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ロジック  作者: なかじまこはな
133/135

君と手を繋ぐ未来8

「もうキツイよこれ!」


竜太朗にネクタイを巻かれながら朗は文句を言っている。


「ウルサイ、ネクタイはこんなもんなんだよ、大体、スーツを着慣れていないお前が悪い」


とネクタイを締め終えた竜太朗も文句を言い返す。


「ウルサイなぁ、今の仕事はスーツ着なくていいからいいんだよ」


「あ、そ、…でも良かったな米軍で働けて」


「うん、オジサンのコネとウォンのおかげ」


朗は春から米軍で働いていた。


「弟子にならなくて良かったのか?」


「うーん、蓮さんが、お前の自由にしろって言うから」


とネクタイを緩めた。


「あんのクソジジイ、一人息子にはデレデレだからな…」


竜太朗はブツブツ文句を言っている。


「こら!何時まで用意してるんだ、結婚式に間に合わないぞ、華ちゃんも待ってるぞ」


と下から話題の息子にデレデレのクソジジイの叫び声がした。


「今行く」


そう返事して、竜太朗と急いで階段を下りる。


「けど、マキコちゃんにスーツ貰ってて良かったな、結婚式どころじゃなかったぞ」


「ま~ね、知ってた?始めっから結婚式で着せる為に買ったんだってさ、マキコさんが言ってた」


「マジかよ、あんにゃろ~」


玄関につくと華と竜之介が待っていた。


「遅い!」


仁王立ちした華が怒っている。


せっかくドレスアップして綺麗なのに勿体ない…竜太朗はそう言いたかった。


「先に行ってればいいじゃん」


朗は靴を探している。


「朗は女心分かってないね、朗のスーツ姿を早く見たかったんだよ、ねっ、華姉ちゃん」


と竜之介は天使の笑顔で華を見ている。


季節は冬から春に移っていた。


4月になり、竜之介も学年が上がり、いつしか友達も増えた。でも、相変わらず朗にベッタリ。


山本と要はすでに都会へと行ってしまった。


朗が住んでいた横瀬のアパートは、まだ、掃除をしに行っている。チエコと祖父の墓参りのついでに…。


最近、思うようになったのは。思った事は全て言葉にしようと言う事…伝えたい時に相手がいないのじゃ話にならない。


後から…聞くのは辛い。チエコを亡くしてそう思うようになった。


言葉にしなければ…いつか…未来で会えると思っていたのに、それはもう叶わない…。


いつか…未来で永遠に一緒に居ることになる人には、思いも全て言葉にしよう。


ごめんねも、ありがとうも…。


いつか、そんな人に出会るだろうか?


朗は目の前の華を優しい顔で見つめる。



「やーね、竜ちゃん何言ってんね、外で待つから早くしてね」


華は竜之介の言葉にうろたえ、外へ出ようとするが高いヒールのせいでバランスが崩れ、よろめいた。


「危ないな~華は」


朗は咄嗟に支える


「なれないヒールなんか履くからだろ?お前絶対に足痛くなるか転ぶぞ」


子供扱いにカチンときた華は振り向き、文句を言うが予想以上に顔と顔の距離が近く。


思わず赤面する。


スーツ姿の朗は凄く大人に見えて…いや、大人なんだけど。


かっこよかった。本気で見とれた。


「華、顔赤いけど熱ある?」


額を触る朗にびっくりして、「ないわよ、バカ朗!」と手を払いのけ、ヨロヨロと外へ出た。


「朗…からかうなよ」


竜太朗と蓮は同時に言った。


「そうだよ、華姉ちゃん一生懸命なのに…朗って、鈍感だよね」


竜之介が大人びた発言をした。


「鈍感って何だよ、仕方ないだろ、向こうがすぐに怒るんだから」


3人に注意され、朗はなんだかふてくされてしまった。


「華ちゃん可愛いじゃないか、あの娘なら嫁にいいぞ」


蓮はニヤリと笑う。


「は?また…はじまった…最近、孫の顔みたいってばっかり言ってさ…まぁ、華は黙ってりゃぁ可愛いんだけどな」


「元気なのがいいぞ、それから、コート持っていきなさい」


「コート?もう暖かいじゃん、要らないよ」


「…寒いぞ、これを持って行きなさい」


と蓮は春用のコートを出した。


「…また、買ったな…何でいつも俺のばっかり買うんだよ、老後の為に使えよ」


朗はもう呆れて何も言えない。


「今が老後だ」


蓮は言い出したら聞かない。


「貰っておけよ」


と竜太朗。


朗は仕方ない…


と諦め、素直に受け取る。


「華ちゃん待ってるだろ、先に行けよ」


竜太朗が華に気を使ってくれる。


確かに華は店の入口からこちらをチラチラ見ている。


「仕方ない、先に行ってるよ」


と歩き出すが、何かを思い出したのかのように立ち止まり、振り返ると。


「じゃぁ、会場でお父さん」


蓮を見て微笑んだ。





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