!これが本当の満月ロード、ってバカかっ!?」


「言ってる意味がわかないけど、洗濯物についていえば、青き満月と渦巻く機械とを繋げる際に発生する時空乱流は予想がつかないものなの。アナタの洗濯物を飲み込んでしまったのは、いわば名誉の犠牲なのよ」


「この際そんな理屈云々より俺の服がどこにいったのかだけ教えてくれ!」


「私にだって、わからないことくらい、ある……」


「無責任な……」


「次元の歪みがどこに通じているかは未知数なの」


勇者はため息をついた。


「もう、いいよ。いやよくないけど。……それより元の世界に帰る方法を……」


「むり」


「は?」


「話を聞いてた?次の満月まで最低でもあと一月我慢しなくちゃ。曇りや雨なら更に一月、ね」


「ちょ、ちょっとまてよ!」


「ん」


「俺は一言も勇者をやるだなんて言ってないじゃないか!それなのにこの仕打ち、あんまりだ!」


「まぁ、人生山あり谷あり。浮き沈みがあるものよ」


「君のせいで沈みっぱなしだよ!」


勇者の攻撃!

スフィンは衝撃をうけた!


「ひ、ひどい」


「あ、ご、ごめん…」


スフィンは目元を抑えしくしくと泣き始めた。

勇者は混乱している!


「そ、その、俺は確かに、引き受けてはいないけどさ、ほら、君のことはわりかし嫌いじゃないんだよ!」


「ううっ……」


「だ、だから、な、泣くなって、な?」


「うん」


スフィンはケロリとしている。


「え?」


「フラン○ースの犬を思い出してただけだから、気にしないで」


「!」


勇者の中でなにかが切れた!


「だぁあ、ぁぁ!もう、やればいいんでしょ!勇者ってやつを!」


「やっとわかってくれたわね!物わかりがよくて助かるわ」


「なんで君がえらそうなんだよ……」


「……失礼。ゴホン。それでは勇者様、こちらへ。この先、先代勇者、シュッピュテ・ゴルゴ・ゴルゴンゾーラの残した伝説の剣があるから、あなたにはそれ手に入れてもらいます!」


――――


時計を見たらもう寝る時間だった。時間を意識したら途端に眠くなってくる。自然と欠伸がでていた。

キリがいいとこで寝よう。


そう思いながら、携帯電話をいじる。新着メールはなし。目覚ましがキチンとセットされているか確認してから、再度メールボックスを開いた。

新たな用事があるわけでもないが中津川からの受信メールをもう一度開き見る。

『ありがとう。雨音は良いヤツだね』

……素直に照れた。


――――――


「こ、これが伝説の、ぶ、武器!?」


「うん、先代勇者ゴルゴンゾーラが魔王マルゲリータを封印した際に使用したとされる魔剣、ラバーカップ」


二人の目の前には岩にある剣があった!


「伝説によるとこの剣は選ばれた勇者にしか抜けないそうよ。幾人も試し、そして挫折していった」


「つ、剣ねぇ……」


勇者は呆れながら棒に手を添えた。


「いいことを教えてあげるよ」


「なに?」


「これ、こっちの世界じゃ通称『かっぽん』とか『がっぽん』って言ってトイレのツマリを直す道具として知られてるから」


「といれ?」


「先っぽの半球状のゴムの部分を便器の穴に押し込んで、引き上げるときの力でツマリを直すんだ」


勇者の握っている物はまさしくソレの棒の部分だった!

半球状の部分が岩にくっついているため、刺さっているようになっているようだ。


「うーん、ま、御託はいいからやってみて」


「仕方ないな」


勇者は手に力を入れてそれを引き上げようとした!


「んん〜」


しかし、効果がない!


「うぉぉぉ〜、おっー」


しかし、効果がない!


「ぬぉう、おおぉぉぉ!」


しかし、効果がない!


「ぬぅおんぉんおんずんどこべろんちょ!あっぷく、ちきりき、あっぱぱぁッ!」


しかし、効果がない!


「ぅぐぅ……、はあはあ、ダメだ、ビクともしない……」


勇者は体力を無駄に使った!


「カッポンとは思えない吸い付き具合……なんだよ、これ……NASAが開発した新素材でも使用してんのかよ。はあはあ、まさか、ホントに伝説の剣だというのか…」


「ちょっとまって!」


「ん?」


「勇者様が抜けないってどういう意味よ!?」


「さ、さぁ。俺に言われてもさっぱり。話の流れ的に俺が格好良くスパンッと引き抜くもんだと……」


「腰に力が入ってないからだわ!もっと真剣にやって下さい!勇者様!」


「はいはい。ふぅ……ふっうぉぉ!」


勇者は『カッポン』を抜こうと再度力を込めた!


「うぐぉぉぉ!」


しかし、効果がない!


「うぐぉぉぉぉぉぉ!」


しかし、効果がない!


「うぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


しかし、効果がない!


「……はぁはぁ、ダメだ。まるで岩の一部みたいに動かない!」


勇者はまた体力を無駄に消耗した!


「これホントに引き抜けるのかよ?」


「え、ええ、予言が外れたことなんか今の一度だってないんだから」


「そうは言っても抜けないよ。まあ、抜けてもカッポンじゃ戦力にならないだろうけどね」


「……変だわ、異世界から現れた勇者が剣を抜く。伝承に間違いはないハズなのに、何か手違いでも……」


呟きながらスフィンは横から『カッポン』の柄を握った!


すっぽん!!


「あ」


「あ」


「「アアアア!」」


カッポンはいとも容易く抜けた!

スフィンは驚き戸惑っている!


「どどどどういうことっ!なんで剣が抜けたの!なんで?どうして!?」


「お、落ち着け!今さっきこの世界にきた俺が答えられるわけないだろ!」


「え、え、ええ!そ、そうよ!焦りすぎだわ!普段専らクールキャラのスフィンが焦るだなんてガラじゃないわ、それで、なんで、剣が、」


「それは、」


辺りが静けさに包まれた!

風が二人の間を通り過ぎる!


「勇者だから……」


「……」


沈黙だけが、後に残った。


―――――――


まさか

まさかの

続きます。


あぁ、眠みぃ。



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