君と手を繋ぐ未来2
「じゃぁ、産まれた俺を見てどう思った?」
「嬉しかった…産まないで欲しいと言わなくて良かったと心から思った」
蓮は愛してたと嬉しかったは即答した。
本当に愛してたのだろう。朗は黙って蓮を見つめるていたが、「帰ろう」と彼に背を向けた。
「待て朗!怒ってるのか?…怒るのは当然だよな…私は最低な人間だ…妻子あるのにチエコと付き合い、お前が一人で苦労しているのに手を差し延べなかった…だから許されるとは思わない…ただ」
「蓮さん!」
朗は蓮の言葉を遮るように彼の名前を呼ぶ。
「怒ってないよ!怒れるわけないだろ?母さんの愛した人だから…寂しい人生じゃなかったみたいだし…だから、もういい」
朗は背を向けたままだったが、その口調は穏やかで優しかった。
「朗…本当にすまない」
朗の優しい言葉に蓮は涙が零れる。許されないわけはないとずっと思っていた。
本当は産まれた時からずっと側に置いておきたかった…でも、怖くて…きっと嫌われて…二度と朗に触れられないかも知れない恐怖に怯えて名乗れなかった。
けど…朗はアッサリと許してくれた。
母親に似てとても優しい自分の血を分けた、たった一人の息子。
「人の誕生日に泣くなよなぁ」
わざと聞こえるように言うと歩き出す。
◆◆◆
「なんじゃそりゃぁ」
朗に話を聞いた竜太朗は驚きの雄叫びを上げる。
「やるな~ジイサン」
少し羨ましそうにも見える。
「そしたら、冴子さんって…俺のお姉さんか…」
不思議な感覚だ。
「まぁ…そうなるな」
竜太朗も頷く。
「けど、言わないよ…ショック受けるだろうし…赤ちゃん居るから母体に何かあったら大変だもんね」
「まぁな…でも、いつかは言ってやれよ、知らないのはかわいそうだ」
朗は悩み込む。
「しかし、朗は竜之介の叔父さんになるわけだろ、そして俺は義兄なわけだ」
竜太朗はニヤリと笑うと。
「弟よ」
朗に抱き着いた。
「止めろよ、苦しいってば!」
朗はジタバタと抵抗している。
「けどよ、よく許したなジイサンの事」
抱き着いたままにそう聞いた。
「離れろって!」
朗は無理矢理、竜太朗を自分から引っぺがした。
「許すも許さないも…嬉しいが先に来た…自分には親も兄弟もいないって思ってたから。」
たから、一人じゃないんだって…暗闇の中にも光りはあるのだと、朗はとても晴々とした気分だった…何かを乗り越えた…そんな気分だ。
「確かに…今思えばさ、ジイサンは必要以上にお前を可愛がってたし、心配してたもんな…けど、朗が居るんなら俺は婿養子に入らなくても良かったじゃんか…なーんかムカつく」
竜太朗は一人で怒り出す。
蓮は竜太朗の言う通り、ずっと看病してくれた…怒ってくれたり、慰めてくれたり…ずっと影で父親を演じてくれていたのだ。
それに気付いたら、心の真ん中辺りが温かくなってくる。
プレゼントもう一つあるの…アンタは喜ぶわよ。
チエコの言葉が過ぎる…。チエコが言っていたのはきっと…
「これかぁ~」
朗は納得すると笑ってしまった。
「えっ?どれ?」
竜太朗はキョロキョロと周りを見ている。
「あ、そう言えは竜之介は?華は帰った?」
いつも遊んで攻撃をかけてくる竜之介の姿がない。
「ロジックだよ、マキコちゃんが飯食いに来いって」
「えっ?今日はロジック店休日だろ?」
「まぁ~いいから来いって」
竜太朗は朗の手を引っ張る。
◆◆◆
竜太朗に引っ張られロジックに行くが店休日の看板がドアに掛かっているし、電気も消えている。
「ほら、やっぱり休みじゃんか」
竜太朗に文句を言う。
「いいからドア開けろ」
朗は背中を押され、ロジックのドアを開けた。
その瞬間―暗闇の中からパンッという音と火花が散った。
「朗、誕生日おめでとう」
の声で電気がついた。
サプライズパーティーだった。
朗は一瞬硬直した。
マキコ、エディに華、崇と凜に晴彦、そして大家さんに竜之介、ジェイに蓮も居た。
「皆で計画したみたいだよ」
竜太朗が朗の背中をポンと押す。朗はいつもの席に座る。
マキコがケーキを目の前に置いた。
「華と作ったのよ、朗、イチゴ好きでしょう?」
そのケーキにはイチゴがたくさん乗っている。
「朗、誕生日おめでとう」
竜之介が小さい箱を渡してくれた。
「ありがとう」
早速開けてみるとペンダントが入っていた。
「僕が作ったんだよ、大家さんが教えてくれたんだ」
竜之介は少し照れ臭さそうだった。
「私ね、こういうのって凄く得意なの~、で、これは私からの手編みのマフラーよ」