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前にストックがたくさんあると言いましたが、それのせいで自分の中ではストーリーがだいぶ先に行っています。

だから投稿の際に自分の文章を修正にかかる時に『ああ、まだここか…』と思うわけです。

連続で投稿すれば、そんな気も起こらないハズなのにそれをやらないのは、単純に前書きの文が思い付かないからです。そりゃ、五十何回も駄文なんて書けるわけありませんよ、本文だけで手一杯ですもん。

私の代わりに前書きを書いてくれる人、募集中!!


あ、そんなこんなで明日も更新します。




山本の暴走は止まらない。

誰か彼にテクニカルリングを装備させてやれ。


「さぁ、一階の探索は終わったぞ!ちいさなメダル一つ発見出来なかったのが心残りだが、ここは諦めて上階に期待だ!」


「もう部屋でゴロゴロしようぜ」


このテンションの高さにうんざりだし、立ちっ放しなんで疲れ始めた足を休める意味でも、男子に当てられた部屋で休憩を取りたいものだ。

どうせ二階に行くのならば、ついでに二階にある男子部屋で休憩をはかっても変わらないだろう。


「なぜ?お館様の許可は得ているのだぞ!?」


俺の提案に、山本(先生)は変なところに食いついてきた。

お館様というと屋敷の主という事か?


「それって和水の事ですか?だとしたらご両親のほうがお館様でしょ」


「みたところ不在だから今のこの家のリーダーは和水だろ?」


また妙に正しい屁理屈こねて…。


「というわけでレッツ&Go!」


「やれやれ…」


仕方無く山本(先生)に従って二階に上がる。出来る事ならこのまま当てられた自分達の部屋に行きたいところだが、ここでそれをやると空気が読めない人になってしまうので自粛しましょう。


「さあ、二階に到着しました」


一々言わなくていいっうの。我らが師匠は自らが勇者(リーダー)だと名乗るように先頭を歩く。山本(先生)と芳生はやけに楽しそうだが、俺と楓は完全に冷めきっている。

上がりきった階段からちらりと廊下の奥を見れば、それだけで疲れてしまうほど距離があるのが分かる。もうげんなりだ。




そのまま、山本(先生)は廊下をズンズンと鼻歌混じりで進み、一番端に辿り着くとぴたりと足を止めた。


「ではまずこの扉から…」


そう言うと同時に目の前のドアノブに手を伸ばそうとした。

って、ぅおぃ!

すんでのところでソレを止める。


「なにやってんだよ!」


ヒシとドアノブにかけられた山本(先生)の右手首を掴んで、空中に放り出した。

ドアノブを回す前でよかったよ。


「何って…探索?」


俺の目の前で山本(先生)は何を今更、という言葉が暗に含まれている言葉をはきだす。


「無断でドア開けるなよ!?それでも教師かッ!?」


小学生でも知っている理をハタチ過ぎた大人に教える事になるなんてな!驚きだぜ!

何が一番驚きかというとこんな奴が教鞭取ってるってことだよ!


「俺を教師だと認知してるのならば、敬語を使え!」


びしっ、とズレたところに反論する山本。

論点はそこじゃない。


「してねーよー!」


「ならば良し!今日は無礼講だ!俺を教師と思わなくていいぞ!俺はお前達と同じ生徒という事にしとく」


「いや、意味わからんって」


「生徒=同級生、=未成年。よってすべてはイタズラの範疇!」


「バッカじゃねぇーの!?」


無礼講というならば、こちらも同じ立場の人間として扱ってやろう。

一応年上だから馴々しくならないように気を張ってたが、それも今日までだ。


「このバーカ!バーカ!」


「な、なにおう!バカにすんなぁ」


「バカだからバカって言ってるんだバーカ」


「し、失礼だぞ!」


「バカバカバーカバーカ!」


ああ、気持ち良い!溜め込んだ言葉を吐き出せるのがこんなに気持ち良いとは…!


「えぇいうるさい!俺を罵っていいのは女子だけだ!身体が男の奴は中国で溺れてこい!」


「なっ!?」


く、くそう!自分が不利になるとすぐにその話題(女装)を出して逃げやがる!俺には残念ながらそれに対する反論が浮かばない…ッ!


「はんっ!顔だけ野郎が、キン(ピー)ついてんのか?宦官?」


どうする事も出来ないのか…っ!

はっ


「か、楓!タッチ交替!」


俺はすぐ横に立っていた楓と無理矢理右手を重ねるとそそくさと芳生の位置まで下がった。

っふ、悔しいがここは勇気ある撤退だ!


楓は面倒くさそうにしながらも「しょうがないな」と山本(先生)を懲らしめる係りを引き受けてくれたらしい。

前に一歩進んで、息をつくまもなく一気に言った。


「人の家の中を我が物顔でいじくりまわすなどイタズラじゃ無くプライバシー侵害、立派な犯罪だ。いい歳こいたオッさんが人ん家入ってする事が探検と称した家探しとかレベルが低すぎる。それで逮捕されたら間抜けだな。今のアンタ見たら実家の母ちゃん泣くな、高確率で。アンタが誇れるのは就職してるとこなんだから、その職まで手放したら残るもんは前科だけになるぞ」


「…いやいや。母上は俺の事をキチンと理解し…」


「大体、教師もいろいろ大変だと言われるこの時代によく今まで苦情がこなかったな?俺がPTAだったら間違いなく弾圧して社会的に抹殺してるところだぞ。この事から考えてアンタは運はいいんだからもうちょっと真面目に人生を考え直せ」


「…俺、Parent-Teacher Associationの連中と仲いいからさ…」


何故略さず言う?

楓は山本の発言に怯む事なく続けた。


「コネを伝ってギリギリでしがみついているだけにすぎない。自分から危ない橋を渡りに行くなど盲目にもほどがある。人から注意されているのだから聞き入れろ。そんな事しっかりと自立した大人ならば言わなくても分かるはずだろ。まだ分からないならはっきり言ってやろう。立場を軽んじた行動はすべきでないと忠告しているのだ」


「先生だって羽目外したい時があるのよ…」


「アンタが外しているのは羽目ではなく頭のネジだ。社会適応を司る大事な備品が飛んでるらしいな。しかもたまにではなく常時ときたもんだ。救われないな。もう少し前を見て行動するしかネジを閉め直す方法はないぞ」


「…お、おう。そうだな…」


楓WIN。

途中先生が可哀相になってタオル投げ入れそうになっちゃったよ。


がちゃ


「アルタ!」


突然開いたドアに山本(先生)がぶつかって、よくわからない悲鳴を上げた。

因果応報。開けようとしてたドアが開いただけでも良しとしとこうぜ。


「なにやら騒がしいと思ったら」


ドアの向こうにはイロハさんが立っており、


「こんな所でなにをしてるんです?」


普段と変わらない声音で尋ねてきた。

どうでもいいけど、ドアに山本が当たった事に気がついてないのだろうか。


イロハさんは順々に俺たちの顔を目だけ動かしてみると、無言になってこちらの返事をまった。

ああ、ここはイロハさんの部屋だったのか…。今は素直に山本(先生)が扉を開けなかった事に感謝しておこう。

あまり面識がない大人にそんな不躾をしなかったのだから楓の言う通り運はいいかもしれないな。

それにイロハさんにはこれからバスの運転とかでまたお世話になるのだから、出来るだけ気まずい関係にはなりたくないところだ。


「冒険だよっ!」


「冒険?」


…なんて事でしょう…。

その質問にはよりにもよって芳生が答えてしまっていたのです。ああ、全くまた事態が拗れる。


「危険を冒しているのですか?」


「そう、アドベンチャーさ!」


「インディジョーンズのような」


「ちっちっちっ、ちょっと違うかな?僕たちのはロールプレイングだからね!魔王を倒すという使命があるのさ!ねっ、師匠!」


「いや、そんなもんはない」


「…え?」



楽しそうに同意を求めた芳生を待っていたのは脈絡のない裏切りだった。

扉が当たり赤くなっているオデコを押さえながら、山本はイロハさんの方を一度チラ見したあとキリっとした顔で芳生と向き合った。


「いいか芳生、大人になれ。現実をみろ。虚構にばかり溺れるな。人間には人間の生きるべき道がある。たまには踏み外す事もあるだろう、だが、それも一つの試練なのだ。人間至るところ青山あり、同じく死ぬなら失敗を多く積んだほうが悔いのない幸せを掴む事が出来るんだぞ」


「あの…、先生?」


「確かに空想世界は楽しい、だが空想は空想だ。割り切らなくてはならない、決して捨て去れという意味ではないぞ。おおっとコレは失礼、ウチの生徒がとんだご無礼を」


「…そうですか」


教師らしい言動を途中でやめて、さも今気がつきましたといったように山本(先生)はくるりとイロハさんの方を向いた。

なんて不遜極まりない最低なやつなんだ。

さては美人のイロハさんの手前、いいカッコしーをしようとしてやがるな。

下心丸見えじゃい。隠しながら言ってるつもりらしいが、こちとら普段のあなたを知ってるからバレバレだ。


「ほら芳生、迷惑をかけた時は頭を下げるんだ。俺も一緒に下げてやるから」


「え、なんで?」


キラリーンと歯光らせる。やめてくれ…、あんたそういうキャラじゃない…。


「いいから下げろ」


芳生の頭を掴んで一礼させると山本(先生)は「いや、失礼。お詫びに一杯いかがです」とか軽すぎるナンパをし始めた。

元に戻ったか…。


イロハさんは一考する事なく、


「いや、けっこうです」


断った。


「それより先ほどのロールプレイングというのは?」


そして何故かそちらに食いつく。

肩を落とす山本を捨て置いて芳生は一歩前に進んでイロハさんに説明し始めた。

芳生は大きく手を振り回しさながら大捕物を演じるような感じだ。


「そこでダンジョンからでるとレベルが1からだと気が付いた僕たちはまず食料を確保して餓死から逃れる事を学んだんだ。冒険で一番大切なのは経験だとかの有名なソクラテスが言っていたけどまさにその通りだね(嘘)!戦い方もそれに伴って変えたんだ!まずフロアでなく通路で戦う、何故かって?こうする事により一対一で戦えるようになるからさ!ただ注意してほしいのは敵に挟まれたら厄介だってこと。そういう時は惜しまずアイテムを使用して逃亡する事をオススメするよ、優先すべきは命なわけ」


おい、待て、嘘が8割で構成されてるぞ。俺たちの冒険(笑)はまだ始まって10分も経ってないし、オオアリクイどころか、エンカウントしたのは物質系2体だけだぜ。


「なるほど…、理解できました」


えー、嘘だぁー!

やがて芳生が説明を終えるとイロハさんは2回頷きながらそう言った。


「しからば、私も仲間に加えさせて頂きたいです」


「え?」


…この人も一体何を言っているんだ…。そういう人は間に合ってます。


「ワタクシ16歳になった際に王様と謁見し旅立つ予定だったのですが、家庭の財政難で働きにだされたのです」


「ほっ、ほんと?」


「嘘です」


「…」


いうまでもない嘘に引掛かる芳生。

そんなもの…、見破るまでもないだろ。

芳生、…だからなんでショックを受けた顔してるのさ。


「ですが、勇者様のパーティに加えさせてほしいのは真実です。是非」


俺たちとお戯れになりたいという気持ちは、イロハさんは変えるつもりはらしい。

それならそれらしい表情にしてほしいところだ。


「…あ、うん、えーと」


我らが勇者様はなにやら逡巡なされているご様子。どうやら自分の一存だけで参加者を増やす事を迷っているようだ。こちらの方をちらりと向いて「どうする?」と意見を求めてきた。


どうするもこうするも…、俺はもう休みたい、よ。


イロハさんがなぜに俺達と一緒にそんなごっこ遊びをしたいのか理解出来ないし、出会って間もないから、なるたけそんな事はしたくないのだが、仲間ハズレみたいな言い方が出来る間柄じゃない事もたしかだ。


「賛成賛成賛成!パーティに女子、必要!」


「お前の好きにしたらいい」


山本(先生)と楓が返した。それを契機とばかりに芳生は一度大きく頷くと、またくるりと身体をイロハさんの方に向けて、にっこりと微笑んだ。

ま、俺も構わないけど、少しイロハさんは…からみずらいなぁ。


「オッケー!旅は道連れ世はなさけ!メイドさんねパーティ入会を認めます」


「ありがとうございます」


礼を一言、それから恭しく頭を垂れた。多分今まで見てきた中で一番従者らしい動きだった。


「たららららーたららららーたららら、たらら!」


フラれたショックからまだがっくりに首を下げたままだった山本(先生)が丁寧にサウンドを入れた。






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