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第13話(1)

朝、電車の中でたまたま会った芳生に今日の昼休み用事があるから会おうと言われた。とりあえず了承しといたが、芳生と部活以外で会う機会なんて今まで無かったので、少し新鮮だ。


俺に用事ってなんだろう。


そう思いながら、斉藤と弁当を食っている時に、廊下にいる芳生が小さな声で俺を呼んだ。


「もうちょい待ってくれ」


急いで残された、古豪の如く風格をもつパセリをパクリと食べて、弁当箱の蓋を閉め鞄にしまう。

斉藤には、昼休みの事を伝えておいたので、軽く言葉をかける程度で席をはずして廊下にでた。


廊下には芳生だけじゃなく、楓も気怠そうに待っていた。


「わりぃ、待たせたな、んで?用事って何?和水がなんかやりかしたか?」


「いや、違うよ。今日は娯楽ラブの事で呼んだんじゃないんだ」


「部活以外?ああ、じゃあお前に貸してた漫画でも返してくれるのか?俺はてっきり借りパクされたもんだと思ってたが…」


俺が貸した事を忘れていないかチェックする意味を込めた皮肉に芳生は少し苦笑する。


「…違うよ。そ、それはまた今度ね…」


こいつ絶対忘れてやがったな。


「あ、じゃあ、お前に貸したマ○オカート(SFC版)か?」


「…借りてたっけ?」


「貸したよ!」


とぼけてやり過ごそうなんてそうはさせるか。お前に借りパクされそうになっているものがたくさんあるんだからな。

頭の中で人に貸した物、借りた物はリストしてあるから。


「もういいだろ。本題に移ろう」


首を傾げる芳生の横で楓が言った。

本題-この場合は芳生が俺と楓を昼休みに招集かけた事だろう。同じクラスの楓だけならまだしも、わざわざ他クラスの俺にも声をかけたのはそれ相応のわけがあるはずだ。


「うん。そうだね。楓には話をしたんだけど、意見は多いい方がいいってわけで…、少し相談に乗ってほしくてさ」


「相談?俺は別に構わないぜ。保証人になってくれとか以外ならさ」


「コーコー生のうちからそんな重い話しないよ。それで場所を変えていいかな?」


「そうだな…、ココで相談しあうってのも変な話だし…、んで、何処に行くんだ?学食?」


辺りを見渡せばすぐに分かる事だが、廊下ではキャッチボール、バドミントンなんかしてる奴等やサークルを作ってお喋りに花を咲かす女子たちでいっぱいだ。そこかしこに人がいる場所で深刻な悩みを相談したら、誰に聞かれるかわかったもんじゃない。


芳生も周りの状況をわかっているのだろう、

「そうだね」と呟くと俺の質問を無視して歩き始めた。


ん?今日のあいつ、やけに暗いな…。


「ついてけば分かるさ」


先に行った芳生に残された俺の背中を楓が軽く押すので、続いて歩きだす。




芳生がついたのは図書室だった。


確かにここなら声のボリュームに気をつければ、誰かに聞かれるという事はないだろう。


お喋りに適した場所ではないのは百も承知だが、奥にある自習室を利用すれば他人に迷惑をかける事はない。

期末テストまでまだ何週間かあるし、受験を控えている三年生は学校の自習室は何故か利用したがらない。


大体昼休みに自習室を利用する物好きなんて、手間を考えたらそうそういるはずがない。


俺の思った通り、自習室には誰もいなかった。


しかし、もう一つの予想は外れた。俺はてっきり芳生は自習室の方に向かうもんだと思っていたが、彼はそこに行かず、本棚と本棚の間の通路で足を止めるとクルリとこちらを向き声は小さめに廊下で会った時と同じ事を言った。


「相談なんだけどさ」


歴史地理関係の本がたくさん収められているこのコーナーを授業以外で利用するなんて俺にはまず考えられない。それは芳生も同じ事だと思うのだが…。ここを選んだからには何か理由があるのだろう。


楓は結構この空間を気に入っているようだ。しかし芳生もやはり俺と同じように収納されている本には見向きもせず、真剣な面持ちで次の言葉を繋げた。


「簡略して言うと…、恋の悩みなんだ」


は?


芳生は今なんて言った?


コイ?KOI?


「錦鯉がどうすればいい色になるか…とか?」

「ちがうよ!なんでここで淡水魚の話をしなきゃなんないのさ!」


「やっぱり次世代の事を考えて配合する事じゃないか?」


芳生の突っ込みを無視し、楓が頭を斜め上に傾けて教えてくれた。


「ああ、それは確かに、最近じゃ鯉の色を競った大会なんかもあるらしいしね。でも狙った通りの色なんてそう簡単に出せるもんかね?」


「それは運と…、ほら生物でやった優性の法則とかじゃないか?」


「ああ、あの空豆のやつか…なんつたっけ、フラミンゴの法則?」


「メンデルの法則な。ちなみにフラミンゴではなくフレミングの法則。こっちは遺伝子じゃなく電気のやつで、右手の親指、中指、人差し指が電磁誘導の向きを分かりやすく表してるってやつだ」


「ああ!やったなぁ!中3とかで右ネジの法則とかなかったっけ?」


「ちょっと真面目に聞いてよ!」


俺と楓が鯉で盛り上がっていると芳生は入ってきた。


そうだな。真面目に相談してくれているのだから、俺もそれに答えないといけないよな。


「わかったわかった。それでは俺的アドバイス」


「え、何?結構期待しちゃうよ」


「狙いどころはとりあえず月見に一杯、花見に一杯。簡単に揃うからね。五光とかはうまく出来たらやるくらいの気概がいいだろう」


「こいこいじゃないよ!」


「導線を螺旋状にまいたもの。タイプ1電気、タイプ2鋼、レアからジバに。電脳」


「コイルじゃないよ!恋!いい加減にしてよ!怒るよ!」


もう怒ってんじゃん。


「…悪かったよ。全くこの程度は鼻で笑うジョークだろ?全く短気だなぁ」


「短気じゃない!」


短気じゃん。


…いや、ま、俺も少しふざけすぎたか。

だが、反省はするがやはり芳生の言っていた事に驚きは隠せない。

全体的にそういうのから無縁のようなやつなのに今更誰に恋したというのだろうか…


「芳生、…念の為に聞くが、…相手は俺の知ってる人か?」


もし、芳生の恋の相手が美影とかだったら、俺はどうしたらいいのだろう。


和水や部長ならどうでもいいのだが。


相手が俺と同じ美影だったら…。


この表雨音っ!容赦せんッ!


「いや、多分しらないと思う」


芳生は少し考えるように上げていた目線を下げ、言った。


ほっと胸を撫で下ろす。それならよかった。


「そうか、で、その人って、誰?」


今度は好奇心が疼いてくる。


「うん」


芳生は一回だけ頷くと、そのまま黙った。一向に人の名前が返ってくる気配がしない。


不思議だ。何かためらう理由でもあるのだろうか。


「なんだよ?はっきり言えよ。俺が知らない人だったら誰だろうと関係ないだろ」


「…」


芳生は何も答えない。

しかし、その代わりに、



俺を指さした。



「…え?」


芳生の指は間違いなく真っ直ぐ俺に向けられている。

右を見ても、左を見ても本がびっしり詰まった本棚があるだけだし、後ろには人はいない。


こ、これって、つまり…


「マジで?」


俺は自分を指差しながらわなわなと震える唇で問いた。


嘘だろ?俺たち男同士だぜ?しかも楓の目の前でかよ。


こ、これが今流行のベーコンレタスッ…(BL)…バーガーッ!?


「どしたの?」


芳生は戸惑う俺に優しい言葉をかけてくれる。…その気遣いが今は怖い。


だ、ダメだ!?どう考えても相手が男は俺には対象外だ。第一俺には美影がいるし、芳生とは今まで通り良き友達でいたい。


最近の時代はそういうのに比較的寛大だけど、生憎自分はそっち系の趣味はない。

何度も言うが俺はいくら名前が女みたいでも心も体も戸籍上も男なのだ。


フレディ・マー○ュリー、俺に断る勇気をッ!


…って、ダメだ!フレディじゃダメだ!フレディじゃなくて…えーっと、フレディ・クルー○ー!俺に力をッ!…って、嫌だ!ごめんなさい!力添えいりません!こ、怖くなんかないけど、…帰って下さい!


と、ともかく断るんだッ!


「悪い。俺、好きな人がいるからお前とは付き合えない」


出来るだけ相手を傷つけないようにやんわりと断りを入れる。


そんな俺の言葉の意味がわからないといった様子で、芳生は瞳を一回大きく見開くと、楓の方を向いて言った。


「なんの話をしてんだろ?」


「さぁ」


話を振られた楓も首を傾げている。芳生は俺の方に向き直すと再度同じ質問を俺にした。


「なんの話?」


「なにって…」


それを俺の口から言わせるのか…、こいつ案外サディストだな…。


楓を巻き込むあたりもなかなかスゴイ度胸だし、思いだして見ればこいつは最初からなかなか根性が座った男だった…気がする。


「こ、告白の件についてだよ」


少し詰まった俺の言葉を芳生は聞くと、なぜか立腹したように、言葉を荒げた。


「やめてよ!告る前にフラれる気分を味あわせるのわ!」


「告る前?」


何言ってるんだ。こいつ…


「僕はまだ彼女とろくに会話もしてないんだよ」


「彼女?」


彼女、って…女?


「受付に座っている彼女」


慌てて後ろを振りかえる。

俺の後ろ、はるか遠くにパソコンやコピー機なんかがたくさんおいてある一角で一人の女生徒がカウンター席に座って何やら作業をしていた。

俺の視力じゃぼんやりと霞んでいるが、後ろで髪をまとめたポニーテールの女生徒だ。カウンターに座っているという事は図書委員なのだろう。


「あの子?」


俺はとんでもない勘違いをしていた事を内心忸怩に思っていたが、臆面にでないよう平然を装った。

俺の質問に芳生は頷くと、恥ずかしそうに馴れ初めを語り始める。


「彼女も僕も同じ図書委員でさ。それで気になってはいたんだけど、ほら、僕って口下手じゃん?だからあんまり会話を発展させる事ができ無かったんだよ」


もじもじと照れてる芳生。お前が口下手のに入るのだったら俺は口無しと言ったところだろう。


「それがこの間の図書委員の時にさ、僕の課題を手伝ってくれたんだ。すごく優しくて、胸の下のあたりがキュンって締め付けられる感じがしてさ…」


芳生が一生懸命に語っているが正直今の俺の興味は楓が棚から取り出した一冊の本に移っていた。


『都道府県別他人の呪い方』


なんでそんな本が学校の図書室にあるのか気になるし、その本が歴史地理のコーナーにカテゴリされるかも疑問だが、やはり一番はその本を取り出し読み出した楓の人格だろう。

芳生が一生懸命話を始めてんだから聞いてやれよ。


「ちょっとちゃんと聞いてよ!」


ほらな、楓。人が話してる時に本を読むのはよくないぜ。


「雨音ッ!」


あ、俺か。


「いや、ちゃんと聞いてたよ。つまりお前は、彼女に…、かのじょ…?そういや彼女名前なんてんだ?」


うわの空だった俺を引き戻した芳生に質問する。芳生は少し考えるように腕を組むと、首をしばらく左右に揺らしていたが、やがて動きを止めてボソリと呟いた。


「忘れた」


「はあ?」


「彼女の優しさに夢中になりすぎて名前を聞くのを忘れてたんだよ」


「いや、でも今までお前は図書委員だったんだし何かしら接点はあったんだろ」


「あったはあったけど、…なんていうか、記憶にございません?」


「…お前それで惚れたとかよく言えるな」


「そこで俺の登場だ」


楓が読んでいた本をパタンと閉じて棚に戻した。


「昨日芳生にこの話を聞いてから色々調べてみたんだよ」


そう言うと楓は内胸ポケットから深緑色の手帳を取り出し、書いてある情報を読み上げ始めた。


「名前、安藤ちなみ。1年5組出席番号2番。成績は中の上。ただし、体育だけはちょっと苦手らしい。

性格、おっちょこちょい。

趣味読書、音楽鑑賞、よく聞くジャンルは洋楽。

顔もなかなかなので男子からの人気はそこそこだが、本人の性格からか、今まで付き合ってきた事はないそうだ。眼鏡をかける事があるがそこまで視力は弱くなくあくまで予防の為かけているだけ。髪型はほぼ後ろにまとめたポニーテール。化粧やなんかはしていない、飾り気がないところも人気の一つだそうだ」


ダッー、と読み上げた内容は正直半分ほどしか入って来なかったが、楓のその情報収集能力には素直に感心させられた。


「ふーん、それにしても短期間でよく調べてあるなぁ」


「人伝で教えてもらったんだがな」


パタン、手帳を片手で器用に閉じてポケットにしまいながら、楓は言った。


「人伝?…誰だ?」


「個人情報保護法でそれは教えられない」


「なんだそりゃ?別にいいじゃねぇか、俺らはまだ高校生だぜ?」


俺がそう言うと、楓は手帳を胸ポケットにしまう為に入れたままだった手をそのままに、少し考えるように上目遣いになると、すぐに言葉を繋げた。


「そこまで言うなら仕方無い。通り名だけは教えてやろう、彼の名前はそう、フリード・Y」


ふりーど、Y?


Y


Y…や、山本…山本先生ッ!?


…情報が途端にうさん臭くなった。


「それで、芳生はこれからどうするつもりなんだ?告るの?」


とりあえず、情報源が山本(先生)かどうかという問題は置いといて、一番重要なそこんところの質問を芳生にする。


「ま、まだそんな状況じゃないよ」


顔の前で手をブンブンと振りながら、芳生は慌てたように否定した。

いつか誰かが、言っていた話を思い出す。

女性が友達にする相談はすでに自分の中でどうすべきかという答えは決まっていて、「こうした方がいいよ」という友達の意見を聞いても「だけど、私は…」と自分から相談しといて聞き流し、決して自分の意見は曲げないらしい。それに対して男性の場合、本当に困っている場合のみ、意見を求めるのだそうだ。


つまり、芳生も…、というわけだ。


「んじゃ、どうすんだ?」


それが欺瞞じゃなければ本当に困っている事になる。だったら友人として手を差し延べるのは当然の選択肢だ。


「そうだ。手をこまねくよりも手ぐすね引かないと何にも発展はしない。誤謬を招く結果になろうと、やらなければ何も始まらない」


楓もなんだか乗る気のようだ。何事にかけても無関心なこの男がこんなに親身になっているというのも珍しい。いかに楓と言おうと他人の恋路には興味がそそられるものなのだろうか。


「それは僕もわかってるんだけど…」


「だったら行動を起こせ」


「とにかく話かけるなりなんなりしなくちゃダメだぜ」


ビシビシとはっきりと物を言う楓の言葉が芳生に突き刺さらないフォローを入れる感じで言う。


他人の恋の相談だと、簡単に答えが導きだせるもんだ。俺が美影に対して抱いている感情は、自分からなにか試行しようとはしない。しなくてはいけないとは頭でわかっているけど、そうシナリオ通りにいかない事だってわかってる。自分を棚にあげての安易なアドバイスなど愚の骨頂なのだが、最善を思ったままに伝えるというのも友情というやつだろう。


「僕は、そういうのに、奥手だから、さ…」


芳生は肩を落として悔しそうに呟いた。


「おいおい…、お前がそれを言うか…」


俺のイメージの中の芳生は常に人見知りなどはせず、明るく誰にでも関係なく、男女の垣根など軽く飛び越えて接するような奴だと思っていた。しかし、本人曰く、それはなにも男女関係を意識していない状態の時だけで、一度好意を抱けば、すべてが裏返るような純情な奴だったらしい。


下をしょんぼりと俯いたままの芳生に楓が天井を仰ぎながら、静かな口調で言った。


「奥手だろうがなんだろうが向こうは常に動き続けてるんだ。お前がウダウダやってる間に置いてけぼりにされないように俺達に意見をもとめたんだろ」


「そうだよ…。そうだけど、僕は、それで僕はどうしたらいいのかわからないんだ…」


「そうだな。先ずは片思い大明神に意見を仰く事にするか。どう思う、雨音?」


「…俺に言われてもな…」


意見を求められたって俺だってうまく行ってないんだから、他人に意見出来る立場にいるわけではないし…



「……てッ!?か、楓、お前ッ!」

普通に聞いていたら流す所だったが、これはまずい!


俺の考えてる意見を言うのはいい。

問題はその前だ。


なんでコイツが、コイツが俺が絶賛片思い中って知ってんだよ!?


俺は楓の肩を掴んで奥の壁に押しつけ、耳元で出来るだけ小声で質問した。


「…なぜ、わかった?」


芳生はというとそんな俺たちの様子をハテナといった風に見ている。


あいつは問題ない。あいつは、気が付いていない。


問題は、コイツだ。五十崎楓。


「いつからって、…最初らへん?」


もしかしたらカマかけてるだけもしれないので慎重に言葉を選んで探る。


…もっとも相手が美影ということはともかく俺が片思いしているという事はバレてるみたいだが。


「あ、相手は誰かわかってる…のか?」


一縷の望み-楓のカマかけにかけてみる。

コイツはそういう事を飄々とやるやつなのだ。もしかしたら…


「裏美影」


「…なぜ、なぜ故わかった…?」


正解です。

もしかしたら…ってのは俺の妄想でしかないようだ。


「そんなの態度見れば一目瞭然だろ。当の本人たちはともかく部長だって気付いてると思うぜ」


「あ。あぁ、それ部長にも言われた…」


文化祭の時に、『あれで隠してるつもりか?』的な事を…。


「ねぇー、二人でコソコソ相談するんだったら僕も混ぜてよー」


俺のすぐ後ろによって芳生が楓を覗きこみながら言った。


「あ、あぁ。悪い芳生」


謝罪しながら楓の肩から手をはずす。その際に、出来るだけ自然に楓の耳元で、


「芳生にはまだ言わないでくれ」


と囁いた。


「向こうは自分の恋路を教えてくれたのに、お前は黙っとくと言うのか?それは対等じゃないな。まぁ、俺はどちらでもいいが」


楓は制服の襟を直しながら、俺の良心に突き刺さるような言葉をはいた。


わかってる。わかってるよ。そんなの


「この問題が解決したら言うさ」


また、囁くように言った。


交友関係は対等じゃなきゃダメというわけじゃない。共生だろうが片利共生だろうが、何かを与えたり、与えあったりする事自体はなんの問題でもないのだ。

大切なのは双方の納得があるかどうかだ。与える側にしてみても与えられる側に納得がなければそれは大きなお世話になるし、逆ならば恐喝カツアゲだ。

この場合、俺が納得しないから言う。芳生が俺が美影が好きという事を聞いてどう思うかは彼の勝手だが、少なくとも憤慨はしないだろ。


「でも、芳生は彼女と付き合いたいのか?」


まだ根本を聞いていなかった。一番大切なのはここで、核心と言っても過言ではないだろう。芳生は俺の質問にまた照れながら小さく頷いた。


「う、うん。出来れば」


「なら、決まりだな」


「何が?」


「先ずはムード作りさ!」


そうだ。ろくに会話もしていないのなら話をするところから、はじめないといけない。


と、なると先決すべきは告白うんぬんかんぬんよりも土台造りになるだろう。


ふふふ、言うなれば、ワタクシ表雨音もそういう段階なのですよ。俺と美影の関係のような素晴らしい交友が芳生に築けるかな。






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