星に願いを5
「ありがとう。ご馳走になります。竜之介君、お姉ちゃんと一緒に温泉に入ろうね」
と凛は竜之介に笑いかける。
「いいな~、竜之介」
朗と竜太朗の声が揃う。もちろん、羨ましいのは一緒にお風呂に入れる事。
「えっ?」
凛はキョトンとなり二人に視線を向けた。
二人は笑って誤魔化す。
「けど、竜太朗さんってカステラ屋さんでしたよね?民宿もしてるんですか?」
「民宿してるのは両親と兄だよ。俺はカステラ屋の婿養子なんだ…だから、肩身が狭くってね」
と竜太朗はわざとらしく泣き真似をする。
「肩身狭くないだろ!蓮さん優しいし、頻繁に仕事サボっても誰も文句言わないのに」
と朗が突っ込みをいれる。蓮は竜之介の祖父だ。
本名は連太朗。
「仕方ないだろ!俺はカステラ作れないし、経理担当だも~ん。じぃさんがまだ現役だし、じぃさんとハニーが竜之介と一緒に居てやれって言うんだから」
と竜太朗は開き直る。
「だから頻繁に竜太朗さんを見かけるんですね」
凛が妙に納得している。
しばらく歩くと、竜太朗の実家の民宿に着いた。海の側なので波の音が心地よく聞こえてくる。
玄関に入ると竜太朗の両親と兄が温かく迎えてくれた。
竜之介は久しぶりに会う祖父母に甘えるように抱き着いている。
竜太朗が美味いと自慢した料理も出されご馳走になった。
竜太朗の父親は彼をそのまま年を取らせたようにそっくりで、母親も恰幅が良い肝っ玉母ちゃんだ。
竜太朗の兄もよく似ていて、凛や朗に優しく接してくれた。
おかげで食事も緊張せずに済ませる事が出来た。
特に朗は幼い頃からこの民宿に出入りしていたので、まるで実家に居るようにリラックスしている。
「じぃちゃんの墓参りには行ったとか?」
母ちゃんが朗に聞く。
「明日行くよ」
「それにしても彼女は美人たい、朗もよか男けんよう似合とるよ、ばってん母ちゃんはてっきり、マキコちゃんとこの華ちゃんと付き合とると思うとったよ」
「華ちゃん?」
母ちゃんの言葉に凛は朗を見た。
「母ちゃん、他の女の話ばしたらダメばい。変な誤解ば受けてフラれたら朗の可哀相やろが!」
と竜太朗の兄が注意をする。
「誤解なんてしませんよ」
凛は笑いながら答える。
凛との関係を説明するのが面倒で二人は恋人同士と言う事にしていた。




