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ロジック  作者: なかじまこはな
64/135

事件の始まり7

◆◆◆◆


「朗、こぼしてるよ」


竜之介に注意され、朗は我に返った。


江口が帰り、ようやく夕飯にありつけた朗だが、テレビに釘付けになっていたのだ。


「あ、ごめん」


こぼしたご飯を慌てて拾う。


「全く、25にもなって、テレビに夢中でご飯こぼして、子供に注意されたらおしまいだぞ」


竜太朗が呆れている。


「フン、ご飯粒をほっぺに付けた大人に嫌味言われたくにいね」


朗はムッとして言い返す。


竜太朗も慌ててほっぺに手をやりご飯粒を取る。


「あはは~、それより何真剣に見てたんだよ。」


「すぐ笑って誤魔化すんだから、ニュースだよ。最近、佐世保での殺人多いなぁ~って思ってさ」


と朗はテレビ画面を指差す。


「多いわよね。この前、公園で殺人あったでしょ?容疑者はうちの病院の入院患者さんだったんだけど、警察病院に移されたわ」


凛が話に加わる。


「今度は韓国人みたいだよ。この前、入港した戦艦の乗組員みたい」


ニュース番組では殺された男性の顔写真が映し出されている。


その男性を見て、朗は何かを思い出しそうになるのだが、…すぐに忘れた。


「後片付けしますね。」


凛は食べた食器を重ねる。


「凛ちゃん、しなくていいよ、後で朗がするから」


と竜太朗。


「何で俺なんだよ!」


朗のツッコミは早い。


「うるさいな~、片付けくらいでガタガタ言うな!仕方ないだろ、ハニーが病院なんだらさ」


竜太朗も食べた食器を重ねている。


「そう言えば、どうして病院なんですか?どこか具合でも…」


凛は心配そうな顔をしている。


今日の夕飯は冴子が居ない為に凛が作った。


「赤ちゃんが産まれるんだって~僕ねお兄ちゃんになるんだぁ」


竜之介がご機嫌良くそう答えた。


凄く嬉しそうにしている。


「だからね、僕も手伝う!だってお兄ちゃんだもん」


竜之介は自分が食べた食器を重ね、台所へ運んで行く。


「おめでとうございます」


「ありがとう」


凛に祝福され、竜太朗は照れている。


「へぇ~、そっちもヤル事やってんだ~やっぱりアレ?看護ふ…」


プレイと続け前に竜太朗に口を塞がれる。


「朗、お前は店の掃除だ。こい!」


竜太朗は無理矢理に朗を連れて行く。


「かんご…ふ?」


残された凛は首を傾げる。




◆◆◆


『おまたせ。』


エディが席に戻ると華が泣いていた。


『崇!娘に何かしたのか?もし、何かしたのならいくら崇でも、』


エディは一気に頭に血が上ったかのように今にも崇を殴りつけそうな勢いだった。


『お父さん止めて!違うから』


華が間に入ると説明をした。



『出ようか…』


エディが先に会計を済ませに行く。


「ごめんね」


崇はまだ謝っている。


「私こそ、泣いたりしてごめんなさい。…お父さんも事情を聞かずに崇君を殴りそうな勢いだったし」


華は二人分、申し訳なさそうにしている。


「羨ましいな、…あんな風に子供を心配してくれる父親が居るってさ…」


もし、父親が生きていたら…今、どんな親子関係を築けたのかな?


寂しさと虚しさが込み上げてくる。


3人で駐車場に行く。


先に降りるからと華は崇に助手席を薦め、自分は後部席に乗り込む。


『お父さんごめんね、アメリカ行く理由が失恋したからなんて』


車が走り出すと華が謝った。


『何で謝るんだ?逃げ込む場所はあった方がいいだろ?』


少し振り返り、華に笑い掛ける。


『あの…俺、本当にすみませんでした。彼女を泣かせてしまって』


崇はエディの方へ体勢を向け、頭を下げた。


『謝らないで、勝手に泣いたアタシが悪いし、それに謝るのは理由も聞かずに崇君を怒鳴ったお父さんよ!』


『うっ、すまん。崇、本当にすまない』


エディは罰が悪そうにしている。


『いえ、泣く原因を作ったのは自分だし、俺が悪いんです』


崇はすぐにそう否定した。


『違うよ、崇君は悪くない!』


興奮したように華が後部席から顔を出す。


『待て、これじゃぁ…埒があかない。3人同時に謝ろう』


エディの提案に2人は笑い出す。


『何も笑う事ないだろ』


笑われたエディはちょっと拗ねている。


『そうですね、埒があかない…』


崇も賛成をし、3人同時に謝り合って、そして3人とも笑い出した。


『でもいいなぁ…こんな雰囲気、家族でどこか行くなんてあったのかどうかも忘れてる、…今日は本当にありがとうございました。食事も美味しかったし、楽しかったです。』


崇は深々と頭を下げた。





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