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ロジック  作者: なかじまこはな
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おいてけぼりの空2

華は3度目のため息をつく。


気付けば米軍所有地の公園に来ていた。


朝から何だか一人、苛々して罪も無い野菜を力いっぱい切りきざんでいたらマキコに、


「華!そんな苛ついた態度で店に出る気?ウチは客商売よ!今日は帰りなさい」


と無理矢理、追い返された。


「別に苛々なんてしてないもん!野菜がちょっと硬かっただけだもん」


虚しい言い訳をしてみる。


「あ~ぁ、もう!何かバカみたいじゃん私」


確かに苛々している自分が居て、それがどうしてなのか…それが分からずにまた苛々する…の繰り返し。


「ハァ~」


華は4度目のため息をつき空を見上げる。


「お姉ちゃん、何かいるの?」


後ろから急に声がして、華は驚き、振り向いた。


「竜之介君」


後ろに居たのは竜之介。


「あれ?学校の帰り?」


「うん。今日はお昼までだったの」


「そうなんだ、友達と遊びに行くの?」


「ううん、違うよ。朗におやつ持って行くの、お母さんが朗と食べなさいってカステラの切れ端くれたの」


と竜之介は手にしている袋を華に見せる。


カステラ屋の竜之介の家では店に出すカステラの切れ端を安く売ったりもしている。それに朗もありついているわけである。


全く…朗は一生食いはぐれる事はないなと華は笑ってしまった。


「じゃ、朗と遊ぶの?」


「うん!僕とお父さんね、朗の助手になったの」


「はっ?助手?」


依頼…引き受けたのか…と華はさらに苛々度が上がる。


「綺麗な人だったから朗は舞い上がってるんでしょ?あのバカ!」


バカと言う単語に何故か力が入る。


竜之介は華の苛々した態度に何だか分かったと言う顔をして、


「うん。依頼のお姉さんをお父さんが綺麗だって言ったら、朗は華姉ちゃんの方が綺麗だって言ってたよ」


とニッコリと笑った。


華は一瞬で心拍数が上がり始める。


「えっ?えっ?嘘!」


子供が言った言葉にうろたえてしまう。


「嘘じゃないよ」


竜之介はニコニコ笑う。


…そうか、そうか、朗の奴…何だぁ~そっかぁ。

華はさっきまでの眉間のシワはどこへやら、テンションが上がり、朝から苛々していた気分が全て消えていた。


華は笑顔になると、


「竜太朗さんによろしくね。私、洗濯しなきゃ」

と上機嫌になり、手を振るとスキップする勢いで去って行った。


「女の子って単純」


竜之介は大人びた顔で華を見送った。






「あれ?朗君に竜太朗さん、何してるんですか?」


ひょっこりと史郎が顔を出す。


「史郎さんこそ…、って仕事ですよね?」


朗は史郎が作業衣姿だったので、そう判断した。


史郎は電力会社に勤めている。


「史郎さんはお前と違って、普段着に作業服やジャージとか着ないから」


「なんかムカつく」


竜太朗の嫌味に朗はムッとする。


史郎は二人のやり取りをニコニコしながら眺めながら、


「朗君、今日はジャージじゃないんだね」


と言った。


「何?史郎さんまで~、これはイジメか?」


「コイツ。昨日、俺んちに泊まったんだよ、風呂無し、着替え無し、無い無い尽くしだったからね、で、今日は朝から俺とハニーで朗を俺の服でコーディネートしてやった」


何故か竜太朗は得意げだ。


「あ~、だからか…今日は随分カッコイイって思ったんだ」


史郎は朗に笑顔を向ける。…きっと、史郎には悪気は無い…無いに違いない、ただ…普通の格好の朗を見た素直な感想だった。


「なんだよ!もう!そんなに俺ダメなんかよ~」 朗は怒りだす。


「いやいや、お前は普通の格好をしてればルックスはいいんだよ、それをジャージだの、寝癖だの…そんなんじゃ女の子にモテないぞ」


「ケッ、余計なお世話」


竜太朗の言葉に朗はプィッと横を向く。


「女の子と言えば、可愛い女の子が依頼しに来たんだって?」


史郎が思い出したように口にした。


凛は史郎が帰った後にロジックに来たので、彼は彼女の顔を知らないのだ。


朗は竜太朗をジロリを睨む。その目はまるで、


オマエシャベッタナ


と威嚇している。


「待て待て待て~、俺じゃなーい」


と竜太朗は首をブンブン振る。


「晴彦君に聞いたんだ。さっき、彼の勤める美容室に配線工事に入ったから、そしたら話を聞いた」


「晴彦のヤツ!…ところで、仕事しなくて良いの?配線見に来たんでしょ?」


「あ、うん…、朗君…滞納している家賃の事だけど」


史郎はまた後でと言っていた家賃の話を始める。


「その話…嬉しいんだけどさ、華が怒るし、悪いから」


せっかくの申し出は本当に嬉しいし、助かる。でも、華の言う通りにお金を借りるわけにはいかない。


「うん。払っちゃった」


史郎は笑顔でそう言った。


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