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第23話

前書きの時間です。

さて、今回も書くことありませんね…。


というかアレですよ、今回の投稿で71回目の投稿になるんですけど毎回しっかりした前書きが書けるわけないんですよ。…前もそんなこと行ってた気がするなぁ…。


さ、さて、それでも私は前書きを書き続けます!それが私の使命だからです!


次回作『前書きウォーズ』!

コレが終わったら執筆開始しようかな…。





「雨音ぇー、美影ぇー」


中休み。

二時間目の数学のダメージを引きずりながら、なんとかノートを書き上げ、友達とのおしゃべりに花を咲かそうかと席を立った時だ。

廊下から俺と美影を呼んでいる声が響いた。

視線をそちらに流して見てみる。土宮芳生がピョンピョンと飛び跳ねながら手招きをしていた。

無言で美影と目配せをする。

「はあー」

俺たち二人は同時にため息をつきながら、お互いの決心を固める。しょうがないので廊下に出て話を聞いてやる事にした。


「ふふん、来たね」


開口一番鼻で笑ってから言った。

何を偉そうに…。


「お前が呼んだんだろうが」


ついキツい口調になってしまった。


「どうかしましたか?」


そんな俺とは対照的にやんわりと美影が芳生に尋ねる。

芳生は一回大きく頷いてから、腰に手を当て、言った。


「いわせてみてぇもんだ!」


「は?」


気のせいか、最近俺の理解を超える出来事が多い気がする。

目の前の彼はなんの話をしているのか俺の思考が追いつくのに幾分か時間を要しそうである。


「何を?」


「ふふっ、よくぞ聞いてくれたね!それは朝の事だった!」


以下芳生の回想(要約)入りまーす。


----------


「おはよ、楓…」

「おはよう。どうした芳生目の下にクマが出来てるが…」

「うん。昨日ちょっと眠れなくてさ」

「ふーん、大丈夫か?」

「うん、あ、楓昨日のゾンビ映画観た?」

「ああ、観たな」

「あれさー、すっごくこわかったよねぇ」

「そうか?無駄にゾンビがイキイキしてて恐怖感が台無しになってた気がするが…」

「いやいや、そんな事無いよ!あの走るゾンビ達の恐ろしさといったら夜眠れなくてなったほどだもん…、あ、いや別に怖くはなかったんだけどさ」

「そうだな。そもそもホラー映画はフィクションだから別に怖くもなんともないよな」

「…そ、そうだね。怖くなんかないよね!」

「ああ、ホラーでこわがるのは女子供だから俺らくらいの年になるとああいうパニックホラーは冷めた目で見ちゃうよな」

「こ、怖い話とかは?」

「は?」

「楓は怖い話苦手じゃないの?」

「別に」

「怖いものとかは?」

「特には」

「…」


----------


「と、言うわけさ!」


以上回想終わり。

取りあえず朝の楓と芳生の会話らしい。


「えーと、どういう意味ですか?」


「美影わからないの?もうしょうがないな、説明してあげ…」


「わかった!芳生はゾンビ映画にビビって眠れなくなったんだ!」


「ち、違うよ!今はそういう話をしているんじゃないよ」


ズバリの指摘に芳生は顔を赤くしながらかぶりをブンブンとふった。

バレバレだ。

ビビりここに極まれり。昨日テレビ放映されたパニックホラーで、恐怖を感じ夜睡眠が満足に取れなかった、というところであろう。


「楓をギャフンと言わせるんだよ!」


「…」


はい、意味わからなーい、


「俺のやつのほうが正しいだろ」


「と、ともかく僕は誓ったんだ、怖い話して楓をギャフンと言わせようと!」


「はぁ」


美影が 曖昧に笑いながら頷く。

見てわかる苦笑いだ。


「それで私たちはどうすれば…」


「と言うわけだから、協力してよ!」


「「は?」」


声が美影とハモったよ、HAPPYアイスクリーム!



「つまり芳生さんが楓さんに怖い話をして、ギャフンと言わせればいいわけですね?」


「イエス!」


そういう事らしい。

芳生の言いたいことをまとめれば…

楓に怖い話するための自分自身の怖い話がないから、俺達にしてもらい、それを楓にする。

なんだかわかりにくい事になっているようだが、要は、俺と美影が芳生に怖い話をすればいい、ということらしい。


「何で?」


「話のストックがないからだよ!」


ああ、つまり芳生は怖がりだから積極的にそう言う話を聞こうとしないから、自分の持ちネタがないのだろう。

まぁ、俺もそんなにないけど。


「僕には楓をビビらせるだけの話術と話をもってないんだ…」


「話術?」


話がないというのはわかったが、話術とはどういうことだ。

つまり、話し方が出来ていないって言っているのか。


「僕が怖いと思った話を他の人にすると、…怖くないって言われるんだよね…」


「あぁ、たまにいるよね。そういう人」


「話し下手な人ですよね、意外です。芳生さんはそういうタイプの人には見えないんですけど…」


隣の美影が首を傾げながら、芳生に言った。

芳生は大袈裟に首を横に振って否定をし、声をわざとらしく大きくしてから反論する。


「僕はキングオブ口下手だよ!もうこれでもかっ、てくらいに早口言葉が苦手なんだ!にゃまむぎにゃまごめにゃまたまご、ほらね!」


わざとやってるとしか思えない、その点立て板に水なんですげど。

まぁ、口下手というのは本人談だけど認めてあげるかな。


「はあ、でもどうして私達なんですか?」


美影が質問をした。

言われてみればそうである。

話術を習うのなら部長あたりがむいてそうだがわざわざ俺と美影を訪れるというのも疑問だ。

「お化け屋敷がすごかったから二人なら得意分野だと思ったんだ」


「ああ、文化祭の出し物ですね」


「うん、僕は全然怖く無かったけど、なかなかよくできてたからさ」


分かりやすいくらいに動揺する芳生。キョロキョロと視線を泳がせながら美影の質問に答えた。文化祭のお化け屋敷か…、そんなにクオリティ高く無かったがそう言われるとなかなか嬉しいものである。


「ま、まぁ、試しに怖い話してみろよ」


照れを隠すように早口でそう言った。


「いいけど、期待しないでよ…」


芳生はそういうと少しだけ声のトーンを落として語り出した。

----------

男が一人暮らしを始めたんだって。

新しく住んだアパートは、白い壁もいまやくすんだクリーム色に変色し、至る所に亀裂が入っているようなボロボロなアパートだったんだ。

立地条件も悪く、家賃はその分安かったらしいんだけどね。

そんな所で何日か暮らしていたある日。

男が寝入ってから何時間か過ぎた時だった。

ガタガタガタ…

そんな音で目を覚ました。

窓が風で鳴っているのかと思ったがどうやら違うみたいだ。

音は外からでなく中から響いていたんだ。

男は自らの恐怖心を振り払うかのごとく電気の紐をひいた!


バァァァン

ギャアア!


二日後男は死体で見つかった。

----------


「どうかな?」


「意味分からん」


話終わってから感想を求めてきた芳生に答える。


美影は話の展開がよくわかっていないようだ。芳生と俺とを見比べるように視線を言ったり来たりさせながら、クエスチョンマークを頭上に浮かべている。


「今のどこが怖い所なんですか?」


俺の耳元で小さく訊いてきた。


「芳生に言って…」


俺も理解できていないから美影にはそう答えるしかなかった。

美影は素直に俺の言葉に従う。


「何があったかわからないところが恐怖なんじゃないか」


「そ、そうですかね…」


話のオチ部分を説明してくれているみたいだけど、全くもって理解出来ん。

肝心なところが擬音で誤魔化されているなんて論外だ。


「オチと展開をしっかりしようぜ」


「しっかりってどうすりゃいいのさ」


提案したら質問された。

うーむ、よくわからないが、やっぱり展開がしっかりしている話ほどストーリーの筋道が明確に引き立つものではないだろうか、ラストに迎えるオチも盛り上がるし。


「これじゃ男が理不尽すぎるだろ、無差別に殺害されただけじゃん、描写を多くしないと誤解されるぞ」


「誤解?」


「電気つけて見たのがゴキ○リだったとか…」


「恐怖の方向性が違うよ!」



そうは言っても実際そう思ってしまうのだから仕方ないじゃないか。


「雨音さん凄いですね、しっかりとしたアドバイスです!」


「そうかな…」


美影が俺の横で感心な声をあげているけどあまり嬉しくない、だってそのまんまの事を言ってるに過ぎないないんだもの。


「じゃあ何?どうすれば良いの?」


逆ギレぎみに芳生が訊いてきた。


「だから最後が粗っぽすぎるだって、もう少し描写を丁寧にする必要が…」


「描写を丁寧、多くする…男が死ぬシーンを多くすれば…」


「そういう事じゃな…」


「私に任せて下さい!」


「へ?」


突然、美影が名乗りを上げた。嬉々とした表情のまま続ける。


「男性が死ぬシーンを多くすればいいんですね!任せて下さい、そういうの得意です!」


「はぁ」


その勢いに芳生もたじろいでいる。

得意ってなんやねん。


「こういう文を付け加えたらどうでしょう?『二日後、男は遺体で見つかった。男の臓腑は獣に食われたかのように撒き散らされている、部屋が一面真っ赤な血の海になっていた。男を殺害した人物はまだ見つかっていないが、これだけの被害、人の成せる技ではない、と事件担当の刑事はかたった。目撃情報によると犯人は窓から逃走、そのさい目撃者は語る、逃亡者の背中にはオーガがいた、と』…どうですか?」


「どうもこうも…、ちょっとクドいかなー」


そしてエグい。その上になんだか地上最強の男が絡んだミステリー小説みたいになってるよ。アクションにしようぜ、あの人が絡むんだったら。


「もう雨音、文句ばっかぁ」


「む、なんだよ芳生、アドバイスくれって言ったのお前だろ?」


「そうだけどさー、あっ、それなら雨音はなにか怖い話ある?」


挑発的な言い方である。

頼まれて指摘してやってんのに文句言われるとはこれいかに?さすがの俺もカチンときちゃうぜ。


「怖い話ねぇー」


そうは言われても最近そう言う特集のもの見てないからな…、ほんとに古いのしかないが。


「トンカラトンとか…」


「なにそれ?」


「ん?知らないほら、花子さんの…」


----------

詳しくはWebで!

----------


「「こわっ!」」


話を知らないらしい二人に掻い摘んで説明してあげた。話が終わると同時に二人は声を上げた。


「集団とかもうどうしようもないじゃん!えげつなーい!」


「うう…、夜道を一人で歩けなくなりそうです」


「そんなに怖かったかな?」


「怖いよ(です)!」


俺的には今の二人の勢いのほうが怖いんだが。


「おーし、これで、楓をギャフンと言わせる事が出来るよ!ありがとう、雨音、美影!」


「はあ」


「私は別になにもしてないですが…」


こうして彼曰くとっておきの怖い話をひっさげて意気揚々と自分の教室に帰って行ったのだった。


大丈夫だろうか?




放課後。

美影と一緒に部室にいくと、楓と芳生の二人が椅子に座って雑談していた。

その会話に「うっす」とだらしない挨拶で加わる、美影も俺の後ろで「こんにちは」と挨拶をしていた。


「どうだった?」


早速中休みの成果を訊いてみた。


「ダメだった…」


芳生は残念そうに呟いた。


「そうですか、…ドンマイです、芳生さん」


「はぁぁ〜、楓ホントに微動だにしないんだもん。終いにはあったねその話って言われる始末だし、悔しいったらありゃしないよ」


「やはり楓さん。一筋縄ではいきませんね」


「何の話だ?」


当の本人の楓がノンビリとした口調で二人の間に話って入った。


「お前を怖い話でギャフンと言わせるんだとよ」


「バラしちゃだめだよ雨音!」


さっきの会話でほぼばらしているようなもんだろ。


「怖い…?…ああ、トンカラトンか。懐かしいな」


どうやら楓は知っていたらしい。

なるほどそれならば冷めているのも頷ける。ホラー映画も二回目はなんだかんだで耐性つくもんな。


「その程度ならたくさんあるだろ、…ムラサキカガミとか」


「え、それどんな話?」


き、貴様ぁぁ!

何てことしてくれたんだ、忘れてたのにまた思い出しちまったじゃないかぁ!この兄弟がぁ


「20歳まで覚えてると呪われるって言葉」


「うわぁああ!なんてことしてくれたんだぁあ」


「………」


芳生は心の中の俺と同じように絶叫を、美影は無言で俯いた。

合唱。




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