事件の始まり2
誰かの影が見えた、その足元にもう一人倒れている。それが朗だと気付くのに時間は掛からなかった。
「動くな警察だ!」
と言うよりも先にその誰かは江口にいち早く気付き、窓の方へ走り出し、そのまま窓から飛び降りた。
窓は事前に開いていたようで、多分…こんな事態を予想してたのだろう。
江口は倒れている朗の首筋を触り脈を確かめる。
殴られた何かで気を失なわされているだけのようで脈はしっかりしていた。
「凛ちゃん、朗君を見てて!」
玄関に居る凛にそう叫ぶと江口も迷わず窓の下へと飛び降りた。
「えっ?朗?」
凛は慌てて部屋に入り、荒らされた部屋に驚くが床に倒れる朗が視界に入り、更に驚く。
「朗、朗しっかりして」
凛は朗の脈と取り、呼吸を確かめた。
◆◆◆
『やっぱり部屋には無かったか…』
エディは病院の外に出て携帯の相手にそう返した。
『部屋の主が帰ってきたので』
電話の相手が返す。
『妹か?』
『いえ、男だったので兄の方だと…』
『まさか、兄は私と一緒だ。顔を見られたか?』
『咄嗟にスタンガンで気絶させましたから、でも日本の警察が来たので…もちろん逃げ切りましたが』
『警察?…わかった。とりあえず本人にそれとなく聞いてみるよ』
とエディは電話を切った。
『警察かぁ…ヤバイなぁ』
エディは呟くと病院の中に戻った。
◆◆◆
朗が目を開けるとボンヤリした風景に天井が映る。
「朗、良かった…目が覚めた?」
凛の声がして、声がする方へ顔を向ける。
竜之介と凛が居た。
「あれ?ここどこ?」
まだ意識がハッキリしない朗はキョロキョロしている。
「僕んちだよ、朗が目を覚ましたってお父さんと刑事のおじちゃんに言ってくるね」
と竜之介は急いで下へ降りて行った。
竜之介の言う通り、よく見ると竜太朗の家だ。
「刑事?」
「江口さんの事よ、知ってるでしょ?」
江口…朗は考え込むと、雑炊を一緒に食べた人だと思い出した。
「崇の…お見舞いに来た人」
ボンヤリとした記憶がだんだんとハッキリしてくる。
フィに凛の荒らされた部屋と奥くに居た誰かを思い出し起き上がった。
「痛、」
首筋に痛みが走った、手で押さえると手当したあとがあった。
「軽い火傷よ、多分スタンガンみたいよ、赤い2つの痕あったから」
スタンガン?
そうか…首筋の激痛はスタンガン…あっ、なんかムカムカして来た。
「チクショー、アイツなんだったわけ?泥棒?」
急に襲われた事に朗は何だかムカムカして来た。
「朗、落ち着いて!」
「あっ、凛は大丈夫?何もされなかった?…それより、俺…なんでここに?」
頭もだいぶハッキリして来たし、ハッキリした分疑問も浮かぶ。
凛は大丈夫だったのか?
泥棒だったのか?
どうやって竜太朗の家に来たのか?
色々と頭に浮かんだ。
「今から説明するね」
凛が彼女のわかる範囲内で説明をしてくれた。
江口と帰り道に会って、鍋に誘った。先に居ると思った朗が居なくて、ドアの鍵が開いてた事…江口が先に入り、怪しい男と荒らされた部屋…倒れている朗を見つけて驚いた事。江口が居てくれたおかげで、凛に怪我も無く朗をここまで運んでくれたのが江口だという事も凛が教えてくれた。
荒らされた部屋も江口立ち合いの元調べた結果、取られた物は無かった。
そして犯人は取り逃がした事も聞いた。
「江口さんが居てくれたから助かったの。朗も車で運んでくれたし、朗が犯人の顔見てるかも知れないから危ないって…私、他に知ってる人が居ないから竜太朗さんに甘えちゃった…それに今夜、お兄ちゃんも遅いし怖いから泊めて貰う事にしたの。朗も心配だし」
「うん。それがいいよ…崇には言ったの?」
「電源切ってるみたいで繋がらないの、またかけてみるね」
凛がそう言った時に竜太朗と江口が部屋に来た。
「朗、大丈夫か?」
竜太朗が心配そうに側に来た。
「首が痛い」
そう言いながら、首筋を押さえる。
「手当したのは凛ちゃんだぞ、いいなぁ~、白衣の天使が彼女なんてさ、凛ちゃん今度、白衣着て来てよ」
と凛を見る。
「あ~、もう!エロオヤジ!いやらしい目で見るな!」
朗は手で竜太朗の視界を遮る。
「いいじゃんかよ、減るもんじゃないし」
と竜太朗は朗の手を掴み顔から退かす。
「減るからダメ!」
と二人のくだらない争いを止めるように江口が咳ばらいをし、自分の存在をアピールする。
「江口さん、どうも」
朗は慌てて挨拶をする。
「この前は雑炊ご馳走様でした」
と江口も頭を下げる。




