お金がないんです。6
朗は男の子達の方へ視線をやると、
「なぁ、お前等、ハンバーガー待ってんだろ、中入れよ」
中へ招き入れた。
始めはモジモジしていたが、
「何ビビってんだよ。皆、竜之介の友達だから安心しろ」
と人懐っこい笑顔を見せる朗に親しみを感じたのか、店内へ入って来た。
「あ、でもこのオジサンは竜之介のお父さんで、こっちの派手なお兄さんは竜之介の子分、電気屋のオジサンに…で、俺が竜之介の親友の朗だよ、よろしく」
それぞれを紹介すると、子分と言う言葉で男の子達は一斉に晴彦を見る。
晴彦は朗に目で(覚えてろよ!)と訴え、「はい。どーも子分です」と挨拶をした。
「竜之介のお父さんは知ってるよ、カステラ屋さんでしょ?この前、お母さんと買い物行ったらオジサン居たもん」
と男の子の一人が言う。
「おっ、買い物来てくれたのか、じゃぁ~今度来たらマケてやるよ」
と竜太朗は男の子の頭を撫でた。
「竜之介はすげぇなあ~大人を子分にしたり友達にしてるんだ」
「そう!でも、凄いのはそれだけじゃないぞ、京町のゲーセンのゲームの最高得点出してるのも竜之介だ」
その朗の言葉で男の子達の目つきが変わり、「凄い!」の連発をそれぞれが発している。
「俺も得点の出し方教えて貰ったから、お前達も教えて貰えよ、それとレアカードの出し方も」
と朗はカードを指差した。
「竜之介、いつも学校で大人しいからゲームとか上手いって知らなかった」
「すーげぇ、このカードまだ皆持ってないんだぞ」
「ね~カード見せ合おうよ」
見る見る、竜之介は話の中心になり、男の子達は尊敬の眼差しだ。
「今から皆で、ゲーセン行くんだ、竜之介も一緒行こうよ」
男の子の誘いで竜之介は、
「お父さん、行ってもいい?」
と嬉しそうに竜太朗を見上げた。
「行っておいで、でも門限までには帰って来る事!」
「うん」
竜太朗はいつもより元気よく返事を返す竜之介の頭を撫でた。
「はい。お持ち帰り、竜之介君の友達だから今日はお姉さんのおごりね」
と華が男の子達にハンバーガーの袋を渡す。
華の可愛い笑顔に男の子達は照れながらハンバーガーを受け取る。
「頑張って遊んで来い!」
と朗は竜之介の背中を軽く叩いた。
「…ねぇ、朗」
竜之介は照れたように朗を見ている。
「さっき僕の事、親友と言ったよね?あれ本当?」
「何だよ、竜之介は俺を親友だと思ってなかったのかよ」
少し拗ねたような顔をする朗に竜之介は、
「朗は親友だよ」
と嬉しそうに微笑み、友達と元気に外へ駆け出して行った。
「朗…ありがとうな」
竜之介の背中を見送りながら竜太朗が呟く。
「何言ってんだか、竜之介ならその内、もっと沢山友達が出来るさ、華、ココアおかわり」
と朗はカップを華の前に突き出す。
「朗の言う通り、友達はすぐに出来ますよ、大人と遊ぶより同じ歳の子がいいだろうし、…そうなると朗はお払い箱だな」
晴彦はニヤリと朗を見て笑う。
「…あの、竜ちゃん…どうかしたんですか?」
朗のココアを作りながら華が聞く。
「あ、そっか…、華ちゃんは知らなかったね…、竜之介は小児喘息持ってるだろ、それで入退院繰り返してて、友達もいないって学校に行きたくないって、…ずっと学校行かなかった時期があるんだ、その時に朗と晴彦君が遊んでくれたり、勉強教えてくれたりで…ようやく最近学校に行だしたんだ」
竜太朗の話を黙って聞いてた華は少し、涙ぐんでるようで、
「…竜之介君…あんな小さいのに大変なんだね」
そう返すのがやっとだった。
「さっき、友達と遊んで来るって言った竜之介が本当に嬉しそうで良かった」
竜太朗も涙ぐんでいる。
それだけ、息子が心配だったのだ。
「竜之介は強い子だよ、大丈夫!」
「朗もたまには役に立つのね」
華は笑顔でそう言った。
「朗君に皆構いたくなるのはそんな所なんだよ、別に甘やかしてるんじゃない、優しくされたら、優しくして返す…それだけの事なんだ」
史郎はさっきの立て替えの事を言ってるのだろう。
「それに私は朗君の力にならないといけない」
その言葉に朗は首を傾げる。
「いや、ほら…去年母が亡くなった時に色々して貰ったし…」
「何だよ、それ位で恩着せがましく言わないってば」
朗は微笑む。
「あ、…もう行かなきゃ、朗君…立て替えの件後でね」
と史郎は出来上がったハンバーガーの袋を持ち店を出た。




