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ロジック  作者: なかじまこはな
132/135

君と手を繋ぐ未来7

蓮は覚悟を決めたように。


「蓮さんと呼ぶな!他に呼び方あるだろう!」


と言った。


「は?何言ってんの?」


朗は首を傾げている。


「他にあるだろう…その、呼び方…」


始めの迫力はどこへやら、声が小さくなる。


「蓮さんって呼ぶのダメなんだ…じゃぁ師匠」


「はっ?」


蓮は拍子ぬけした。


「だって、弟子にしてくれるって」


「あ…、でもダメだ!」


すぐに却下した。


「じゃぁご主人様?」


「お前はメイドか!」


「えっ?じゃ何?」


朗は真剣に悩む。


蓮の口は微かに、お・と・う・さ・んと動いているが朗は気付かない。


暫く考えていた朗もようやく分かったのか、


「もしかして…お父さんとか呼ばれたいわけ?」


とニヤニヤしながら聞いた。


そのニヤニヤした顔が見透かされた気分になり。


蓮は、「別にそんな事思ってない」とつい、意地を張ってしまった。


「なんだ…じゃぁ、一生呼ばない」


と朗は横を向く。


「嘘!?」


蓮は慌てて朗の方を見た。


「何だ、やっぱり呼ばれたいんじゃん」


と朗は笑った。


「呼んでやろうか?」


「べ、別に無理しなくていい」


と照れ臭いのか横を向く。


でも、それでも期待するようにドキドキとしながら待つ。


待つ…待つ…5分経過。溜めすぎだろ?と朗を見ると。朗は壁の方に寄り掛かり熟睡していた。


「な…なんじゃそりゃ」


蓮はガッカリとした。


「誰だ?朗にブランデーケーキ食わせたのは」


と竜太朗がひょっこりと顔を出した。


「ブランデーケーキ?」


確かに冴子が作ったのはブランデーケーキだった。


「こいつさ、酒弱いんだ、ブランデーケーキでも酔える、これは朝まで起きないから部屋連れて行くぞ、ほらジイサンへたってないで」


竜太朗は軽々と朗を抱き上げた。


蓮はガックリとしている


「ジイサン、気長に待てよ、そのうち自然に呼んでくれるよ」


と竜太朗は二人の会話を盗み聞きしていたようだった。


気長に…蓮は待つ事にした。



◆◆◆◆



「あら、いらっしゃい朗」


ロジックのドアを開けるとマキコが笑顔で出迎えた。


「おはよう」


朗はいつもの席に座る。


「一緒に住んでみてどう?」


朗が蓮の住む3階へ引越ししてから2週間は経った。


「前とあんまり変わらないんだけど…蓮さんが何かと構ってくる、この前も竜太朗さんが俺の私服ダサいとか言うから、蓮さんが洋服沢山買って来てさ…一日中ファッションショーさせられた」


と朗がテーブルにグッタリと前のめりになる。


「嬉しいのよ、朗は一人息子だもの…良かったわね」


朗は顔を上げて笑った。


「まだ蓮さんと呼んでるの?お父さんとは呼んでないの?」


「うん…なんか照れ臭い…ずっと蓮さんだったし、急には…」


「そうね、いつか呼んであげればいいわ、それと史郎さんね町を出て行ったわ」


朗は黙ってマキコを見た。


「小さい町だから噂広がるでしょ?世間は冷たいもの…社長さんがね遠くの仕事を紹介してくれたみたいよ」


「そっか…」


後から、江口が教えてくれた。チエコが男と駆け落ちしたと噂を流したのは史郎だったと。仕事で愛知に出張した時に手紙をチエコの振りをして出した事も…事件がばれるのを恐れての行動だった。


鈴木のジイチャンはやっぱりボケていた。


史郎はこれからずっと罪の重さを背負って生きて行くのだろう…


去年の今頃はまだ凜にも出会っていなくて。まだ、自分が捨てられた子供だと思って愛なんて信じていなかった。


でも今は…家族も居る。


友達も…史郎には家族はいない。


友達もいない…寂しくないだろうか?


いつかは会えるだろうか?


手を繋いでいてくれる誰かは必ず居る。


朗にもちゃんと居る。


願わくば…史郎にも居て欲しい…。


チエコを亡くした年月は長かった。でも、その年月は無駄じゃなかった。


自分を許せる年月…幼いこどもから大人になれる年月。


「史郎さんにまた会えるかな?」


朗はマキコに笑いかける。


「そうね…またいつか会えるわ…未来で」


とマキコも微笑んだ。





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