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ロジック  作者: なかじまこはな
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星に願いを3

「凛姉ちゃんは小さい船初めて?この船、凄く揺れておもしろいよ。遊園地のジェットコースターみたい」


と竜之介がはしゃぐ。


その可愛さに凛は笑顔になり、「大丈夫。私もジェットコースター大好きだから」と言う。



船が走り出すとジェットコースター並に揺れた。

船が大きく揺れる度に朗は凛を支える。


その2人の姿を竜太朗は見ながら、華がこの場に居ない事にホッとしていた。


「あの、夜釣りって初めてなんですけど、夜通し釣るんですか?」


凛に話かけられた竜太朗はボンヤリとしていた。


昔を思い出していたから。


竜之介につつかれ我に返る。


「あっ、ごめん。考え事してた…なんか、高校の頃を思い出してさ、行き帰りに船使ってたし」


「高校へは船で通ってたんですか?」


「そうだよ。佐世保の高校に通ってたから、横瀬には中学までしかないんだよ。だから皆、寮に入ったりして…朗も高校の頃は船だったな」


「そうなの?」


竜太朗の言葉に凛は確認するように朗を見る。


「うん。おかけで部活には入れ無かった。船の時間が無いから」


「そうだな、俺も部活はやらなかったけど。毎日、彼女と一緒だったから、デートみたいで楽しかったよ」


「彼女ってお母さん?」


竜之介が興味津々で聞いてくる。


「違うよ。竜之介のお母さんとは大学で知り合ったんだ」


「お母さんより美人?」


竜之介の興味はまだ薄れないようだ。


「ハニーの方が美人だな。でも、彼女も美人だったぞ!町1番の美少女だったんだ」


竜太朗は自慢げに話す。


「それって…まさか、マキコさん?」


朗が嫌そうに聞く。


「まさかぁ!マキコちゃんじゃないよ」


とチエコの名前を出そうとして慌てて口を結ぶ。

「どうしたの?」


急に話を止めた竜太朗を不思議そうに朗は見る。

「いや、ホラ、マキコちゃんは俺なんか相手しないし…あ、戦艦見えるぞ」


海の上が急に明るくなり、真っ黒い巨大な建物のような戦艦が姿を現した。


暗い海が戦艦が放つ明かりで眩しいくらいだ。


「すごい…」


凛は間近で見たのが初めてのようで窓に張り付くように戦艦を見ている。

朗も竜之介も戦艦に夢中で、さっきの会話は忘れ去られたようだ。


竜太朗はホッとした。


別に隠す事はない。


ないけれど…でも。


竜太朗は黙って朗を見つめた。




◆◆◆◆


「あのさ、華ちゃん」


晴彦が決心したように切り出す。


「なに?」


「ほら、最近流行ってる映画あるじゃん…」


「うん?」


彼女が返事を返しても晴彦はモゴモゴと口ごもる。


なんで…こうも、肝心な時にズバッと言えないのかな?晴彦は自分が情けなくなる。


「あのさ…えっと。」


晴彦は映画に一緒に行って下さいの一言が言えずに自分にイライラした。

言葉で伝えられないので、上着からチケットを取り出し、カウンターに置く。


「あっ、この映画~凄く見たいんだぁ」


華はすぐに食いついた。


よし!晴彦は握りこぶしを作る。


「俺も見ましたよ、その映画!凄く面白かったです」


と山本も食いつく。


「俺は今週見に行く予定」


と要


「いいなぁ~。私も見たいな」


華のその台詞で晴彦は目がキラリとなった。


「マジ?華ちゃん見たいの?」


「うん。いいなぁ晴彦君~、チケット買ったの?」


「…うん。あの…だから…」


一緒に行こう!


そう付け加えるだけで良いのに…口の中でモゴモゴと言うだけで、華には伝わってはいない。


「彼女と行くんでしょ?楽しそうでいいなぁ」


「はっ?」


華の突然の言葉に晴彦は目が点になる。


「何で彼女?」


もちろん晴彦に彼女なんて居ない。


「だって。この前、朗が金出さないでも良い彼女が何とか言ってたでしょ?晴彦君、お金がかかる彼女はダメだよ!そんな女はね、他にも男がいたりするんだから」


と華の説教が始まった。




◆◆◆


崇は通訳の仕事を終え、夕闇に溶け込み、もうすぐ見えなくなってしまう海へ視線を向けながらボンヤリしていた。


凛が自分が知らない男を彼氏だと紹介してから一週間経った。


普通にルックスも良く、仕事は何をしているか聞いてはいないがキチンとした仕事だと凛に後から聞いた。


別に凛が誰と付き合おうが彼女の勝手だし、恋人が居てもおかしくない年齢でもある。



もちろん崇にもそれは分かっていた。


自分も何人かの女性と付き合ったし、その事で凛が文句を言ってきた事はない。


ただ…あの日からずっといらついている。


いつも凛に冷たく接して来て、その事で彼女を傷つけているのも嫌と言うほど感じている。


崇が帰らなくても食事を作って待って居てくれるし、どこに居ても一日に2回程は連絡をくれた。


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