君の涙の理由4
竜太朗と竜之介の2人は懸命に蓮を止める。
「それでも悪いのは朗だ!」
蓮は2人を振り解く。
「…うん、悪いのは俺だよ…だから殴られても仕方ない。竜之介を巻き込んですみませんでした。何発殴ってもいいから」
朗は蓮と竜太朗に頭を下げた。
「良い心構えだな」
と蓮が1歩、朗に近づく。
『ダメです!絶対にダメ!彼、頭打ってるんですよ。今は安静に』
素早くカーターが朗と蓮の間に入る。
「うるさい外人だな、アンタ誰?英語で言われても分からん」
蓮はカーターに凄む。
「朗は頭を打ってるから安静にして欲しいと言ってるんです。彼は医者で…」
崇が咄嗟に通訳をした。
「お前医者か?」
蓮はカーターに睨みを効かせ、
「安静なのか?」
とカーターの襟首を掴む。
「止めろじいさん、それは人にものを訪ねる態度じゃないぞ」
竜太朗は横暴な態度の蓮をカーターから引き離す。
「俺、大丈夫だから殴っていいよ」
覚悟を決めた朗はギュッと目を閉じた。
カーターと竜太朗が止める手を振り切り、蓮は勢いよく手を振り上げ、…そのまま下ろすと朗を強く抱きしめた。
「今度やったらただじゃすまない」
耳元でそう呟き蓮はすぐに離れた。
殴られるとばかり思っていた朗は抱きしめられ…驚いて目を開けていた。
「蓮…さん?」
蓮は朗と目も合わさずに。
「用事は済んだからワシは帰る、竜太朗と竜之介はどうせここに残るんだろ?朗もちゃんと病院で検査して貰うまで家にはいれん」
とノシノシと歩いて部屋を出て行った。
残された者はポカンとなってしまった。
「何か…嵐が去った後みたいだな」
竜太朗は笑い出す。
『頬、腫れてるね。誰か冷たいタオル』
とカーターは赤く腫れ、口の端に血が滲む朗の頬に触れる。
『じゃぁ、俺が行きます。』
と崇がタオルを濡らしに洗面所に行く。
「全く…このお子ちゃまは人騒がせな」
竜太朗はホッと息を吐き、朗の側に行く。
「ごめん…反省してる。明日、連さんにちゃんと謝る」
朗は俯く。
「凄かったんだぜ、ここに来る間。お前の心配ばっかり、死なないよな!とかさ、竜之介はお前の息子だから心配も叱るのもお前がやれって、朗を叱るのも心配も自分がするからってさ」
竜太朗は朗の頭を優しくポンと叩いた。
「泣くな、ガキんちょ」
俯き涙を零す朗の頭をクシャクシャに撫でた。
『君にはちゃんと…あんな風に怒って心配してくれる人が居るんだね…良かったよ』
カーターが優しい口調で言ってくれた。
朗は何故だか涙が止まらなかった。
蓮にギュッと抱きしめて貰った時に彼の優しさと本当に自分を心配してくれていると伝わって来た。
どんなにバカをやっても見放さずに叱って抱きしめてくれる人が居る…
意地を張らずに素直になれそうな気がしてくる。
「ごめん、竜太朗さんも」
泣きながら謝る朗に、
「本当にお前はガキの頃から変わってないよなぁ」
と竜太朗は今度は両手で頭をくしゃくしゃにした。
崇が濡らしたタオルを華に渡した。
「何?」
「野郎が看病するより、可愛い女の子がいいだろ?行ってあげなよ。…行きたいんだろ?」
崇の言葉に華は頷き、タオルを受け取る。
『崇、娘はつまらないよ』
朗の所へ行く華を見つめながらエディが呟く。
『華があんな顔するなんて知らなかった…誰かを愛してやまない…って大人の女性の顔してるなんてな。…どんなに愛情注いでもあっという間にどこかの男に取られてしまう』
『そうですね』
余りにも寂しそうにするエディに崇は笑い掛ける。
『崇、飲もう!』
とエディは冷蔵庫からビールを出し、崇に投げる。
『飲んで忘れる!』
『はい。』
崇は笑顔で返事をした。
「ほら、もう泣くな、竜之介も見てるだろ?」
「朗、大丈夫だよ。僕も一緒に謝るから泣かないで」
竜之介は慰めるように朗に抱き着く。
寂しい時はギュッと抱きしめる…と言っていた竜之介の言葉を思い出した。
「うん…」
朗は頷き、竜之介を抱きしめる。
ドアが開き、華が入って来た。
『あとは可愛い看護婦さんに任せようかな?』
カーターは華に薬と水を渡す。
竜太朗は気を利かせるように竜之介を持ち上げ、3人で部屋を出た。
残された華は朗のベッドの近くに椅子を置き座る
「タオルあげる」
と華は朗の腫れた頬にタオルをあてる。
「痛、優しくしろよ」
朗は文句を言う。




