事件の始まり5
『飲んでないって!可愛いとか言うから…』
エディにからかわれながらも可愛いと言う言葉は余程嬉しかったのか、いつもの文句は無かった。
『なんか…、今日の華は違うなぁ。崇がカッコイイからか?お父さんだってカッコイイぞ!』
『バカじゃないの?』
崇と競うエディの足をテーブルの下で蹴る。
『華、行儀悪いぞ』
顔をしかめ、足を摩る。
『どうかしたんですか?』
『さぁ?』
キョトンとする崇に華はしれっと惚ける。
◆◆◆
料理も次々に運ばれ、3人は食事を始める。
『こうして見てると、二人は美男美女でお似合いだぞ』
エディはニコニコしながら二人を見ている。
『はぁ?また訳の分からない事を言い出す。』
『お父さんは崇なら華と付き合ってもいいと思うぞ』
ちょうど水を飲んでいた華はその言葉で危うく口に含んだ水を吹き出しそうになった。
『ば、バカじゃないの?変な事言うから吹き出しそうになったでしょ!それに彼には恋人居ると思うし』
文句を言いながらも、つい、崇を意識してしまったのか、華の顔は赤い。
『恋人は居ないよ。でも、君は居るでしょ?映画館で一緒に居た。』
『彼はただの友達で、映画を一緒に見ただけです!』
何故か華は必死に否定している、別にエディに何か言われたくないからとかじゃなく…崇に対しての否定だった。
『華、映画に行った男とは本当に何もないんだな?』
エディが真顔で聞いてくる。
『あー、もう!違うってば!』
華はウルサイと言わんばかりにエディを睨む。
『そうか、それならいいんだ』
安心したような顔のエディに華はちょっと不服だった。
『年頃の娘に恋人が居ない事を心配してよね!』
『変なムシがつくよりいい』
父親としたらそうだろう…。でも、娘の華にとってはうっとしい…の一言だろう。
『でも、本当に恋人居ないの?こんなに可愛いのに…』
崇はマジマジと華を見ている。
華は目も合わせられず、どういう顔をしていればいいか分からず、俯く。
この空気…どうしよう…。
華が戸惑っているその瞬間にエディの携帯のバイブが唸り始めて、 携帯を確認し、『二人で食べていなさい』と席を離れた。




