ココロのドア8
「きす?!」
二人の同時に華に詰め寄る。
華は、余計な事を口走ったと後悔した。
「キスされたの?したの?」
「いや…その…」
言い逃れは出来ない…華はそう直感した。
「ハッキリ言いなさい!」
マキコは普段怒るよりも迫力があり、華はもう…白状するしかなかった。
「したの!アタシから朗にしたのよ、悪い?」
マキコと同じように開き直る。
「あら~、やれば出来るじゃない!見直した!」
マキコはバンバンと華の背中を叩き、喜んでいる。
「朗め、何も言ってなかったぞ」
竜太朗はブツブツと文句を言う。
「その調子で告白しちゃえ」
「だから、出来ないってば!」
「キスはしたのに?」
その突っ込みに言葉は出ない。
「じゃぁ、お母さんがお父さんに好きだと言ったらアタシも言う」
「話そらさないの!今は華の話してるのよ」
「同じ事でしょ?お母さんだって言えないのをアタシがどうして言えるのよ、アタシの性格1番よく知ってるのお母さんじゃない!」
今度は華が有利に立つ。
「それは…そうだけど」
「でしょ?お母さんが先に言ってよ、夫婦だったんだから今更照れないでよ」
「華だってキスしたくせに照れないでよ」
マキコは、意地悪っぽく笑う。
「あ~、もう!キスの事は言わないでよ」
華は顔を赤らめる。
「…夫婦だったからよ、だから言えないの、もう心のドア閉めてだいぶ経つもの…それにさぁ、いくら綺麗で若く見えても40過ぎてんのよ、こっぱずかしくて言えないって!」
「うわ…サラッと自画自賛した」
華はそう言って笑う。
「ドアを閉めてるのはエディも一緒かもな、だから伝わりにくいんだよ、そろそろ締め切ったドア開けて空気の入れ替えしろよ」
決まった…竜太朗はそう思った。
二人をチラッと見る。
「竜…よくそんなクサイ台詞言えるわね」
マキコはあからさまに嫌な顔をしている。
華も頷いている。
竜太朗は、落ち込むしか無かった。
「けど、お母さんって竜太朗さんを好きだったのね」
「あはは、こう見えても俺はモテモテだったのさ」
竜太朗は、決めポーズをつけている。
彼は立ち直るのも早かった。
「横瀬には男の子が少なくてね…、都会に出たらカッコイイ男の子はたくさん居たわ…あの頃に崇君や朗が居たら思い出はもっと綺麗だったわ」
「ひ…酷いマキコちゃん」
マキコのキツイ言葉に、竜太朗はまた落ち込むのだった。
◆◆◆
『崇…私は魅力ないかな?もうオジサンだからかな?』
エディは、ため息つきながら落ち込んでいる。
『いきなりどうしたんですか?』
崇とエディは、車で仕事先から帰る途中だった。
『マキコが話を聞いてくれない』
『ちゃんと真剣に言ってますか?相手に伝わらないのは本当に真剣じゃないからだと思います…エディもマキコさんに対して壁があるように思えます、ドアならドアノブを回すかノックをすれば開くでしょ?それが壁なら、ぶち抜くしかない』
『壁?…そうか壁か』
エディはまたため息をつく。
◆◆◆
「絶対に足かけたよな?」
朗は、しつこく崇に言い寄っている。
「掛けてないって、お前しつこいぞ」
崇は半場呆れ顔だ。
「そっちこそ、いい加減に認めろよ」
「認めたら何?謝って欲しいわけ?」
「そうだよ!謝れよ、今なら許してやる」
そう言って強気な態度を見せる。
が…「器の小さい男」と鼻で笑われ朗はジタバタと子供のように怒りだす。
「ハイハイ、喧嘩はそこまで」
ずっと、二人の会話を見ていた竜太朗はたまり兼ねて仲裁に入る。
いや…仲裁とは言えないかも知れない、すでに朗は負けているのだから。
竜太朗、竜之介、朗の3人はエディの宿泊先へと来ていた。
もちろん今朝、ディナーをご馳走すると言う言葉を実現するべく…なのだが、部屋に入るとすぐに朗が崇に絡んでしまったのだった。
「子供っぽい喧嘩はしない!」
竜太朗に窘められる。
「それにお前、負けてるから」
竜太朗の言葉に朗はカチンときたらしく、「どこが負けてんだよ、どこだよ」今度は竜太朗に詰め寄っている 。
「だから、その子供っぽい所と…」
「器の小さい所」




