ココロのドア
「凛ちゃん今ウチに居るんだよ、聞いてない?凛ちゃんは今日は夜勤だって言ってたな、心配なら崇君、電話してあげなよ」
「お世話になってるんですか?すみません妹が」
崇は竜太朗に深々と頭を下げる。
「世話になってるのはこっちだよ、竜之介と遊んでくれるし、家事もしてくれる、ハニーが今、入院してるから助かってる」
崇は凛から友達の家としか聞いてなく、もしかして朗の部屋かな?とか少しヤキモチを妬いていた部分もあり、安心した。
◆◆◆
朝…
若干の頭の痛みを感じながら朗はゆっくりとベッドから起き上がる。
「痛い…かな?」
手で頭を撫でた。
ベッドの端に華が俯せで眠っている。
ずっと側で看病してくれたのだな、と華の頭をそっと撫でた。
華が起きないように、そっとベッドから抜け出す。
部屋を出て、隣を覗くとソファーに竜之介を抱えて眠る竜太朗と近くのソファーで熟睡している崇がいた。
缶ビールがたくさん転がっているので飲み明かしたのだと朗にも分かる。
缶ビールを拾いながら周りを確認するとエディとカーターの姿は無かった。
「朗、元気になった?」
竜之介がいち早く目を覚まし、朗の側に来た。
「しっ~!皆、起きちゃうだろ」
少し大きめな声を注意する。
「ごめんなさい、朗…頭痛くない?」
「大丈夫だよ、心配かけちゃったな。」
笑ってみせると竜之介も安心したようだった。
二人で飲み明かした後片付けを始める。
「おじさんとカーターさんは?」
「分かんない、僕、皆より先に寝ちゃったもん」
「そっか…、それより腹減ったなぁ…でも、コンビニ行く金無いしな」
「僕もお腹空いちゃった」
二人共、同時にお腹の虫が鳴る…。
「ここって、どこ?」
「おじさんが泊まってるホテルだよ、スィートだって言ってたよ」
「ス、スィート?!スゲェ!初めて見た」
朗は今更ながらに部屋中をマジマジと見る。
「スィートか…、おじさんって仕事何してんのかな?金持ちだよな」
「ねぇ、華姉ちゃんは?」
「熟睡してて、起きないからベッドに寝かせて来た」
「華姉ちゃん、ずっと心配してたもん…」
「皆に心配かけちゃったな…蓮さんには平手くらうし、凛も心配してるよな」
とため息を混じらせた。
「僕がアイツ等に捕まったから」
竜之介はしょんぼりと俯いてしまった。
「気にするなって!でも、何で俺達無事だったんだ?気を失ってたしさ、多分…説明受けたと思うんだけど覚えてない」
缶を拾い終え、フカフカなカーペットに二人して寝転ぶ。
「やべぇ、凄くフワフワしてるぜ、このカーペット」
朗は嬉しそうにゴロゴロと転がる、貧乏な彼には二度と入れる日は来ないだろう…。
竜之介はゴロゴロ転がる朗の側にチョコンと座ると
「昨日ね、アイツ等の一人が朗を殴った後に崇って朗を呼んだの」
と言った。
「えっ?崇?!」
寝転んでいた朗は思わず起き上がり崇を見た。
崇は相変わらず寝ていて起きない。
「うん!それで、アイツ等が朗を車に乗せようとした時に車の窓ガラスが割れたの」
「えっ?何で?」
「多分ね、誰かが銃で撃ったんだと思う」
「銃?!」
朗は声が裏返ってしまった…、誰が銃を使ったというより、小さい子供から銃と言う言葉が出て来たからだ。
「よく映画とかで見るでしょ?あんな感じでガラスが割れて、僕を捕まえようとした人が足を撃たれたもん…」
「本当に?」
何度も確認をしたくなる、もし本当に銃が使われているのなら、相当危ない事件に竜之介を巻き込んでしまったと恐ろしくなった。
「うん、だから僕は逃げれたんだよ、その時に崇兄ちゃんとおじちゃんの車が来て助けて貰ったの」
「竜之介、怖かっただろ?ごめん」
朗は竜之介を引き寄せると強く抱きしめた。
「ううん、大丈夫だよ!それに謝らないで、僕のせいだし、朗と僕は親友でしょ?」
「ありがとう」
更に力を増す。
俺は崇に間違われていた。
本当は崇を誘拐するはずだった…。
だから崇の部屋は荒らされていたのかな?
えっ?待てよ…崇の部屋を知ってるのなら…俺の部屋を荒らすはずがない…。
だって、俺を崇だと勘違いしてたなら、俺の部屋を知らない。
あの時、部屋に一人居て、外に既に追ってきた奴らが居て…。
そして銃で撃った奴が居る。
足を撃った時点で誘拐犯とは仲間じゃない。
だって、邪魔をする理由が分からない。
そう考えていた。
でも、考えれば考える程分からない…。
突然にお腹の虫が鳴る。
「腹減って考えがまとまらない」




