センチメンタル5
ウォンはその場に寝転がり、『ちくしょー、もうチュウとかしたのかな?その先も…あー、むかつく』と叫ぶ。
『バーカ』
崇は笑った。
◆◆◆◆
朗が子供の頃、クラスでアニメのキャラクターが流行っていて、そのグッズを友達のほとんどが持っていて、それが凄く羨ましかった。
自分も母親に買って欲しいと言えれば良かったのだが、母親しか居ない家計の苦しさは小さい朗にも分かっている。
誕生日に欲しい物は無いかと母親に聞かれ、思い切って言ってみた事がある。
「何が欲しいって?」
チエコは聞き返す。
「だから…、今言ったヤツ、友達みんな持ってるもん、僕だけだよクラスで持ってないの」
幼い朗は怖ず怖ずと口にする。
「え~、もっと安いのにしてよ。お母さんがお金ないの知ってるでしょ?」
遠慮がちに言った言葉はアッサリと却下された。
「皆が持ってる物、アンタも持ってなきゃいけないの?」
「だって、仲間外れになるもん」
「だったら一人で遊べばいいでしょ?同じ物を持って無いと遊んでくれない友達とは遊ばなきゃいいのよ」
チエコは冷たく言い放つと夕飯の支度を始める。
「お母さん、仕事行くけど、ご飯食べてちゃんと寝なさいよ」
わがままを聞いて貰えず涙目の朗に気付きもしない。
チエコは街で水商売をしていた。
夕方になると朗を残し、街へと仕事に行く。
まだ若く子持ちの彼女がお金を稼ぐ方法はそしかなかった。
派手な化粧に派手な服…幼い朗はそれが嫌だった。
「…のくせに」小さい声で朗が呟く。
「なに?お母さん忙しいのよ、もうワガママは聞かないわよ」
相変わらず振り向きもしない母親に朗は我慢出来ず、
「自分の洋服はいっぱい買うくせに」と思わず叫んだ。
チエコはようやく振り向く。
「いつもお金ないって言ってる癖に自分の洋服はいっぱい買ってるじゃないか、ケンちゃんのお母さんが言ってたもん、お母さんは子供にお金をかけないって!そいで自分にばっかりお金をかけて、男の人と遊んでるって!僕欲しい物いっぱいあるけど我慢してるもん、お母さんがいつもお金ないって言うから…」
と最後まで言い終わらないうちにチエコに頬をぶたれた。
「あ、そう!私よりケンちゃんのお母さんが言う方が正しいんだ…そんな事いう子はお母さん知らないから」
そう怒鳴られ、朗はぶたれた痛さと本当は言いたくない言葉を口にしてしまい、心が痛んだ。




