表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/126

1(3)

書き溜めしといたものに加筆して発表してるんですけどこのペースじゃすぐにストックが無くなっちゃいそうですね。

とりあえず第1話はこのペースでやって、第2話からペースダウンしたいと思います。


鉢巻きを巡る珍騒動は続く。

意気揚々と廊下に出たはいいが何もする事を決めていなかったため、しばらくの間、芳生は腕を組み左右に振り子のように揺れどうするか思案していたが結局は何も浮かばなかったらしい。

そんな彼の様子を見ていた俺はさすがに耐え切れ無くなって一番てっとり早い方法を提案してやった。


「もうジャンケンでいいだろ」


「いいや、良くないね。部長が使命したからには相当な難易度の対決内容にしないと後で僕が怒られちゃうでしょ」


「じゃ、何にすんだよ?」


「…クイズにしよう!」


「クイズ?」


裏さんとダブって言う。

芳生が言うクイズのルールは、お互いに問題を出し合い、答えられなかったら黒星が一つ、サッカーのPK戦みたいなものだった。

そして、あくまで俺は中立の立場ということで審判を務める事に。


「じゃ、僕からね!クイズ・なるほど、ザ・芳生〜!ジャジャン!『入口一つで出口が三つ、これ何だ〜?』」


「え?」


おい、お前…、それは


「ナゾナゾですか?」


ナゾナゾかよッ!

これは私的見解なんで確かな情報ではないけど、ナゾナゾは頭を捻る言葉遊び、クイズは知識をためす問題だと思ってたんだが…、俺が間違ってたのか…な?


「むぅ、コレは難しいですね。入口一つで出口が…、むむむ…」


「そうでしょ〜?難しいだろうね!コレは僕が長年温めて来たやつだからね。ヒントが欲しいかい?」


何を偉そうに、それは楓がお前が暇だ暇だとうるさくまとわりついたから出した問題だって言ってたじゃないか、ちなみにオレは即刻答えられたぜ。


「是非お願いします!」


「しょうがないなぁ〜、ジャジャン」


いちいちその効果音口でやんのかよ。


「裏さんも今着ているものです」


「着て…」


うわぁ、ヒントが答えに直結してるよ。


答えは『洋服』。

着る時に頭を下から通し(入口一つ)腕を裾に通して(出口2+)頭を出す(1)。


つか、芳生は敵に塩を送るような事して何がしたいんだろうか、これ一応入部試験だろ。ま、俺が心配しても仕方無いけどね。


裏さんも『着て』という部分に着目し、その答えにたどり着くまでさほど時間はかからなかったみたいだ。


「服…かな」


「ッ!な、な、なんで分かったの!?僕は丸二日考えても答えが出ないから、ギブアップして答えを教えてもらったというのに…」


「いや、…天からの啓示ですか、ね…」


素直にお前がバカだからだよ、と答えない裏さんの優しさに微塵も気が付いていない芳生はまるで大物の横にいるかませ犬、『○○さんがでるまでもありませんよ、ヒャハァ』とか言いそうな雑魚(モヒカン)のようだ。


「ま、次は僕の防御のターンだからね。コレを防げば一旦ドローにもちこめるのさ!さ、早く反射神経で答えられる様な軽い問題を出してごらんよ」


「えーと、」


芳生からの安い挑発をどう受け流すか!裏さんの腕の見せ所!


「バルト三国の内、ラトビア、リトアニア、あと一つは何でしょう?」


「バ、バル!?ビア!?ラリ?」


裏さん大人気ないな…。

あまりの難易度に芳生の回路はショート寸前。もはや人語も話せなくなっている。

つか、答えなんだっけ?


「バルバルバルバル!」


「ほ、本多さん?気を確かに」


裏さん、彼の名字は土宮。土宮芳生です。

決して徳川四天王の一人とか、戦場において無傷とか、ガ○ダムみたいな武将ではありませんよ。


「バルス!!」


「あ、死んだ」


滅びの呪文を唱えて芳生は倒れた。目を押さえるほどの芸の細かさだ。


「本多さーんッ!大丈夫ですかァッー!本多さーん!」


「ふっ、やるじゃん…。受け取りな、僕を倒した褒美だよ…」


そういうと芳生はポケットから震える右手で取り出した鉢巻きを彼女の前に掲げたが今更主人公の未来を憂うかっこいい敵役にジョブチェンジなんて無理がある。


「お前なら、…あの二人に勝てるかもな…、グフ」


「ありがとうごさいます…」


えー、ちょっとなに感慨に耽っちゃてるのー、騙されちゃダメだよ、「グフ」はモンスターが死ぬ前にいう言葉だって漫画に書いてあったぜ?


「さ、裏さん行こ。芳生を相手にしてるとタイムリミットすぎちゃうよ。芳生も早く金谷先輩のとこに戻るんだな」

むくっ、芳生は起き上がって言う。


「部室に行こっと」


「それはお前の自由だから何にも言わないがな」


さ、行こう裏さん。


彼女の肩を叩き移動を促す。


「それじゃ、私たちはこれで」

裏さんは律義に芳生にお辞儀をしてから歩き始めた。




「あの、あとどなたの物を手に入れれば?」


図書室から少しばかり進んだロッカーラウンジで裏さんは時計を心配そうに見ながら話かけてきた。


「水道橋和水と五十崎楓の鉢巻きだね。和水はともかく楓は手強いだろうな。あ、楓は裏さん連れて来た人だよ」


「ああ、あのカッコいい人ですね」


!!


なんつった、…今…ッ?


「それで何処にいらっしゃるんでしょう…」


なにその恋い焦がれるうら若き乙女みたいな表情は…。


「確かに、顔はいいよね…」


「はい、それに親切です!私がたまたま娯楽ラ部の場所尋ねたら丁寧に教えて下さったんですよ」


「楓の奴無駄に…、本当無駄だよ、無駄だから嫌いなんだ。無駄無駄…」


「表さん?」


オレ、天使、になっちゃいそう。


平静を装い出来るだけ表情を崩さず俺は楓を恨んだ。


校舎はすでに西からの光線によって赤く染められており、秋の日は釣瓶落としとはこのことだろうか、暗くなるのは時間の問題、それはつまりタイムリミットが迫っているという事を意味していた。


とりあえず校舎内をブラブラと歩いていたら、視界の端に懐しいものを捉えた。


「あ」


「どうしました?」


「この掃除用具入れ…




忘れもしない、夏休みが明けてから何日かたったある日、日本に台風が来て、それはとてつもない勢力だったらしく、さすがにこんな時に授業してらんないだろ、と学校が臨時休学した時の話だ。

突然の休日に俺は喜び、昼まで寝るぜ、と前日に夜更かしをしていた時だった。


携帯がメール着信を告げた。

時計を見るとすでに2時を過ぎていて、こんな夜中に誰だよ、と思いながらやっていたテレビゲームを一時停止して、メールボックスを開く。



送信者:水道橋和水

件名:なこみてすれんらくもうてすあしたはちしまてにかつこうこいとふちようがいつてたてす

本文:〈このメールに本文はありません〉



一瞬悪戯メールかと思ったが和水からの着信らしい。

本文と件名逆にしろよ。

和水は機械類が苦手らしく、携帯もまともに使った事がない為メールもこんな文章ばっかりだ。

なになに


和水です。連絡網です。明日はちし…八時か、までにカッコウ?…学校かな、…来いと婦長が、いや部長が言ってたです。かな



え!?八時までに学校に来い?

いや、落ち着けよ。

…明日台風だよね。


そして次の日寝ぼけ眼で学校に到着した俺は部長の口から信じられない言葉を聞いた。


『暇だから呼んだ。今から校内隠れんぼを行う。文句がある奴は出て来い』


部長以外の部員は皆、雨に濡れてるわ、髪がバサバサだわと台風の影響に負けずに頑張って学校に来たというのに、開口一番そんな事言われたら誰だって切れるだろ。

さすがの俺も言ってやったね。


『ちょっと、部長、いいかげんに…』


『文句か?雨音?』


『お〜し、はりきっちゃうぞぉ』


うん、駄目だった。小市民の俺は権力者に抵抗出来ないように牙の削がれた犬みたいなものだという基本設定を忘れてたよ。


こうして隠れんぼはスタートした。

鬼であった部長はあっという間にメンバー三名を見つけ出したが、一人だけ見つからなかった、それが最強のダークホース水道橋和水だった。


彼女は驚いた事に部長の魔手を見事に逃れたのだ。

逃げる側が勝ったのだ。部長は降参し、隠れんぼ勝者の呼び掛けが開始され始めた。


俺も心踊ったね、部長に俺達が勝つのは随分久し振りの事だったし、こんなに苦労したのだから喜びも一塩といったところだったな。みんな口々に和水を褒めたもんだったぜ。


しかし何十分かそんな呼び掛けを繰り返していたがいつまで経っても和水は出てきやしない。


『和水の奴、何やってるんだ。まさか寝てるんじゃないだろうな』


珍しく部長が疲れてらっしゃる。


『なごみ〜!出て来なよ!勝ったんだよ!僕たちは〜』


『あんまり騒ぐと先生にバレちゃうぜ、ここに俺らがいる事は秘密裏なんだからな』


『おい、ちょっとまて…なんか、聞こえないか?』


楓の指摘に耳をすませば確かに何処からか雨音と風が窓を叩き付ける音と一緒に空気が漏れるような音が聞こえた。

シュー、シュー



『…ここだな…』


そしてその音は俺たちが今ここにいるロッカーラウンジの掃除に使う道具入れの中から聞こえるのだ、まさかとは思うが、…頭ではそんなわけない、と否定しつつどこかで

「あいつならありえる」と思ってしまう自分がいる。


『…』


楓は無言で用具入れに手を掛けそれをひいた。


皆、息を飲んでそれを見た。


中で、和水が熟睡してやがった。




…という事があったんだよ」


「フフ、和水さんって可愛い人ですね」


いや、ただ単にバカなだけだから


「まぁ、まさかまたここにいるはずないと思うけど…」


無駄な長話に付き合ってくれた裏さんの目の前で俺は用具入れに手を掛けてひいた。



いくら俺でも、こいつがそこまでバカだとは思わなんだ…



また、中で、和水が熟睡してやがった。


「…」


「…」


「スースー」


また寝息たてて寝てるし。

なにやってるんだこいつは…


「なんで、中で寝てるんですかね…」


あの裏さんが少し呆れながらそう呟いた。


「多分、『お〜し、通り過ぎる瞬間にバァンとかっこよく登場して驚かせるわよ』と意気込んだはいいけど失敗して寝たんだな」


小さい頃よくやったなぁ。

寝はしなかったけど。


「と、ともかく起こして…」


「いや、ちょっと待って。裏さん、鉢巻き探しちゃえ」


さすがに男の俺が寝ている女子の身体をまさぐるのは問題だが、同じ女子の裏さんなら無問題だ。


「え?…いいんですか?」


「いいよ、いいよ、めんどくさいしょ、いちいちなんかやるのは」


「はぁ、少し悪い気がしますけど」


そう言いつつノリノリの裏さん。

和水のブレザーのポケットを探し始めて、最後に内胸ポケットから鉢巻きを発見した。


「ふぅ〜、ありました!」


どこか満足そうに裏さんは言った。


「おし!じゃ、行こうか」


「えっ?ほっといて…」


「大丈夫大丈夫、バカは風邪ひかないし、第一和水は皆勤賞狙ってるから無理してでも治すよ」


「はぁ、ならいいのですが…。なにか罪悪感を感じますね」


そんな罪悪感なんて紙のように水洗トイレに流してしまえ。もし、俺が思い出に浸らなかったらこのままゲームオーバーになるところだったんだからな。



俺たち二人は和水を放置したままとりあえず部室に戻る事にした。運が良ければ金谷先輩が気付いてくれるよ。『うぉ〜、女子だ女子だ!スリーピングビューティーだぁ』とかいいながら。ちなみに先輩と和水は面識がない。

こうして歪みの国のナゴミ(色々な所が歪んでいる)と別れて何処に行くか裏さんと相談をする事にした。


「部室に一回戻ろうか」


「どうして部室に戻るんです?」


「楓はこういうのやる気ないからね。前の隠れんぼの時も部室でお茶をすすってたそうだ。それで部長に後で怒られてたけど」


「はぁ」


こうして次の目的地が定まった俺たちは一路部室へと帰るため階段に足をかけたのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ