秘密3
何故、こんなにも華と付き合っている事になっているのか朗には不思議でならなかった。
「付き合ってないのか?あの子はいいと思うぞ、家事も出来るし、器量良しで、グータラなお前には華ちゃんみたいなシッカリした娘がいいと思うんだがね」
蓮は残念そうだ。
「余計なお世話!凛だって可愛いし、シッカリしてる」
「そうか凛って言うのか」
蓮はニヤリと笑い、朗はしまった~という顔をした。
◆◆◆
「お兄ちゃんお帰り」
崇がドアを開けると凛が笑顔で出迎えてくれた。
「ただいま…、もう帰って来てたのか?まだゆっくりしてくるかと思ったのに」
靴を脱ぎながらに言う。
凛の顔を見れて嬉しいのに、まともに顔が見れない。
「うん、お兄ちゃんご飯どうするかな?って思って、それからウォン君から電話あったの、お兄ちゃんと連絡取れないからって」
凛にそう言われ、携帯の充電が切れていた事を思い出す。
「ウォン、何か言ってた?」
「連絡して欲しいって、あと…幸せにって言われたけど、どういう意味かな?」
凛は首を傾げている。
幸せには多分、彼氏との事を言ってるのだろう。ウォンらしいなって崇は笑ってしまった。
「何でもないよ」
と凛の頭を軽く撫でて奥の部屋に充電をしに行く。
凛は久しぶりに崇が笑った顔を見て嬉しくなった。
「お兄ちゃん、知ってた?明日から凄く寒くなるんだよ」
たわいもない会話さえ明るく言う事が出来た。
「そう?」
崇は嬉しそうな凛に気付かず充電しながらに普通に会話を返した。
◆◆◆
「なぁ?あと何回する気?」
朗は痛くなった肩を回しながらに言う。
ゲームはすでに3時間はやっている。
「あともう少し」
蓮は画面から目を離さずに答える。
「年なんだから、あんまり力入れるとポックリいっちゃうぞ」
「勝ち逃げは許さんと言ったはずだ」
蓮の目は血走っている。
「腹減ったしさ、勘弁してよ、それにもう遅いし」
「どうせ泊まって行くんだろ?部屋に帰っても食べる物ない事くらいお見通しだ」
蓮の言葉通りだし、諦めてゲームに付き合おうと覚悟を決めた時に、
「おじいちゃん、いい加減に朗を返してよ!僕と遊ぶんだから」
と怒った顔の竜之介が乱入して来た。
「竜之介~良い所に来た~」
と朗はコントローラーを投げ出し、竜之介の元へ行こうとするが、
「逃がさん」
蓮は朗の腕をガッシリと掴む。
「朗は僕の親友なんだよ、返してよ!ゲームならお父さんとすればいいじゃないか!」
竜之介も負けずに朗の腕を引っ張る。
「お前こそ、竜太朗と遊べばいいだろ!」
まるで子供みたいな言い分の蓮は竜之介と良い勝負だ。
二人で朗を取り合い、まるで綱引きのように引っ張り合う。
「ちょっと待って!綱引きじゃないんだからさ」
二人に綱引きされ、さすがの朗も逃げ出したい気分。
「こらこら、止めなさい!」
竜太朗が部屋へ現れ、助けてくれた。
「ほら、夕食だから仲良く二人で下へ行きなさい」
と蓮と竜之介を部屋から出した。
朗はようやく解放され、疲れたように座り込む。
「じじいの相手サンキューな、2人共朗が好きだからな」
竜太朗は座り込む朗の背中を叩いた。
「……」
朗は黙り込んだままに竜太朗をジッと見る。
「どうした?二日酔いまだ治ってないのか?薬効かなかった?」
竜太朗は心配そうに顔を覗き込む。
「…ごめん」
朗は俯きそう言った。
「何が?」
謝る理由は見当がついてるが敢えてわざと聞いた。
「その…色々と…」
口の中でモゴモゴと言うが言葉にはなっていない。
「言い合いした事か?それとも酔っ払ったお前を部屋まで運んだのにゲロ吐きかけた事か?」
「2つとも」
反省しているのか朗はシュン…となっている。
「まぁ…、俺も言い過ぎたしな。立て、飯食いに行くぞ」
と竜太朗は思いっきり背中を叩いた。
「イッテェ」
顔をしかめて朗は立ち上がる。
◆◆◆
月曜日の朝は天気予報が珍しく当たり、急な冷え込みだった。
「おはよう」
朗はロジックのドアを開ける。
「あら、朗おはよう」
マキコが微笑む。カウンターの中に居たバイト二人も挨拶をする。
「これお土産」
と朗はカウンターに紙袋を置く。
「あら何?」
マキコは袋の中を覗き込む。
「母ちゃんからマキコさんにって、漬物だよ」
「あら、嬉しい。おばさんの漬物美味しいのよね」
マキコは喜んで、袋からタッパーを出している。
朗はキョロキョロと店内を見るが華の姿が無かった。




