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ロジック  作者: なかじまこはな
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涙のあと5

崇は目を覚ますと何となくシーツが重く感じ、少し体を起こしてみると、朗が顔を伏せて熟睡していた。


重いのはコイツのせいか…とシーツを引っ張るが朗は起きる気配がない。


近くにはすっかり温くなった氷枕とタオルがあった。


玄関からの記憶が途切れているので、あれから朗がずっと居た事になる。


時計を見ると明け方だった。


◆◆◆



「朗」


名前を呼ばれ目を開けると凛が居た。


「おはよう」


そう言いながら朗は体を起こすが体のアチコチが痛い。


「床で寝ているからだよ」


凛は笑う。


起き上がった時に毛布が落ちる。


「凛?」


自分に毛布をかけたのは凛かと聞いてみるが、


「お兄ちゃんよ」


そう言われ、布団を見ると寝ているはずの崇が居ない。


「崇は?」


「仕事に行ったわよ。」


「嘘、熱は?」


「下がったみたいよ。朗ありがとう」


「下がったんだ。良かった」


と朗は毛布をたたむ。


「朝ご飯食べるでしょ?」


凛は二人分の食事を用意していた。





◆◆◆




崇が仕事場へ行くと待ち構えたようにウォンの上司が逢いに来た。


上司の話を聞いて崇は息をのむ事になる。ウォンが行方不明だと言うのだ。


月曜日から全くウォンと連絡が取れなくなり、火曜日に無断欠勤をし、これまで一度も無断欠勤をした事がない彼を心配して同僚が部屋を尋ねたところ、部屋が荒らされていた。


『崇は月曜日に別れたっきりなんだね』


上司に聞かれ、崇は頷く。


警察も動いているらしく、崇に話を聞きたいと尋ねて来た。


『話出来るかな?』


警官が崇に話かけると


『大丈夫です』


と崇は力なく頷く。


『大丈夫じゃないだろ!』


崇の前に誰かが立った。


顔を上げるとエディが居た。


『どうして…』


何故だろう…エディの姿を見たとたんにこんなにも安心するのは


『君が仕事に来ていると聞いてね、説教しに来た!2、3日は休めと言ったのに…全く』


エディは怒ると言うより、心配している。


『彼はまだ熱があるんだ、どうしても話をしたいなら私も一緒に』


と警官に申し出てくれた。


崇は正直、心強かった。


ウォンには変わった様子なんて無かった…


あの日も…何か約束があるとか言っていた。


どうしてもっと詳しく聞かなかったのだろう?


自分が寝込んでいる間にウォンが連絡してきたかも知れない。


…そう考えたら自分の責任のように感じて、いてもたってもいられなくなる。


『崇、気分悪いんだろ?』


エディは警官に崇を休ませて欲しいと頼み、医務室に連れて行かれた。


『すみません』


ベッドに横になり崇は謝る。


『また、君はすぐに謝るんだから、少し眠ればだいぶ違うよ』


エディは崇にシーツをかけた。


警官には体調が戻るまで聴取は待って欲しいと、お願いをして帰ってもらった。


『ウォン、どこに行ったのかな?』


不安そうに崇は天井を見上げる。


『変わった様子無かったんだろ?』


そうです…と言いかけたが、ウォンが争っていた事を思い出した。


それに公園の殺人は?


ウォンは約束があると言っていた。


崇にはそれが全て繋がっているように思えて来た。


『そうか、彼のお兄さんか…、預かり物は持って無かったんだろ?』


崇は疑問に思った事を全てエディに話をした。


『はい、…あの、ちょっと前に警察がウロウロしてましたよね?あれは?』


『君も知ってるだろ?公園の殺人の容疑者の一人が韓国の戦艦の乗組員かも知れないって…』


『はい…』


『乗組員が一人消えてるんだよ、だから警察がウロウロしてたんだ。それに私が見舞いに行った男性も容疑者だし』


あの幼い兄妹の姿が頭に過ぎる。


父親が容疑者で…あの子達はこれからどう生きて行くんだろうか?


『あの子達…どうしてるんだろう?』


崇が言っているのは容疑者の子供達だとエディにも分かる。


『子供がいつも犠牲になる辛いね。…崇、こんな時になんだけどカウンセリング受ける気ないか?』


エディの突然の言葉に崇は動揺した。


『カーターさんから何か聞いたんですか?』


起き上がると激しい口調で言った。


『聞かなくても分かるよ。崇、落ち着いて』


激しく動揺している崇を気遣うように宥める。


『お断りします!俺、お節介嫌いなんで!いくらエディでもこれ以上俺の心に踏み込まないで下さい』


『怖い…気持ちはわかるよ、カウンセリング受けるのが怖いんだろ?』


エディは崇の肩に手を置く。


『違う、怖くなんかない』


崇はエディの手を払い退ける。


怖くなんかない…


胸が急に苦しくなった。






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