ココロのドア5
崇は嫌味で返す
エディは二人の会話を笑いながら聞いていたが、
『大きい方がいいな』
と答た。
「竜太朗さん、おじさんも大きい方がイイって」
「だろうな、マキコちゃんデカイもん」
竜太朗は頷いている。
『ところで何で胸の話しになったんだ?』
『崇が華の風呂を覗いたんだよ』
『バカ!』
バカ呼ばわりされた朗の報復に崇は慌てた。
『崇…それは本当か?』
笑顔から真顔になり、エディは崇に詰め寄る。
『いえ…そんな、違います、入ってるって知らなくて!それに全然、見てませんから!』
必死に身振り手振りで弁解をする。
『ふーん、その割りにはDとか言ってたよな』
朗は、ニヤニヤしながらそう付け加えた。
『バカ朗!黙ってろ、余計な事言うなよ』
朗を睨みつけると。
『本当にわざとじゃないですから!』
エディに必死に弁解をするが何だか泣きそうだった。
『分かったよ、君はそんな事する子じゃない』
余りに必死に弁解をし、今にも泣きそうな顔をしている崇をなんだか可愛いと思い、笑顔でそう言った。
崇はホッとした顔をする。
「バカ朗、覚えてろ」
朗の耳元で言う。
「俺、バカだもん~すぐ忘れる」
とけろりとしている朗になんだか腹が立つ。
「何で凛はこんなバカと付き合ってるんだか…趣味疑うよ」
崇は精一杯の嫌味を返す。
「そうだよなぁ…あんな可愛くて胸がデカイ子がこんな貧乏くさい野郎に惚れたんだか…」
竜太朗もしみじみと言う。
胸がデカイと言う言葉で、竜之介が「そうだよね?」と朗に胸のサイズを確認していたのを思い出した。
ウォンが『もう、チュウとかしたのかなぁ』とか言っていたし、付き合っているんだからチュウくらいしてるだろう…
それに…その先も…
大人なんだから当然あるだろう、…そう考えていると崇は無性に朗に対してムカついてきた。
『崇、どうした?ボンヤリして、仕事の時間だぞ』
『あ、はい』
崇は我に返ると慌てて返事を返す。
『朗、今夜もここにおいで、話がある』
『えっ?それって崇も?』
『もちろん』
『俺…今夜用事あるし』
それはもちろん嘘である、崇と言い合った後ゆえに罰が悪いのだ。
『ディナーをご馳走しようかと思ってさ』
『行きます!』
即答だった。
『分かりやすくていいな君は』
エディは笑うと仕事に行く用意をする。
「さて、俺も帰らなきゃ。竜之介、朗。帰ろうか」
竜太朗はそう言いながら立ち上がる。朗も立ち上がり、歩き出そうとした途端、派手に転んだ。
「朗、お前何してんだ」
「大丈夫?」
竜太朗と竜之介が朗を助け起こす。
「崇だよ!コイツが足をかけたんだ!」
勢いよく立ち上がると崇を睨む。
「自分で転んだのを人のせいにするなよな」
崇は、転んだ朗をバカにしたような言い方をする。
「朗…、ダメだろ、人のせいにしちゃ」
「竜太朗さん、本当だってば!竜之介見てただろ?」
「見てないよ、朗が自分で転んだんだよ」
頼みの綱の竜之介からもそう言われ、朗はむくれる。
「ほら、行くぞ」
崇に文句言いたげな朗の襟首を掴むと竜太朗は竜之介と共に歩き出す。
『何か笑ってませんか?』
仕事に向かう車中で崇が聞く。
『笑ってるよ、君が朗達とじゃれあってただろ?特に朗とは言い合ってた、あれが本当の君なんだろうな…って嬉しくなったんだよ』
『えっ?』
なんだか崇は照れてしまった。
『本当はもっと早くに部屋に戻ってたんだけど、崇が困ったり赤くなったりしてるのを暫く見てた』
『そんな…だったら早く助けに来て下さいよ』
『初めて逢った頃の君は素直だったけれど、誰にも心は見せてはいなかった、心のドアを閉じてるって感じで…でも、段々とドアを開けてくれて、昨日も凄く楽しそうで、自分で気付いて無かっただろ?竜之介に優しくしたり、朗をからかったり、本当の崇が見えて来た感じがして…それが嬉しい』
エディは本当に嬉しそうに言ってくれた。
崇は少し間をあけると
『エディ…聞いてもいいですか?』
と真顔になる。
『何?』
『俺に優しくしてくれるのは…亡くなった息子さんの代わりだからですか?』
エディはドキッとした
『誰から?』
『マキコさんに』
マキコに言われた言葉が頭を過ぎる。
崇の重荷にならないように…そう言われた。
代わり?…そんなつもりは無かった。
けど、崇の口からその話が出ると言う事は…彼には重荷だったのだろうか?
知らず知らずにもう抱きしめてあげられない息子と重ねていたのだろうか?




