秘密2
崇は小さく頷いた。
『私の娘も美人だぞ、あっ、写真見るかい?名前は華って言うんだよ、アメリカ名はクリスティーナ』
崇が見たいとは言ってないのにエディは上着の内ポケットから写真を出して彼に見せた。
『本当に綺麗ですね。華って名前なら奥さんは日本人ですか?』
『元妻だよ。そう日本人とのハーフだよ。君の妹の名前は?』
『凛と言います』
『可愛い名前だね。いつか逢ってみたいよ。』
『昔はよく後を追い掛けて来て可愛かったんですが、最近、彼氏が出来たみたいで紹介されました』
崇は微笑む。
『私の娘は恋人居ないんだよ、こんなに綺麗な子がいるのに世の中の男は何をしてるんだ?崇なら似合うと思うんだけどなぁ、美男美女で…あーでも、アメリカに連れて帰るつもりだから離ればなれは可哀相かな?』
エディはまだ出会っても居ない2人の心配をする。
崇はたまらず笑い出す。
『笑ったな、父親は常に娘の心配をしているものなんだよ』
『そうですね、エディを見てたら分かります。あっ、その角曲がった所でいいですよ』
崇は指をさす。
エディは言われた通りに角を曲がり車を停めた。
『薬を飲んで、ちゃんと眠るんだよ。それと病院は絶対に行く事!』
まるで保護者のようなエディに崇は頷き、返事をすると車を降りた。
『今日は本当にすみませんでした』
ドアを閉める前にもう一度、頭を下げた。
『もう、充分に謝ったよ』
エディは笑う。
『はい。じゃぁ、おやすみなさい』
そう言ってドアを閉めようとするが、
『あっ、一つ否定しておきますね。俺は自慢の息子なんかじゃないです』
そうつけ加え、ドアを閉めた。
◆◆◆
「ハァ~」
朗は何度目かのため息をつく。
「朗、どうしたの?」
手を繋いでいる竜之介が朗を見上げる。
横瀬から戻り、凛と別れて竜之介を家まで送って来たのだが…、竜太朗に逢うのが何だか気まずいのだ。
言い合いをしてしまったし、ゲロの後始末までさせた。
嫌みだけでは済まされない気がする。
竜之介の家は一階が店をしていて二階が竜之介親子の家、三階が祖父が住んでいた。
店の前で足が止まる…
竜太朗に逢うのが嫌なわけではなく店の前に座っている、毛がフサフサなデカイ生き物が視界に入り、足が止まったのだ。
「お前んちって犬飼ってたっけ?」
店の前には大きなゴールデンレトリバーが座っていた。
「えっ?あの犬?お客さんの犬だよ。クッキーって言うんだよ。凄くお利口なんだよ」
クッキーは竜之介に気付いたみたいで尻尾を振る。
竜之介が前に出るとクッキーは立ち上がりこちらを向く。
朗は後ずさりをする。
「クッキーおいで」
と竜之介が呼ぶものだからクッキーはゆっくりとこちらへ向かって来る。
「バカ、呼ぶな!クッキーだがビスケットだが知らないけど、ちゃんと繋いでおけよバカ」
朗は竜之介の後ろに行く。
「クッキーだよ、もしかして朗…犬怖いとか?」
竜之介はニヤリと笑った。
「まさか~」
そう言いながらも朗はクッキーから目を反らしている。
「触ってみたらいいのに、大人しいんだよ」
そう言ってる間にクッキーが側に来て居た。
「待て、竜之介おすわり!」
パニックになった朗はクッキーと竜之介の名前の区別がついてないようだ。
「竜之介、犬押さえてろ!犬が怖いってお前はオバケのキューちゃんか!」
と竜太朗が店から出て来て、朗を無理矢理店に連れて行った。
三階へ押しやられ、部屋のドアを開けた。
「朗、遅いぞ!」
竜之介の祖父の蓮太朗が待ち構えていた。
「蓮さん、仕事は?」
「ワシを舐めるな~あのくらいの量、ヘでもないわ!それより、座れ」
と蓮は手招きをしてテレビの前に朗を座らせてコントローラーを渡す。
竜之介から借りたテレビゲームがすでに用意されていた。
「もう、まだやる気かよ、じいさんなんだから将棋とかやれよ!」
朗は最近ゲームに付き合わせられ続け、正直飽きていた。
「勝ち逃げは許さん」
「竜太朗さんとやればいいじゃん!」
「アイツは弱すぎていかん」
「竜之介は?」
「強すぎていかん…」
そう言いながら蓮はゲームのスタートを押す。
蓮は見かけ、頑固な職人堅気に見え、怖いイメージがあるが、孫に優しく、朗にも何かと構ってくれる優しいおじいさんだ
「そう言えば彼女出来たらしいな」
ゲームをしながらがに聞かれる。
「また、竜太朗さん?」
朗は何でこんなに口が軽々しい奴しか周りに居ないのかとため息が出る。
「竜之介だよ、可愛いんだって?華ちゃんはどうした?フラれたのか?」
「なんだよそれ!華とは付き合ってないし、しかも俺がフラれてるし」
もうどれくらい否定しているのか分からなくなってきた。




