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色々と様変わりして、混乱気味ですが、時代の波に乗って生きていきたいと思います。


と、それはさて置き、一週間に一回の投稿が通例になってしまっているワタクシですが、『活動報告』なる場所にて密かに活動してるのでそちらもよろしく。

こっちは一週間と言わず、毎日更新してますよっ!





うん、嘘です。





昼休みもあと数十分。

お昼ご飯は食べてきたので、これといって問題はないのだけど、部室でくだらない遊びに興じていただけで、貴重な休み時間が終わると思うと、なんだか無性に悲しくなってきた。


「うら、ウラ、URA……、うーん、わからない。エンジェル様は果たして何を伝えたいのかしら」


和水はエンジェル様(俺)が残したメッセージに頭を抱えている。

質問「白馬の王子様はいずこ?」に対して、答え「裏美影さんがそうですよ」という単調メッセージだ。

深く悩む必要はない。

ただの冗談なのだから。


「答えは美影のことなんじゃないか?ほら『うら』だし」


ウラは美影の名字だ。

白々しくも素知らぬ顔でそう言った。

エンジェル様の意図は女同士の彼女を指し示すというブラックジョークで完結している。


「ふーん、いかにも思春期真っ只中な若人が考えそうなもんだな。まったくギャグが悲惨すぎて笑えない」


「ぶ、部長。手厳しくないですか?お狐様のブラックジョークくらい大目にみましょうよ」


「狐様が相手、なら考えるけどね」


「ははは…、部長のジョーク笑えないや、ははは」


正体が完全にバレきっている部長には最早どんな誤魔化しも手遅れである。

結構うまくやったつもりだったのに、一体何がいけなかったのだろう。


「美影を示してるってどういう意味よ?」


乾いた笑いを壊れた玩具のように発する俺に、目を細めながら和水が尋ねてきた。


「いやだから狐が、」


「エンジェル様っ!」


「……そのエンジェル様は名前で『裏美影』を示したんじゃないかなぁー、と思ったわけよ。単純にね」


というか、これが真実である。

だって、動かしてたの俺だもん。


なんとか意図を読み取ってもらってこの話を完結させてもらいたいところだ。


「なにバカなこと言ってるのよ?美影は女の子よ?王子様に当てはまらないじゃない?」


「いやまぁそれは、そうなんだけど」


真顔で真実を否定する和水。そうは言っても真実はそうなんだから仕方ないだろ、

ただ単純に冗談のつもりで動かしただけなんだから、それくらい汲んでくれよ。

と声にならない言葉で彼女に念を送った。


「それに私の質問は王子様は『どこにいるの』よ。名前を挙げられても質問の答えになって無いじゃない」


「だ、だからそこは冗談だから、さ……」


「あ、でも待って、うーん、『裏』……。っは、解ったわ!」


快活に笑いながら彼女は「謎はすべてとけた!」と続ける。

もうなんかどうでもよくなってきた。


「裏よ!裏!王子様は校舎裏にいるということよっ!」


「は?」


俺の話を聞いてください。


「だってそうでしょ?この質問に対して『うら』という答え、間違いなく『校舎裏』を示しているわ」


「考え過ぎだって…」


「えーい、決定決定!そうと決まれば善は急げよ!校舎裏に行きましょう!」


「イヤだよ!ダルい!テメー一人で行けよ!」


断固拒否するのには訳がある。

校舎裏は、年中日が当たらない場所にあるため、ジメジメとしていて、大変居心地がわるいのだ。

普通の高校だったら不良のたまり場とか愛の語らい場とかになっていてもおかしくない素敵ワード校舎裏だが、うちの高校に限ってはそんなことなかった。

設計者はなにを考えて造ったんだ?と疑問に思うほど不衛生で、そこにいたら数分で気が狂いそうになるほどである。

校舎裏には、焼却炉があるのだが、ダイオキシン問題かなんかで使われなくなったため過去の遺物になりさがっており、それがまた気味悪さを醸し出していた。

そんなこんなで生徒はもちろんのこと先生もめったに足を踏み入れない為、草木がボーボーでジャングルのように繁茂しているのが現状である。

今は冬なのでマシだが、夏は蚊が大量発生する魔のスポットになっていた。

入学したての時、探検と称してまわった以来、一度も訪れていない。


「そう言うなって」


ぽん、肩に手が置かれた。

振りかえらなくても、気配で誰かわかる。

部長だ。

二人を騙そうとしたことに後ろめたさなど感じていないが、なぜか視線を部長に合わせることができなかった。


「私は今から理科室に用があるからお前ら二人で校舎裏に行ってきなさい」


「はっ!俺に面倒事押し付けて逃げる気ですね!?」


部長は机の上に放置されていたアルコールランプをつかむと、指差しながら不敵に笑った。


「私だって本当は和水の王子様に会ってみたいが、理科の先生に昼休みには返すっていって借りてきたんだから仕方ないだろ」


「こんなバカなことのためにこんなもん借りてきてんですかっ!」


今回理科室から借りてきた『暗幕』『アルコールランプ』が活躍したところなんて微塵もない。

それどころか、煩わしく思って使用を断念したほどだ。


「雰囲気をだすには必要不可欠だったんだ」


よくもまあいけしゃあしゃあと言えたものだ。


「先生もよく貸してくれましたね。アルコールランプはまだしも暗幕まで…。普通、理科室に備え付けられてる備品は貸し出ししてくれませんよ。それに常識で考えてみれば、アルコールランプも貸してくれるわけないじゃないですか」


火をつかうアルコールランプは通常、教師が立ち会いのもと使用しなくてはならない。

それを怠るのは職務怠慢に他ならないだろう。

部長がどんな手でこれらを借りてきたかは知らないが、随分とおざなりな学校である。


「先生には炎色反応の実験をするから貸してくれと頼んだのだ」


「炎色反応?」


理系の友達がよく口にしてる成分が火の色を変える、というアレか。


「勉強熱心で感心、事故起こさないようにね。ってな、普通に考えればアルコールランプなんかなくても、チャッカマンさえあれば事足りる、ということに気がつかないんだから笑える話だ」


「あんた最低だ…。先生欺いてアルコールランプを借用し、その用途がコレって、…バカだろ」


その先生も通常、一般生徒には、火を扱わせないハズ。ただ、優等生の猫を被った部長だからこそ借りれたのだろう。

二重の意味で先生を騙しているのだ。


「ははは何を言う。実際、雨音が来る前はキチンと実験してたぞ。この日の為に日曜に東急ハ○ズで道具を調達してきたんだ。いやー、綺麗だった。炎が紫黄色赤オレンジと様々な色を見せてくれるんだ。特にホウ酸の緑が美しくて……、知ってるのとやってみるのとではやっぱり違うね」


「コックリさんよりそっちに呼んでくださいよッ!」


超たのしそー!

なんでもっとはやく飯くって行かなかったんだ、俺ッ!

どうせまたバカやってんだろう、と高をくくってたのが間違いだった!いや、まぁ、実際その通りだったんだけど。


「私は食塩の色が一番好きだわ」


「なんだよ和水も実験したのかよ」


くそう、実験をエンジョイしてやがったのか。

悔しいぜ。

なんで俺の時はコックリさんなんだ。


「私だけじゃなくて美影も参加してたわよ。実験終わったらすぐに用事があるって行っちゃったけど」


「美影も?」


「用事とか言ってたけど本当はコックリさんしたくなかっただけに違いないけどね。中休みからやってたのに実験が終わった瞬間行くんだもの、付き合いが悪いったらないわ」


美影はコックリさんにトラウマがあるそうだから仕方ないだろう。小学生の時の友人が入院、だっけ?

……冷静に考えたらやっぱり恐ろしいぞ、コックリさん……。


俺、ルールかなり犯してるけど大丈夫かな……、へ、平気だよね!だって俺の相手はお稲荷様じゃなくてエンジェル様だもん。

悩む俺の横を通り抜け、部長は椅子を踏み台にすると、カーテンの代わりにつけられていた黒い暗幕を取り外し始めた。


「ま、そんなこんなで私は片付けしとくから、お前たちは校舎裏でもなんでも行くがいい。暗幕を理科室に持って行くのは大変だが、我慢して一人で頑張るんだ。偉いだろ?」


「自業自得じゃないですか?俺は理科室の物に手を触れてませんし」


「どうとでも言うがいい。私は純粋に実験を楽しめたし、コックリさんも調査することが出来たから満足なのだ」


「部長はそれでいいかも知れませんが、俺は納得行きませんよ。和水の王子様になんて興味ないし、ましてや部長ならあのコック…いや、エンジェル様についても解ってるんでしょ?」


タダの悪戯だということに。

信じている和水の手前、おおっぴらには言えないが、部長はとっくに真実に辿り着いているハズである。

今までの口振りからも、それが伺える。


「だから、こそ…」


暗幕を外し、椅子から降りて、俺の正面に来ると彼女は息がかかる距離で囁いた。


「和水の純朴さを崩すことを、私はしたくないんだよ」


「……それってどういう意味です?」


噂の本人の和水さんは、部室の出入り口で俺たちの話が終わるのを今か今かと期待に胸躍らせて待っている。

確かに瞳は澄み渡って輝いているけど。


「端的に言えば、和水にバラされたくなくば、校舎裏に行け。そういうことだ」


単なる脅しじゃん。


「べ、別に俺は和水にイタズラしたのは俺だって打ち明けてもいいから、脅迫には屈しませんよ」


「ほう、和水は怒るだろうが構わないのだな」


「はい」


「私も一緒になって激怒するが」


「は?なんで?」


「さも今知ったかのように貴様を叱りつける」


「いやいやいや、それは卑怯でしょ」


「それプラス、美影もきっと怒るだろう。雨音さん!なんてことをっ!お稲荷様に逆らうだなんて恐れ多い!今すぐ稲荷神社に油揚げをお供えして下さい!ああ、天にまします我らが神よ!この愚か者に裁きの雷をっ!」


似てない物真似、結局罰を受けている、そんな突っ込みをする気も起きなかった。


「美影に、言うつもりですか……?」


「当然。実験には参加してたし、コックリさんの結果は知らせるつもりだったからな。まあ、ある人物がここで和水に従えば運命は変わるかもしれないが…」


うう、脅しには屈しないように頑張ってきたのに、とどのつまりこうなるのね……。


俺はガックリと肩を落とした。もう尽瘁だ。


「…和水、校舎裏に行こうぜ」


振り返って、すぐに和水を呼びかける。

部長は満足そうに頷くと、置いてあったクリーム色のカーテンを掴み、椅子をまた踏み台にして、元のように吊し始めた。


「なんで急に素直になるのよ?あんだけ渋ってたのに」


「うるせー、俺にだって色々あるんだ」


背中を押して彼女を部室の外に追い出す。

今、部長とコイツを一緒にしとくのはマズい。

部長のことだから悪意からポロリと口を滑らせる可能性がある。そうなったら十中八九美影の耳にも届くことだろう。

『雨音さんなんて事をっ!こういう心霊現象はバカにできないんですよ!今すぐ稲荷神社に謝りにいかなくては!』

とか言い出すに決まってる。

はぁ。


「それじゃ部長。行ってきます」


「はい、行ってらっしゃい」


振り返りもせず作業を続けたまま部長はそう返事をしてくれた。




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