狙われる探偵
「朗は竜之介と仲良く遊んでろ…」
そう言いながら連が振り向くと、そこには朗の姿が無かった。
「あのクソガキ…」
蓮は怒りで拳を握る。
◆◆◆
「全く、蓮さんも竜太朗さんも俺の事ガキ扱いしてさ、ムカつく」
朗はコッソリと抜け出していた。
自分と一緒に行動すれば危ないのなら、自分一人なら…なんとか出来る!それが朗の理屈である。
「それは仕方ないよ、朗は危なかっしいもん」
「そおかぁ?」
竜之介の問い掛けに返事を返し。ふと…我に返ると慌てて振り返った。
「竜之介いつの間に…」
知らない間に後ろから竜之介が着いて来ていたのだ。
「ずっとついて来てたのに、気付かないんだもん。…朗は探偵に向いてないよ」
その言葉に朗は力なく座り込む。
「竜之介、危ないから帰れ。」
「ヤダ!」
竜之介は首を振る。
「蓮さんが言ってただろ?アイツらが居ない保証はないし、万が一の事があったらどうする?俺は充電器を取りに行くだけだから、すぐに帰るし、戻ったら遊んでやる。だから…なっ?」
朗は竜之介の両肩に手を置き、説得をする。
「ヤダ!朗と僕は親友でしょ?親友は協力し合わなきゃ」
竜之介はこんな時、絶対にうん。とか言わない…結構頑固な所があった。
「でも…」
朗はどう納得させようか悩んでいる。
「今、僕を一人で帰す方が危ないと思うよ、それに送るにしても家に帰ったら絶対におじいちゃんに捕まるよ、…どっちにしろ、無理じゃない?」
情けない…子供に説得されてる。しかも…納得したし。
朗は竜之介の言う事にも一理あると連れて行くしかなかった。
「朗、アイツ等だ!」
竜之介は朗の手を引っ張り、近くの建物の隙間に入った。
朗をつけて来た外国人がキョロキョロと辺りを見回している。
多分、自分を着けて来たんだと朗は息を潜める。
「まずいな…」
このまま、隠れているわけにもいかない。
どう振り切るかを朗は必死に考える。なんせ、竜之介が一緒だから
「朗、こっちだよ」
竜之介が小声で朗を手招きする。
建物の隙間を行くと言うのだ。
隙間は大人一人がやっと通れるくらいだった。
「真っ直ぐ行ったら行き止まりだろ?」
「大丈夫だよ。この先にあったお店は潰れちゃって、壊されてるの。だから通れるよ」
竜之介の言う通り、狭い通路を抜けると何もない開けた場所に着いた。
「でね、朗のアパートまでの近道あるんだよ。」
竜之介は朗の手を引っ張り歩き、パチンコ屋の裏口を開ける。
「おい、裏口からは怒られるぞ」
「大丈夫、このパチンコ屋も潰れちゃったんだよ」
とビビる朗をお構いなしに竜之介は進んで行く。
パチンコ屋に来た事無かった朗は珍しいさにキョロキョロしながら歩いている。
パチンコ屋を通り抜け、ブロック塀を乗り越え、いくつかの建物の間を通り抜け、何だか昔を思い出した。
子供の頃、探検とか言って山に行ったり、空き家になった民家に忍び込んだり…今、まさにそんな感じだった。
建物の隙間を抜けると駐車場に出た。
その駐車場を見て朗は驚いた…、自分のアパートの裏にある駐車場だったのだ。
「凄い、本当に近道だ」
朗は尊敬の眼差しで竜之介を見る。
「いつもなら建物とかのせいで遠回りだったもんね。」
竜之介の言う通り、いつもは建物の密集のせいでかなり遠回りをしていたのだ。
駐車場のブロック塀を二人で登り、朗の部屋の真後ろに降りた。
アイツ等の事を考えたら正面から入るのはさけた方がいい。そう考えた。
「朗、どうするの?窓壊すの?」
素朴な疑問を投げかける竜之介に朗は微笑むと、
「任せなさい。窓に鍵は掛かってるけど、2枚一緒に持てば外せるんだ」
と2枚同時に持ち上げ、窓を外す。
「鍵掛けてる意味ないね…」
竜之介はポツリと呟く。
部屋の中へ入ると見事に散らかっていた。
「うわ!朗、掃除くらいしなよ」
部屋の散らかる様子に竜之介は呆れている。
「やられたな…」
散らかしたのはもちろん朗ではない。
凜の部屋と同じ状況になっていた。
「ま、取られる物なんて無いしな」
朗は充電器を探し、ポケットに入れた。
…その瞬間。
何かが横切った、朗は寸前でそれを交わした。真横でバチッと電流が流れる音がした。
スタンガンだ。また喰らう前に朗はスタンガンを握る相手に体当たりをした。
「竜之介、逃げるぞ」
竜之介の手を掴み玄関まで猛ダッシュした。玄関は開いており逃げ出す事が出来た。




