事件の始まり12
「その携帯はどうした?」
「まだ持ってるよ、警察に届けようと思ってたんだけど、めんどくさくて今まで行ってないんだ、でも…事件と何か関係があるなら…警察に行った方がいいかも」
「それは止めた方がいい」
朗の言葉にエディは真顔で即答した。
「えっ?でも」
朗は躊躇する。
「君は殺された被害者に会ってるんだろう?もしかしら君が最後に会った人間かも知れない…だったら君が疑われるよ」
「何で?俺、その時初めて会ったのに」
「調べれば後からは疑いが晴れるかも知れないが、それまでは犯人扱いだし、根掘り葉掘り聞かれたり、外出も警察が付き纏う、それでもいいのか?」
朗は考え込む。
エディの言う通り、もしそうなったら嫌だ!
「もうちょっと考えてみる、コーヒー冷めちゃうよ」
朗はコーヒーを気にしている。
朗は手を振ると歩き出した。
『まずいな…あの子が持っているのか』
エディは崇の元へ急ぎ足で戻るとコーヒーを渡し、少し待つように言うと携帯を持ち、遠くに離れる。
『あれを持っているのはスタンガンを使った子だ、車から見えるか?黒いジャケットを着ている子だ、殺されたウォンの友人は彼と崇を間違ったんだ…なんとかして、奪い返せ。だが、怪我はさせるな娘に泣かれる』
そう言ってエディは電話を切った。
朗は黒い車の横を過ぎて行く、エディに電話を受けた相手はゆっくりと車を走らせた。
◆◆◆
「朗、どこに行ってたんだ?」
店に入ると蓮に声を掛けられた。
「散歩、竜之介は?」
「二階に竜太朗と居るよ」
「今日は一日遊ぶ約束してたから、蓮さんは邪魔しないでよね」
と念を押す、またゲーム三昧には付き合えない。
「それより凛ちゃんはどうするんだ?暫くは怖くて帰れないだろ?」
「そうだね、怖いって言ってた」
「一緒に暮らさないのか?」
「あっ…そうか、その手があったか、凛は部屋探してるんだよね」
朗は凛と暮らすのもいいな…と思いながら二階に上がった。
蓮は視線を感じ、外に目を向けると店内を覗いている男に気付く。
蓮が店の外に出ると男はスッ…といなくなった。
「おかえり朗、どこ行ってたの?」
二階に行くと竜之介が直ぐに近寄って来た。
「散歩、これ竜之介にお土産」
と袋を竜之介に渡す。
「あ、タコ焼きだ!これ駅の近くのだよね?ここのタコ焼き美味しいんだよね、僕大好き」
竜之介は袋の中を見て喜んでいる。
「駅?朗、駅に行ったのか?」
竜太朗が何か言いたそうにしている。
「散歩だよ、散歩!そしたら、竜之介が駅タコ好きだって思い出してさ、それで買いに行ったんだよ」
朗はやましい事があるかのように竜太朗から目をそらした。
「ほほう、竜之介の為にわざわざ駅まで、そうか、そうか、ふ~ん」
竜太朗はニヤニヤしながら竜之介のタコ焼きを一つ食べた。
「もう!お父さん!勝手に食べないでよ~朗が僕に買って来てくれたんだよ」
竜之介は怒りながらフタを閉める。
「いいだろ、一つくらい。あと5個もあるんだから…だいたい何で俺の分が無いんだよ?」
竜太朗は不服そうだ。
「財布忘れて…ちょうどポケットに100円あったからさ」
「朗、見栄をはるな、財布に100円しか無かったんだろ?」
竜太朗は慰めるように朗の肩を叩く。
「うるさい!」
図星をつかれ、朗は怒っている。
「良かったな、ウチの子は安い物好きでさ、6個100円のタコ焼きしか買えないのも辛いけどな」
「いつか殺す!」
朗はキッと竜太朗を睨む。
「朗、ちょっとおいで」
蓮が部屋へ来た。
「何?どうしたの?」
蓮は朗達を連れ、窓際に行くとカーテンをゆっくり閉め、少し開けた隙間から窓の下を見る。
「何?」
蓮の不思議な行動に首を傾げている。
「窓の下見てごらん、看板の所に男が居るだろ?」
言われた通りに隙間から下を見ると看板の所に男性が居た。
「お前をつけて来たみたいなんだ、身に覚えないか?」
そうに言われ、驚き、再度確認してみるが初めて見る男性だった。
「財布に100円しか持ってない男を襲ってもなぁ」
「シツコイんだけど!」
「ねぇ、何か見えるの?僕もみたい」
竜之介も背伸びをして窓の下を見る。
「ねぇ、見ているのはあの外国人?」
「そうだよ」
「僕、見た事あるよ」
「本当か!」
3人同時に反応した。
「ほら、お父さんが一緒にバスケした外人さん覚えてる?ウォンってお兄ちゃん、その人と話してた」




