変わった依頼2
「一緒にいちゃマズいの?」
「いいんですけど…」
朗の頭の中にはクエスチョンマークがたくさん浮かぶ。
家出かと思ったら、そうじゃない…。
同性愛かと思えば…そうじゃない…。
「えっと…凛さん、話見えないんだけど?」
「凛で良いです、…話、長くなりますけどいいですか?」
「もちろん」
朗のその言葉で凛は少し、笑顔になった。
「良かった。…依頼は、兄が笑わなくなった理由を見つけて欲しいんです」
朗はキョトンとなる。
「理由?」
「はい…、理由見つけてもらえたら…」
そう言って凛は言葉を飲み込む。
「…もらえたら?」
「…もし、それが私のせいだったら…兄の前から私は消えます」
そう言って朗を見つめる瞳は何かを覚悟しているような強い瞳だった…。
凛の兄は崇と言った、米軍基地で通訳として働いている。
彼女は話を続けた。
「…で、依頼受けたの?」
コーヒーカップを取りに来た大家が興味津々に聞く。
「受けたよ」
そう返事しながらも本当は迷っていた、変わった依頼だし…それに凛が言った「理由が私なら兄の前から姿を消します」と言った言葉が気になって仕方ないのだ。
…姿を消すって変な意味じゃないよな?
例えば…自殺みたいな。そう考えてしまう…
いや、きっと違う意味だ!
嫌な考えを消すかのように頭を振る。
「タロウちゃん、大丈夫?」
目の前に大家の顔があった。
「だ、大丈夫!」
朗は思わず後ずさる。
「もう!照れちゃって可愛い~何だったの凛ちゃんの依頼は?いきなり探偵か便利屋みたいな知り合い居ないかって電話きたのよ、崇君が戻って来ないって心配をしてたから、崇君を探す依頼かしら?」
大家の目は好奇心でキラキラしている。
「違うよ!探偵は依頼人の依頼は口外しないんだよ」
「まあ~ケチねぇ~私とタロウちゃんの仲なのに~それで、依頼料は貰ったの?」
大家の言葉に朗は大事な話をしていなかった事を思い出した。
依頼料…頭にその言葉は無かったのだ。
「ヤバイ…依頼料の話するの忘れてた」
慌てて凛に書いて貰った携帯番号のメモ紙を手に携帯を探す。
番号を押して…
「こっちもヤバイ…電話止まってる」
携帯が止まっている事に気付いた。
「明日までに家賃くれなきゃ追い出すわよ」
と、大家は笑顔で朗の肩に手を置く。
朗はその手を払いながら「やだなぁ、俺と大家さんの間柄で追い出すとか何とか…ねぇ?」と愛想笑いをする。
「可愛く笑ってもダメよ、世の中金か権力よ!」
「持ってない人は?」
「性奴隷かしらねぇ」
と大家が朗に近づいてくる。
「タロウちゃん大丈夫よ、優しくするから……きっと、気持ち良くなるわ」
舌舐めずりしながらジリジリと迫られる。
朗は貞操に危機を感じ、後ずさろうにもすでに壁!
もう、終わりだぁぁ~!心でそう叫んだ瞬間、
「おーい、朗!」
ドアの向こうから竜太朗の声が聞こえ、朗は大家を慌てて大家を突き飛ばしドアを開けた。
「もう!あとちょっとだったのにぃ」
大家の悔しいシャウトが部屋に響く。
「うん?何があとちょっとなんだ?」
竜太朗がキョトンとして朗を見ている
「何でもない、どうしたの?」
「夕食誘いに来たんだよ」
「行く!」
朗は竜太朗にしがみつく勢いだ。
「竜太朗さん、こんばんは」
大家はカップを手に玄関に来た。
「家賃の取り立て?」
「そうよ、明日までに払わないと追い出すって言いに来たのよ、じゃ~ねぇ」
と大家は玄関を後にした。
朗は竜太朗の言葉通り、夕食をご馳走になる為に駅近くのハンバーグ屋に竜之介と共に来ている。
「…で?」
竜太朗がワクワクとした顔で朗に聞く。
「…で?家賃?」
「違うよ、依頼して来た黒髪の美少女ちゃんだよ!何の依頼だったんだ?」
「バ、バカ!言えるわけないだろ!依頼は口外しないのが普通なの!」
「またまたぁ、俺と竜之介はお前の助手だろ?」
「助手?」
「そう!だって、ほら!名探偵には必ず助手が居るだろ?…明智小五郎に小林少年、ホームズにはワトソン…インディジョーンズにショーンコネリー、刑事コロンボにはカミさん」
竜太朗はフォークを振り回しながらに力説してた。
「最後の2人は探偵じゃないだろ?」
朗はおごりのハンバーグを頬張る。
「まぁ、とにかく、助手は必要だ!なっ、竜之介~、竜之介は朗の親友だから仕事手伝いたいよな?」
自分の横の席でハンバーグを美味しそうに食べる竜之介の頭を撫でながら竜太朗は言う。
「うん!どんな事すればいい?」
竜之介はニコニコな笑顔だ…、彼はすでに手伝うつもりのようだ。
「竜之介…は助手やりたい?」
もし、朗が嫌だと言えば…たちまち竜之介の顔から笑顔が消えるだろう。




