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序章

ルーズヴェルト・ゲーム。


アメリカのセオドア・ルーズヴェルト大統領が言っていた。


「終盤、4ー7から逆転して、8ー7でサヨナラ勝利をする試合が一番おもしろい。」


その試合が行われたのは、幻に終わったはずの、


1940年の東京オリンピック、エース沢村栄治を擁する日本代表と、

ベーブ・ルースらを擁するアメリカ代表との試合だった。




西暦1940年。昭和15年。


ヨーロッパ戦線では既にナチス・ドイツがヨーロッパ各地に侵攻し、占領下におさめていたが、


1940年の東京オリンピックではそれらの占領下に置かれた国々の代表選手たちも、正式な代表選手として招待され、参加していた。




そうして始まったのが、紀元2600年と銘打って開催された、1940年の東京オリンピックだった。


「それでは選手入場です。」


開会式、入場行進。


天気はスカッと日本晴れ。まさにオリンピック日和といったところ。


メインスタジアムの建設費は、駆逐艦一隻の値段に匹敵したが、


「たかだか駆逐艦一隻と、紀元2600年の記念大会の、未来永劫残ることになるメインスタジアムと、どちらが大事か!」


この鶴の一声により、メインスタジアムの建造が決まり、その他主要な会場の建造も、急ピッチで進められ、この日を迎えた。


そして、野球の開催も、日本の交渉団が無理やりゴリ押しして、決まったという。


これにより、1934年に始まってから間もないプロ野球の選手たちも、オリンピックに参加することとあいなった。


開会式、そして野球の実況をつとめるのは、


「前畑がんばれ!前畑がんばれ!」


今回も競泳で出場する前畑秀子が、前回ベルリン大会で金メダルを獲得した時に実況をつとめ、


この「前畑がんばれ!前畑がんばれ!」の名言で有名となったNHKアナウンサーの、河西三省(かさい・さんせい)が、野球日本代表と、アメリカ代表との試合で実況をつとめる。


「さあ!野球日本代表も入場してきます!

エースピッチャー、沢村栄治がいます。

川上哲治は4番を打ちます。

景浦将もいます。藤村富美男もいます。

クリーンナップは、3番藤村富美男、4番川上哲治、5番が景浦将です。」


そして、ついに試合が始まった。


アメリカ代表の4番はベーブ・ルース。


そしてエースピッチャーは、レフティ・グローブと、カール・ハッベルという、両左腕を代表のエースとして選出してきたアメリカ代表。


「おいおい、本当にアメリカ代表の球なんて、打てるのか?」


先攻アメリカ、後攻日本で試合が始まった。


「プレイボール!」


日本代表のエースは、やはり沢村栄治。


「ピッチャー、沢村栄治、第一球投げました!」


ズバン!


投球を受け止めるグローブの音も、快調に響き渡る。


1回表、エース沢村栄治が三者連続三振で抑える。


1回裏、日本代表はいきなり先頭打者ホームランで先制した。


これが、後にルーズヴェルト・ゲームと呼ばれる試合の幕開けだった。


「この試合で日本代表がアメリカ代表に勝利すれば、野球選手に限りだが、兵役を免除してもらえるそうだ。」


誰かが言っていたこと。


「いいよなあ、野球選手は、試合に勝てば兵隊に行かなくていいんだもんな。」


「バッキャロー!俺たちのヒーローの野球選手たちを、戦争の道具に使うなんて、そんな野暮な話があるか。

わざわざ手榴弾を投げさせたり、鉄砲玉の的にするような、野暮なマネを軍部ってところはするのか?」


この試合は各国の政府要人などもVIPとして観戦に来ていた。


その中に、清国最後の皇帝であり、満州国皇帝となっていた、


あのラストエンペラーこと、愛親覚羅溥儀(あいしんかくら・ふぎ)の姿もあった。


「これが野球というものか。

そしてこれが、スポーツというものなのか。

そのスポーツというものの大会が、オリンピックという、それがここ東京にやってきたと。」



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