ココロのドア3
「ごめん…、入ってるって知らなくて…」
崇は、何度となく華に謝った。
「もういいよ、鍵をかけ忘れたアタシが悪いし、それに崇君はワザとあんな事する人じゃないしね」
「って言うか、華が謝るべきじゃね、逆セクハラ…ガキの裸見てもさ…」
朗が華をからかうが、直ぐにグーで殴られる。
「痛ってぇ~、殴るな華!俺、一応怪我人」
殴られた頬を摩りる。
「うるさい!そんだけ嫌み言えるなら上等じゃない!バーカ」
「バカ?バカとか言うな!」
華と朗の喧嘩漫才が始まり出す。
「ハイハイ、仲良くしてね。華、大人しくしないと崇君がビックリしてるわよ」
マキコの言葉で華は我に返り、崇を見ると確かに…目を丸くして華を見ている。
ヤバイ…、華は慌てて愛想笑いをする。
「ごめんね崇君、華はちょっと乱暴なのよね…私に似れば良かったんだけどね」
マキコは一応、フォローしたつもりのようだった。
「いや、華ちゃんはマキコちゃん似だよ。小学生の時に俺よく殴られたよ。なっ、マキコちゃん」
と笑顔で笑いかける竜太朗にマキコは、顔面にパンチを食らわす。
顔面を殴られのたうちまわる竜太朗を鼻で笑うとマキコは立ち上がり、
「さて、仕事にでも行きますかね。華、先に駐車場で待ってるわよ」
と歩き出す。
「待って、お父さんには会っていかないの?」
「会ったからって、売上が上がるわけじゃないでしょ?」
マキコは表情も変えずにそう言うと部屋を出て行った。
◆◆◆
マキコが駐車場に着くとタイミングよくエディが車から下りて来た。
「マキコ」
『あら、どこ行ってたの?朗は目を覚ましてるわよ、ついでに華に殴られていたけどね』
『えっ?殴られ…マキコに似たのかな?』
『なぁに?死にたい?』
マキコは手で握りこぶしを作る。
『相変わらずだな』
マキコの態度につい笑ってしまう。
『どう言う意味?』
『相変わらず、綺麗だって事だよ』
『ふ~ん、死にたくないのね』
そう返すとマキコは車のドアの鍵を開ける。
『なぁ…マキコ、あのさ』
エディは躊躇いがちにマキコを見つめている。
『やり直さない』
そう即答するとマキコはサッサと車に乗り込んだ
『少しくらい考えろよ』
ガラス越しに訴える。
マキコは窓ガラスを下ろし『何を考えるの?』と聞き返した。
『何を言いたいか分かるだろ?今、付き合ってる男とか居ないんだろ?』
『だから?何?』
マキコの少しも揺るがない態度にエディは次の言葉に詰まる。
『貴方も相変わらずね…、ハッキリと言えないし、昔っからそう…言えばいいのに躊躇ってばっかりで、本当にむかつく男!子供の事だってそう!私に何も言わない!崇君可愛いがるのもそのせいでしょ?死んだ息子の代わり、崇君の重荷にならないようにね』
言うだけ言うとエディの反論も聞かずにマキコは窓ガラスを閉める。
『お父さん』
華が息を切らせて走って来た。
『おはよう華』
『おはよう、どこに行ってたの?』
『カーターを送って来たんだよ、朗は元気になったんだろ?良かったな』
『うん』
華は朗と言う言葉でたちまち笑顔になり、嬉しそうに返事を返す。
『じゃぁ、仕事なんだろ?頑張っておいで』
と華の頬に軽くキスをする。
『お母さんにはしないの?』
『したら殺される…さっき、怒らせてしまったから…ほら、早く乗りなさい』
エディに促され華は車に乗る。
華が乗り込み、シートベルトをすると、マキコはエディの顔も見ずに車を走らせた。
『話し聞かないのはどっちだよ』
車を見送りながらエディはため息をついた。
「お母さん、飛ばし過ぎだよ、捕まっても知らないから」
マキコの車は制限速度を守ってはいなかった。
「オープンに間に合わないでしょ!」
そう言うと更にスピードをあげる。
「お母さんって、お父さんに冷たい」
マキコがエディを見ずに車を出した事を言っている。
「何が?別れた男よ、優しくして何か得する事ある?」
「そうだけど…お父さん、寂しそうだよ、お父さんはまだお母さんが好きだと思うよ」
「だから?」
「お母さんは好きじゃないの?」
「好きだったら別れてないわよ」
「そうだけど…何で別れたの?」
「甲斐性なし、根性なし、空気読めないし、言いたい事さえハッキリ言わない、本当に嫌なヤツ!」
マキコは本気でいらついているようにスピードを加速させる。
「お母さん、そこまで言わなくても…私のお父さんだよ」
華は寂しそうに言う。
「…ごめん、そうだよね」




