君の涙の理由3
『…前言撤回だな、君は見る目あるよ』
カーターは上機嫌になる。
「朗!」
待てないように華が部屋へ乗り込んで来た。
『すみません、まだダメだって止めてたんですけど』
後ろから崇が慌てて入って来た。
「華?崇も…何で?」
朗は何故2人が一緒に居るのか不思議そうな顔をしている。
「朗、アンタまた変な事に首を突っ込んでるんでしょ?何してるのよ、竜之介君まで怖い目に合わせて!このバカ!」
華は何時ものように力いっぱい怒鳴る。
「華~、怒鳴るなよ…頭に響く」
朗は枕に顔を埋める。
『華、こっちおいで。朗は一応怪我人だよ』
エディが優しく華を宥める。
『そうだけど、…言わなきゃコイツはもっと危ない事をするの』
華は少し涙目だった。
『危ない事はして欲しくないの…だから』
『朗も分かってるよ』
エディは華を側のソファーに座らせる。
聞き取れた朗は、
「ごめん華…反省してる。…竜之介を危ない目に合わせて、後で竜太朗さんにも謝るから」
と華に謝る。
「違うよ!アタシが怒ってるのは…」
華は涙を堪えるようにその先の言葉を止めた。
『崇、華と竜之介を頼む。』
とエディは崇を呼び寄せる。
『はい』
崇は返事をすると、華と竜之介を連れて部屋を出た。
『ごめんな朗、うちの華が』
エディは華の代わりに謝罪をした。
『悪いのは俺だもん…、竜之介に怖い思いさせちゃったし』
『それは違うよ朗、華が怒ったのは君が心配だからだよ』
とエディは朗の頭を撫でる。
『なんか昔を思い出した…夜遅くまで遊んで華を送って行ったらオジサンが居て、2人とも凄く怒られて…華が泣き出したらオジサンが慌ててマキコさん呼んで、俺を送ってくれてる間もずっと説教された』
『そうだっけ?』
『うん、俺には怒ってくれる父親が居ないから華が羨ましく思えた、お父さんっていいなぁ…って』
『朗、君の家族は?』
カーターが聞く。
『俺、家族居ないんです。母親は子供の頃にいなくなって…父親は元から居ない。育ててくれた祖父も死んじゃったし…心配してくれる家族も怒ってくれる家族も居ない…』
『そうか、君といい崇といい、どうしてこんな良い子が苦労するかな?いつまでも親のスネかじる奴も居るのに』
カーターは切なそうな顔をしている。
『カーターさんは親孝行ですか?』
『多分…、自信ないけど』
笑って誤魔化す。
『さて、君は眠った方がいいね。疲れてるだろ?』
カーターはシーツを掛け直してくれる。
『薬をあげるから、水を』
『私が行くよ』
エディが気を利かせてグラスに水を注ぎに部屋を出た時にまた、ドアが激しく叩かれた。
華、崇、竜之介が激しい音に驚いている。
「すみません」
と激しく叩かれる音と共に蓮の声がした。
「おじいちゃん」
蓮の声に竜之介は反応した。
エディがドアを開けると蓮が勢いよく入って来た。
「じいさん待て!」
後を追うように竜太朗も入って来た。
「よう!華ちゃん、崇君」
とア然として2人を見ている華と崇に竜太朗は笑顔で挨拶をする。
「お父さん、おじいちゃん」
竜之介が竜太朗に抱き着く。
「良かった、竜之介大丈夫か?朗は?」
息子の元気そうな姿に竜太朗はホッとした顔になった。
「朗なら奥の部屋…」
と竜之介が言い終わらないうちに連が勢いよく奥の部屋のドアを開けた。
「蓮…さん?何で?」
朗は驚いて、ベッドから起き上がる。
「よう!竜之介がここに居るって電話して来たんだよ、そしたらじいさんが猪突猛進で…」
竜太朗も蓮の後ろから顔を出した。
「そっか、心配させちゃった」
と2人の方へ顔を向けた瞬間に朗は思い切り連に平手打ちされた。
「痛ってぇ、何すんだよ!」
と朗はキッと蓮を睨む。
「何をしてるか聞きたいのはこっちだ!家に居ろって言ったのに、黙って出て行ったあげくに竜之介まで危ない目にあわせて!」
蓮は怒鳴り散らす。
初めて見る蓮の怒る姿に朗は初めて自分がした事の責任を感じた。
『落ち着いて、彼は怪我人だから』
と朗に掴みかかる勢いの蓮をカーターを止めにはいる。
「えぇい、うるさい!英語なんか分かるか!このクソガキは何発か殴られなきゃバカは直らん!」
蓮はカーターさえも振り切る。
「じいさん止めろって」
「おじいちゃん、電話でも行ったけど僕が勝手に着いて行ったの、僕が悪いの!」




