星に願いを6
「でも、こんな雰囲気久しぶりです。家族で食事するの楽しいですね」
凛は嬉しそうに言う。
「お嬢ちゃんは一人暮らし?」
と母ちゃん。
「凛で良いです。私は兄と住んでます」
「両親は寂しかろうね、ちゃんと顔見せに帰りよるね?」
「いえ…、両親はもう居ないんです。小学生の時に母が…、その後に父も亡くなったから…」
凛は寂しそうな表情をする。
「そうね…。知らん事とは言え、辛い事聞いたね」
母ちゃんの声は優しい。
「兄が居ますから辛くはないです。」
「偉かね…、凛ちゃんもお兄さんも…よう頑張って生きて来たね、偉かよ」
母ちゃんはそう言って、凛の頭を撫でた。
その手は優しく…温かい。
「偉く…ないで…」
最後まで言い切れない内に涙が零れた。
母ちゃんの言葉は凛の寂しい部分にスッポリと入ってしまい、泣くなんて思っていなかった凛は自分でも驚いたように、
「ごめんなさい。泣くなんて迷惑ですね」
と慌てて笑おうとする。
「何で我慢する必要あるとね?涙が出るって事は何かを我慢しとるけんよ、我慢せんで良かとよ、誰も泣いてる人ばバカにしたり迷惑がったりするもんね!ちゃんと泣きなさい」
母ちゃんの優しい言葉に凛は、今まで我慢してきた分の涙が溢れてくるのを感じた。
朗が凛の手をギュッと握ってくれた…、その手も温かく優しい。
余計に涙が溢れてくる。
「凛、星を見に行こう!」
朗は凛の手を握ったまま立ち上がり、強引に外へ連れ出した。
外は夜の闇に包まれていたが月の優しい光が二人を照らしている。
二人で空を見上げた。
冬の星座が見える。
凛は手で涙を拭いている。
「母ちゃんの言う通りだ、我慢しないでちゃんと泣け!我慢するな!」
朗は凛をギュッと抱きしめた。
彼のいきなりな行動に驚くが…嫌ではなかった。
「ごめんね。」
そう言うと凛は朗の胸に顔を埋めると泣き出す。
ずっと、ずっと我慢してきた…崇が自分のせいで笑わなくなったかも知れない…
両親が居ない事で辛い事にも合った。
忘れてしまおうと思い隠して来た感情が今…全て溢れて来た。
体中の水分が一気に出るよな…そんな感覚に襲われながら凛は泣き続ける。
そんな凛を朗は黙って抱きしめてくれた…
それが凄く嬉しかった。
朗が突然唄いだし、凛は少し笑ってしまった。
「今、笑ったな」
凛を抱きしめたままに朗は拗ねたように言う。
「音、外れてたんだもん」
「悪かったな、音楽2だったんだよ!」
朗は更にむくれる。
「ありがとう。」
凛は顔を上げ、朗を見上げた。
「何が?」
「連れ出してくれた事。皆の前で泣き出したから…どうしていいか自分でも分からなくって…、それに抱っこしてくれたし」
「バカ!母ちゃんが迷惑じゃないって言ってたろ?ただ、外の方が声に出して泣けるから…」
凛は泣く声を我慢していた。涙をただ…零すだけ。
それがどんなに辛いか…朗にも分かるから。
泣き止んだ凛から朗が離れようとする。
「まだ…抱っこしてて」
今度は凛の方から朗に抱き着いた。
「母ちゃんって朗も呼んでるんだね」
もちろんそれは竜太朗の母親の事だ。
「うん。そう呼べって…強制的に」
「いいなぁ…私も呼びたいな」
「いいんじゃない?喜ぶよ」
「ねぇ…朗。また、泣いたら抱っこしてくれる?」
凛は微笑む。
「えっ?それは構わないけど…」
「それと…、さっきの下手くそな歌も」
凛はかわかうように言う。
「お前ね~」
朗が怒り出すと凛は微笑み
「下手くそって嘘よ。優しい歌だった」
そう言って朗の頬に軽くキスをした。
朗は一瞬、キョトンとなり…そして照れてしまったが、お返しのように凛のおでこに軽くキスをした。
その光景を竜太朗が影から見ていた。
「ありゃぁ…絶対にあれは凛ちゃんに惚れてるな…」
竜太朗は独り言を呟く。
華ちゃん…泣くかな?
ふと、華の顔も浮かんだ。




