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第2話

第2話です。

だけど前書きを書くのは七回目という素敵事実。


ある日の娯楽ラブの情景。


「和水、お前、胸ないな」


トランプゲーム大富豪を一番上がりのため暇を持て余した部長が髪を弄りながら心底どうでも言い様な質問を和水相手に開始した。


「!な、なんの話かしら秤部長?」


和水が焦りながら言い返したが、部長には効くはずもなく、すでに彼女のフィールドワークは展開している。

ずっと部長のターン。


「そんなに平らだったらブラする意味ないだろ」


「ベジータとブルマの娘でトランクスの妹の話のことかしら?」


あぁ、あの名前には吹いたなぁ、でもその弁解には無理があると思うぞ。って、あの二人はなんつぅ会話してんだ。

健全な男子が三人もいるという事を時々でいいから思い出してあげて下さい。


「お前には形を整えるほどないだろ洗濯板が」


あの堂々と昼間からぷちセクハラやめてもらえますかね。

相手が和水でも不憫でならないッスよ。


「あ、あるわ!失礼ね!」


ないね。

和水が付けてるのは大胸筋強制サポーターだ、って金色の卵たちが紹介してたよ。


「ふん、何があるんだ?ウチのクラスの男子の小田原君のほうがまだ巨乳だぞ」


あぁ、あの肥えた卓球部の方ですね。

その先輩は以外と強くて下級生から『俊敏なデブ』と呼ばれて慕われているというのを卓球部の友達に聞いた事がありますよ。

本人の前で言ったら怒られるって言って笑ってましたけど。


「し、脂肪と一緒にしないでくれませんか?私のは桃源郷に実った桃みたいなものなのよ」


「フン、胸は脂肪で出来ている事知らんのか。それにお前が桃だったら小田原君はスイカ、美影にいたってはかぼちゃだ、大会とかに出されるやつな」


美影は、確かに、デカいけど…、いやでも少し落ち着こうぜ。

不在者を会話にだすなよ。

ちなみに美影は外の玄関掃除で遅れていくから、と俺に伝言を頼んだ。

「そう思わないか、男子諸君」


急にこっちに話を降るなぁぁー


「…」 芳生、残り4枚


「…」 俺、残り3枚


「…」 楓、残り9枚


三者三様互いに無言。

誰も部長の問い掛けには答えない、当たり前だろ。


「私がもし男だったら彼女にはせめて片手にあまるくらいは欲しいところだぞ」


聞いといて男子の反応を気にせず、部長は空中で手をにぎにぎしながら戯言をほざく。やめて下さい、なんか嫌です。


「じゃ、そういう部長はどうなんですか!?」


「む、私か?私は…、そうだな、自分の物を形容するのは難しいが…、ふむ、桃よりはデカいデコポンだ」


注)デコポン 九州らへんの柑橘類。詳しくは知らん。


「部長だって私と似たり寄ったりじゃない!」


「黙れ!お前のは−A。私のはBだ!美影は多分…、アンノウウン!私では測定不能だッ!」


なんか今日の部長テンション高いな。

あっ、8切りで。

コレで残り1枚か。


「美影のは寄せてあげてるに違いないわ!贋物よ!」


「ふむ、確かにあれは少しデカすぎる気がしないでもない」


確かにデカいちゃあ、デカいが、…なんか誇大イメージになってる気がするな。


「美影には私達の苦労が分からないのよ」


「『達』にするな!」


頭の中に流れる懐かしのmelody。なんつったけ

マラソン早くて、Tシャツが伸びなくて匍匐前進はやくて、年取っても垂れない〜♪


「私なんて毎日牛乳飲んだり努力してるのになんの変化もなしよ!それなのに美影は…、全く、これが格差社会ってヤツね!」


うん、全然違う。


「今度ビシッと言ってやるべきだな」


「えぇ、その通りよね」


うわぁ、なんか二人燃えてるよぉ。


そんな時、部室のドアがノックされる音が…、懇切丁寧に扉から失礼しますと言って入ってきたのは裏美影。

なんつぅバッドタイミング。

美影、逃げてー!


「すみません。掃除でおくれちゃいまし…」


「「美影!」」


「はいぃ!?」


二人一遍に声を荒げる。

ビクビクと怯える美影。

震えてる姿も可愛いなぁ、…って、そうじゃない、どうにかして助けなくっては、あぁ、しかし体が動かない、どういう事だ、…オレも彼女の事を知りたいのか!?否、断じて違うオレは持ち札『10』をどうにかして場に出し、平民ランクを手に入れ無ければならないのだ、そうだ!勝負を途中で投げ出さない為に体が動かないのか、そうかそうかなるほど、ならば、仕方無いな、仕方無く指をくわえて、耳をダンボにするしか俺には出来ないのか!(この思考2秒)


「なんですか…?」


頭に疑問符が飛んでる美影を尻目に二人はセクハラ質問を投げかける!


やめろー、美影をいじめるなー(棒読み)


「サイズは何センチだ?」


「どうすれば大きくなるの?」


「はい?」


二人して別の質問をしてるが構わない、さぁ、美影、答えろ、俺にも答えを教えくれー。


「私のサイズ?」


「そうサイズよ!それからどうすれば大きくなるのか教えて!」


「はぁ、…私は22.5ですけど、…うーん、歩けば大きくなるんじゃないですかね」


「22.5?」


22.5?小さすぎやしないかっって…ん、…足のサイズじゃねぇか!!


「ちょっと待て、私達が聞いているのはむ…」


「なによぉ!小さいじゃない!やっぱり偽造してたのね!後で私にもそのお店教えてね!水道橋財閥がお店買い取るから!それより、美影、私も一緒にウォーキング始めるわよ!頑張りましょう!」


俺と同じ事に気付いたらしい部長の声は和水の声に打ち消され その和水はというと満足そうに椅子に座って、「さ、なにか決める事があるって部長言ってましたよね。早くきめましょうよ」なんて言ってる。


一方部長はというと、

「…ま、いっか」

なんて呟いてからこの話題には飽きたようだ。一人わけがわからないといった顔つきの美影も席についたし、状況はだいぶ落ち着いたみたいだ。いやぁ、いまいち腑に落ちない点があるけどこれにて一件落着だな。良かった良かった。


「おし、あがり」


「雨音が大貧民ね」


「は?」


今日の教訓、ゲーム中に目を離すと飛ばされる事があるので注意。



「誰が大貧民になった?」


「「雨音でーす」」


「異議あり!二人は私を勝手に飛ばしました!」


「スキップのカードが連続で出たんだ。諦めろ雨音」


UNOの話はしてないんだよ!楓が下らないジョークを言ったが、今の俺にはそんな事気にしている余裕はない。


「部長!これは大富豪のルールに反した行為です。よって私はやり直しを要求する!」


「ゲーム中に注意散漫はよくないな。ビリは雨音が、ふむ、…よしよし」


なにがいいんだよ!

しかし、裁判長(部長)の決定は絶対だ。

仕方が無く俺は席につく。

楓も芳生もニヤけながらこっちを流し目でみている。

くそ、次はリアル法廷で会おう!


「それでは会議内容を発表しよう!」


部長は声高らかに宣言す。


「文化祭の出店についてだッ!」



はい?

みんな目が点になっている。

文化祭?


文化祭と言ったか?

確かに文化祭まであと二週間ちょいだが…


「聞こえなかったのか、文化祭の出店について!何か意見はないか?何かしたいことないのか?」


「部長、それマジで言ってるんですか?」


いいぞ、楓、もっと言ってやれ。

お前のクラスは焼きソバでうちのクラスはお化け屋敷。

色々と準備が忙しくてクラブで出し物なんてやってる暇なんて無いってな!


「私は本気だぞ。何か意見を言う権利を一人ずつに与えてやろう」


「そういう話はしてませんよ、大体なんで急に…」


「楓、体育祭は知ってるな?」


「は?体育祭?今は文化祭の話をし…」


楓の意見を制するかのような部長の瞳の強さに楓は言葉を詰まらせた。


「体育祭について御存じですか、と尋ねているんだ」


「体育祭だったら九月の後半に終わったでしょう。あの時は酷い目に会いましたからね」


楓が皮肉を飛ばすが部長には効かない。彼女のフィールドワークはすでにATフィールドとかしている。


「そう体育祭だ。体育祭は体育系の部活が活躍するから体育祭というんだ。では、文化祭は?簡単だ、文化祭は文化部が活躍するから文化祭というのだ。だからチアリーディング部なんかは文化祭で活躍しちゃいけないんだ。っと、これはちょっと言い過ぎだな。ところでわが部は文化部かそれとも体育部か?はいっ!芳生!」


「僕ですか?…体育部では無いですね。多分」


「そう文化部だ!ということは!文化祭に出店しなくてはいけないわけだ!」


風桶論もびっくりな発展だ。

第一娯楽ラブは体育祭も出たじゃないですか。部活対抗リレーで、芳生と楓が凧揚げしながらグラウンドを一周しろと部長に命令されてやったはいいけど結局、凧引き摺り大会になって会場から大爆笑くらったんだっけ、あれは可哀想すぎた。

しかも部長と和水も笑ってたし。


「そこでわが部では何を行うか?それでは雨音!」


「は、はい!な、なんすか!?」


急にご氏名を受けてびっくりする。何をするかだよな…えっと…、


「部活の成果とか、アンケート…、じゃないですかね…」


「つ、つまらん…、なんてつまらない意見だ…、一高校生として信じられない言葉だな」


そこまで言わなくてもいいじゃないですか…、


「私が聞きたい事はそうじゃない」


部長はもう一度俺に質問した。


「お前、メイドとバニーどっちがいい?」


「…は?」


「メイド服かバニーガールどっちが好きだ?」


「え?」



部長が聞きたい事って、…何?


「あぁー、もうわからん奴だな!メイド喫茶とバニーガール喫茶、どっちがやりたい?」


「そ、そんなの学校で出来るわけないじゃないですか」


「客の呼び込みでその格好をするだけだ、さ、どっちが好みだ?」


部長がバニーやメイドの格好を…


悪くないな…、あの柿沢秤部長が殊勝な態度で『ご主人様』なんて言うわけか、…たまらん。


和水にしたって黙ってりゃ美人なんだ。その和水がそんな格好すればどんな男だって虜になる。俺も例外ではない。


そして、美影。


美影があ〜んな格好を…


う、ぶ、は、鼻血が…


「…メイド」


「メイドか、うむ、よくわかった。芳生、ネットでメイド服を頼め」


「あらほらさっさー」


部室につないであるパソコン(こんなクラブにパソコンがある理由は部長曰く秘密らしい。…俺も知りたくない、これ以上突っ込めば戻れなくなりそうだから)で芳生はそういうサイトに飛ぶ。


和水が

「ネットさん?外人?商人かしら」なんて言ってるが、誰も真実を彼女に教えてずにいる。

あいつが欲しい物があるって言ってたからamaz○nで買い物しろって言ったら『アマゾン?日本で行ける範囲にしてくれないかしら』なんて言った前例がある。

つまりそういう人なのだ。


「Lサイズだ」


部長が芳生に詳細を伝える。

…L?デカくないか?部長や和水、美影はMでも大きすぎるくらいじゃないかな?へたしたらSくらい小柄だと思うんだが。


「部長Lサイズって大き過ぎるんじゃないっスか?」


俺は考えついた疑問を直接部長に伝えた。






「そうか?男の子だからLサイズくらいだと思ってたけど、お前はそれじゃでかかったか、私とした事が固定観念に捕らわれてしまってたわけだな。いかんいかん、芳生訂正、Mサイズだ」


「…え」



なんつぅた。今。


お、と、こ、の、こォォォ?


「部長!?」


「雨音はメイド服をがいいんだろ?」


「はい、俺はバニーみたいに明らかに露出が多く狙ったのより、ちょっとフワフワしたゴスロリ系の方がいい…って、違いますよ!誰がそれを着るんですか?」


「お前がメイド服を着て客引きをするんだ」


「はぁ〜、なるほどー、俺がね、はっ!?俺が!?何故に、WHY!?」


「大貧民になったんだろ?そういうことだ」


「なるほど〜、罰ゲームかぁ、…って、流石にそれは無理っす!!!」


そんな慌てる俺の様子を生暖かい瞳でみている他の部員の皆さん、特に男メンバー、楓はビリにならなくて良かったー、まぁ、頑張れって目が語ってる。

芳生はすでに部長にノリノリ。

和水はまだ「ネットさんがメイド服売ってるの?」とか言ってるし。

美影は「わぁ、楽しそうですねぇ」って、天使のような悪魔の笑顔。


ダメだこいつら、早くなんとかしないと…


「部長、予算どれくらい?」


「予算よりデザイン優先だ。私は茶色地が入ってる方がいいんだが」


「部長…、本当にそれは、そんな羞恥勘弁して下さい。お願いしますから、部長!」


マジでこいつら注文しそうだ。今、止めなきゃクラスメイトから卒業するまでメイド・イン・ヘブン(天国にはメイドがいる)とか言われるに決まってる。


「ほら、そういう文化祭過ぎたら着なくなるような物に金かけるのってナンセンスですよ」


「お前が普段着にすれればいいだろ」


「いや、着るわけないじゃ、…って、だから芳生!それ以上リンクをクリックすんな!ワンクリにひっかかっても知らんぞ!」


「輝け僕の光マウス!飛び越えろスーパーリンク!…部長、このデザインなんて秀逸じゃない?」




結局、


俺の必死の抵抗で部室の掃除をする事でメイドは勘弁してもらったがやってることがリアルメイドだと考えると少し虚しい気分になってきた。


「そこ、埃。もっと隅っこの方もちゃんとやれ、暖房の下、コンセント回りは丁寧にな」


「はぁ」


部長が小姑みたく俺に命令するが、返事の変わりに口から不満が出そうになるのを無理矢理押さえた息がでる。


そんな部長はというと紙になりやら書き出して図画工作に忙しいようだし、芳生と和水は賭けなしインディアンポーカーを始め、楓は本を読み、美影は数学の宿題プリントをやり始めた。


時々思い出したかのように楓と美影が会話をするので、あの幸せそうな雰囲気は俺への当て付けかどうか判断に迷うところだ。なぁ、楓?


「出来た」


部長が声をあげた。

それに反応して、みんな部長を見る。


「出来たって、なにが?」


「これだ」


和水の質問に部長は先ほどまでなにやら書いていた紙を頭の上に掲げた。


「あ、これ、知ってるわ。なんていったけ?ほら、あ…、阿骨打!!」


「阿弥陀だ。あみだくじ」


「し、知ってるわよ!それくらい。私が言いたいのはそれで何するのかって事よ」


「文化祭で何をするか、何にも意見が出なかったから私が決めたのだ、コレはそれに必要な道具だ」


パンパンと出来立てほやほやのあみだくじを叩きながら部長は言う。

文化祭の話がまだ続いていたらしい。

いいじゃないか、このまま何も決めないで解散で。


「何かやるんスか?」


文庫本から顔をあげ、楓が嫌そうに言った。


「む、何だね楓?その反抗的なまなざしは?」


「いや、結構焼きソバで忙しいんで俺は参加出来そうにないなぁ、…なんて」


「そうかな?焼きソバなんてインスタントでいいじゃない?あの焼いてないUFOとかで」


インスタントなんだから仕方無いじゃないですか、煮そばでも。


「…わかりましたよ。やりますやります。で、何やるんですか?」


これ以上何を言っても暖簾に腕押しだと判断したのだろう、反逆の楓終了。短かったな。



「ふ、さすが楓、よく聞いてくれたな。では、発表しよう!」


部長は大きく息を吸い込んでいい放った。


「他クラスの出店調査だッ!」


間。


「「はぁ〜!?」」


一呼吸おいてからみな一様に叫んだ。


他クラスの出店調査ってあれだよな、評価すんのかな、他クラスを…


「なんですか、それ?」


俺は自在箒の柄に首を預けながら質問した。みんな、ごめん、ちょっと興味沸いて来たんだ。


「そうそれは一年前の文化祭、お前達も体験した事があるだろう…」


去年俺達はこの学校にいなかったけどね。

部長が語りに入り始めた。


「その時の三年の一生徒がだな…」


部長は言い淀んで、視線を空中で泳がせている。


ひっぱるなぁ、部長。

でも、部長が昔の話するなんて滅多にないから、これはこれで凄く興味がそそられる。


「まぁ、うん、あれだ、デ、デートに誘われてたわけだ」



部長がデート!?

あのデンジャラス(いろんな意味で)ビューティ朴念仁の柿沢秤部長が!

一年前の部長は純粋無垢だったのか、俺もあと一年早く産まれていれば性格も矯正する事が出来たかもしれないのに…。ああ、今何処に可愛らしい部長。


「か、勘違いするな!彼氏とかそういうのじゃないぞ!お世話になってたからそれに対する恩返しみたいな…、いや少しこれは言い過ぎだな、とにかく一緒に文化祭を回る事になったんだ」


耳まで真っ赤だぞ。

部長も女の子っぽいところあったんだなぁ。

こういう反応初々しくて好きだわ。異性の対象にはなり得ないけどね。


「ところ、がぁッ!」


そんな俺の部長への新評価も吹き飛ばすくらいの声音で部長は叫ぶ。



「あのバカクラスのせいで雰囲気ぶち壊しだ!今、思い出しても腹が立つ!別に彼とは付き合おうとかそういう気持ちはなかったけどな、だけど事前にデータがあったらあんなとこ絶対に行かなかったわけだ!」


なんか苦労したんだな。

彼の方が。

そのクラスが何をやったのか気になったが、とてもじゃないが聞く雰囲気じゃない。


「だから!」


部長の熱弁は続く。


「他クラスの総合評価、各項目、例えば『雰囲気A 店員の態度A 企画の良さA 飲食店なら料理のおいしさ A』みたいにな。あと一言『是非行くべき』とか。これを行おう」


「なるほど、話はわかりました。けど…」


美影がおずおずと手をあげて言う。

別に手をあげなきゃいけなあってわけないではないが、彼女らしくてそれがいい。


「評価するなら誹謗中傷も書かないといけませんよ、…書いても大丈夫なのですか?」


確かにそれだけで色々と問題が出てきそうだ、というかこんな企画が通るわけない。


「私達がやろうとしてるのは学校裏サイトみたいなものだ」


今問題のやつ。ネットだと個人特定出来ないから言いたい放題でいいっ放しなんだよな。

そういうのは良くない、ちゃんと言葉には責任を持たないとな。イジメ、カッコわるい。


「だがネットと違ってちゃんと調査する。私の計画を教えよう。文化祭は二日間に渡って行われるだろ、生徒用と一般公開とだ。我々は生徒用の時に調査を行い、一般公開の時に発表する。発表の方法はそうだな、娯楽ラブの部室を訪れた人に教えるんだ。どこがどんな風でどうだったか、とな。評価は口頭だと茶化して言えるだろ?括弧笑をつけて話せば何事もやんわりしたものに出来るものさ」


「なるほど…」


でも、それって営業妨害にならないかな。


「とにかく私はこれで娯楽ラブは出店しようと思っているんだが、どうかな?」


部長がみんなに聞いた。

一人一人了承の旨を伝えていく、俺を含む全員が賛成だった。


「では決定」


ブレザーの胸ポケットから手帳を取り出しシャープペンでメモをとると部長は伸びをした。


「なんか疲れたな。雨音、お茶」


「はいはい」


文句なら唇が腫れるくらい言ったさ。だけど入れないと自分の文句が2倍以上になって返って来るからもう口答えはしないのさ。


俺は言われた通りにポットから急須にお湯をそそぎ、湯飲みに移すとそれを部長の前に置いた。


「もう掃除いいっすかね?」


「ん、あぁ。…このお茶はお前が飲んでいいぞ。ご苦労だったな。私は自分でいれるから」


「あ、どうも」


部長はそう言うと急須からお茶を湯飲みにいれる為に立ち上がった。

驚いた。

部長が俺に親切してくれるとわ…、はっ、いかんいかん、もともとこれは俺が入れたお茶じゃん、騙される所だったぜ。


「いかん、あみだの説明が抜けてたな」


説明が一つ抜けていたらしい。部長は湯飲みを持って戻ってくると席に座り説明を始めた。


「一人での調査は大変だからペアで調べるんだ」


「二人一組?」


「そうだ。それから各自の調べる場所の振り分けもしないといけないからな、それであみだの登場だ。あみだには調べるべき場所と印がついている。これがそろった人たちがペアを組む。何か質問ある?」


誰も何も答えなかった。

つまりなしという事だろう。


「では好きな場所を選んでくれ、はい、雨音から」


名前を呼ばれて俺は一番右の線を選んだ。


これはつまりアレだ。

美影とハッピーデートフラグへの伏線だ。

いまこそ起これ主人公補正!俺と美影のペアになれ!


「ではペアと場所を発表しよう」


全員が選び終わって部長は余った一つに「秤」と自分の名前を書くと口笛を吹きながら下からなぞっていく。


「発表!」


俺と美影、俺と美影…


「楓&秤、A棟」


楓と部長の二人か、セーフ。俺と美影、俺と美影…


「芳生&雨音、B棟」


っな!?


「和水&美影、C棟」


…俺の野望はかくも脆く崩れ去ったのだった。



その日の娯楽ラブは特筆すべき事なく定時に終了した。


和水と芳生のインディアンポーカーは掛金などないので延々と続き、美影は宿題を楓は本を読み終え、俺と部長は携帯ゲーム機の通信対戦を行っていた。


部長は話にならないくらい弱かった。ゲームをクリアしたばかりのパーティでは俺のパーティに敵うわけがない、それに攻撃技ばっかり覚えさせて補助技がなかったのも勝因の一つだろう。


ひさしぶりにやってみるのもいいもんだな。通信ケーブルを捜すのに手間取った甲斐があったというもんだ。


なぜゆえ負けるのだろう…


部長は呟いたあと解散を宣言した。








「和水、ちょっといいか?」


「何かしら、部長」


部長が和水に話しかけていたが、俺は自分の帰宅の方に夢中になっていた。

しかし、俺はこの時部長の話を聞くべきだったのだ。

後悔先にたたず、頬を涙がつたうのはそれから二週間後の話だ。





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