星に願いを
「ありがとう」
朗は照れ隠しにそう言った。
「土曜日晴れるといいね」
凛がそう言ったので二人で空を見上げる。
星が沢山、煌めいて綺麗だ。
「星に願いを込めちゃう?」
「大丈夫だよ。俺、晴れ男だから」
凛の言葉にそう言った朗はふと、人影に気付く。
「どうしたの?」
凛も朗が見ている方向へ視線を向ける。
「お兄ちゃん…」
崇が少し離れた所に立っていた。朗の言葉が効いたのだろう。
「良かったね」
朗は小声でそう言うと凛に手を振り元来た道を歩きだす。
「おやすみなさい。また、土曜日に」
そう言った凛の顔は本当に嬉しそうだった。
朗が自分のアパート近くに差し掛かった時に誰かが、ウロウロしている。
その誰かは朗に気付くと彼の元へ走ってきた。
「朗さん」
走って来たのは山本。
「あれ?どうしたの?」
「あの、これ。差し入れです!朗さん、頑張って下さい!俺、いつも朗さんの味方だから」
と言った彼の目は涙目で、手にしている袋を朗に押し付ける。
「あ、ありがとう。」
訳が分からなかったが、とりあえず袋は受け取った。
「それじゃ、おやすみなさい。」
山本はお辞儀をすると足早に帰って行った。
「何なんだよ…」
朗は首を傾げ、山本の後ろ姿を見送った瞬間、肩を叩かれ驚いて振り返る。
「華」
今度は華が立っていた。
「遅い!」
寒いせいか華は何だか怒っている。
「何だよ、また説教しに来たのかよ」
「違うわよ、洗濯物出して!」
と華は手を出す。
「はっ?」
朗はキョトンとする。
「洗濯物たまってるんでしょ!あ、でも誤解しないでよね、ただ、ジャージとかでウチに来られたら変なイメージ立つからだからね」
何を誤解するなと言ってるのか分からないが、華は必死で言い訳をしている。
「そりゃぁ、ありがとう。それよりお前、雨降ったらどーすんだよ!土曜日、夜釣りなんだぞ」
「ちょっと失礼よ、バカ朗!」
華はムキになって怒り出す。
「やっぱり華は怒ってなきゃ…」
「何それ、失礼しちゃう!」
「可愛いって意味だよ」
そう言って朗は自分のアパートの方向へ歩き出す。
そう、月明かりで凛を綺麗だと思ったように、膨れっ面で怒る華を子供みたいで可愛いと思った。