表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロジック  作者: なかじまこはな
68/135

事件の始まり11

カーターが帰った後にエディは別の部屋で崇の携帯をチェックする。


確かにウォンから着信が入っている。


そして、メールは無かった。


崇の携帯を彼の上着に戻すと自分の携帯を出し、誰かに電話をかける。


『あれを持ってるのは崇じゃない…ウォンからの着信が崇の携帯に入っている。ウォンを何とか探しだしてくれ…マズイ事に軍の中に裏切り者がいるみたいだ』


それだけ言うと電話を切った。


『崇が持ってないとすると、誰が持ってるんだ?』


エディは呟く。







◆◆◆


朝、何となく朗は佐世保駅に来てしまっていた。

別にチエコが気になってるわけじゃない、…ただの散歩だと朗は自分に言い聞かせている。


駐車場に視線が行くと、知っている後ろ姿を見つけた。


「崇」


背中を叩くと彼が振り向いた。


「何だ、お前か…」


崇は愛想なくそう言った。


「お前じゃないって、朗だよ!何やってんの?」


「人待ってる」


「ふ~ん、じゃぁ」


朗が行こうとすると、


「朗」


呼び止められた。


朗が振り返ると「この前の礼を言うの忘れてた」と言われた。


「何の?」と聞き返す。


「看病と…冷えて水吸った雑炊」


と最後は嫌みっぽく言った。


「そりゃぁ、どういたしまして」


朗は笑って返すと歩き出す。



◆◆◆



しばらく歩くと擦れ違い様に誰かとぶつかりそうになる。


『ごめん、大丈夫かい?』


両手にコーヒーカップを持ったエディが謝る。


「おじさん?」


朗は見覚えがある顔に声をかけた。


「おじさん、俺です。朗です」


「えっ、朗君?大きくなったね、身長も高くなったし…男前になってるし、…そして、娘を泣かした。」


華を泣かしたは小声で言った為に朗には聞こえてはいない。


「元気でしたか?」


「もちろんだよ、何年振りかな?前逢った時はまだ学生服だったよな?」


「あの時は高校生だったから、今はもう25です」


「そうか、今は何してるんだい?」


「えっ、あっ…まぁ…それなりに」


朗は胸張って探偵だとは言えなかった。


「それより、おじさん誰かと待ち合わせしてるんじゃない?」


話をそらしながらコーヒーを指差す。


「あぁ、通訳してくれてる子とね」


「おじさん、日本語話せるのに?」


「読み書きは苦手なんだよ、ところで首どうしたんだい?」


エディは朗の手当てされた首筋を指差す。


「あっこれ?昨日、彼女の部屋に泥棒が入って、その時に犯人にスタンガンか何かでやられた」


「はっ?」


エディは一瞬にして部屋に来たのが朗だと分かった。


『君…だったのか』


「えっ?何って言ったの?」


エディが早口の英語で言ったので朗は聞き返す。


「いや、何でもないよ。恋人居るのかい?名前は?」


「凛と言います、凄く可愛いです」


何も知らない朗は笑顔で答えた。


華の失恋の相手が朗だとも知っているし、崇が諦めようとしているのが凛だとエディは知っている。


『君は罪な子だね…、娘は泣かすし、崇の愛してる女性の恋人だなんてね』


決して嫌味ではない…ただ、本当にこの偶然に驚くだけだった。


原因を作った本人は屈託の無い笑顔で笑っている。


「おじさん、英語早いよ!」


ヒヤリングが上手く出来ず、朗はむくれる。


「ごめんごめん、今度食事しようよ華も一緒に」


と笑顔で言った。


「うん、じゃぁ…」


朗が立ち去ろうとした時にエディの方から冷たい風が吹き付けた。


それと同時に甘い香が微かに漂った。


朗はその甘い香に嗅ぎ覚えがあった。


「おじさん香水つけてる?」


「つけてるよ」


「名前は?」


「ブルガリだけど何?」


急な質問にエディは首を傾げている。


「彼女の部屋に入った泥棒と同じ匂い…、あの時もこの香水が微かに匂ったんだ…それから、もう一つ大事な事を思い出した。」


朗は微かに嗅いだ甘い匂いを昨日よりずっと前に嗅いでいた。


「何?大事な事って?」


「殺されたニュースの韓国人は…あの時、携帯をくれた外国人だ、その時も微かに甘い香がしたんだ」


「朗、それって…」


エディは息をのんだ…あれだけ探していた物を目の前の青年が持っている…。


朗はニュースを見た時、何か思い出しそうで、出せなかったのはこの事だったのだ…。


「朗、君は殺された人と会ってるのか?」


「うん、彼女のお兄さんが熱を出してて、看病した帰りに声を掛けられて…その時、携帯を渡されたんだ。何か言われたけど聞き取れなくて、ただ…拾ってくれただけだと勘違いして受け取った」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ