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ロジック  作者: なかじまこはな
111/135

真実までの距離7

大人にそんな言葉を言われたのは初めてだった。


「ありがとうオジサン」


「どんな仕事に就くんだ?」


「うん、蓮さんの弟子になろうかと思って」


「そうか、君なら大丈夫だよ」


「オジサン…崇がオジサンを好きな理由が分かったよ、信じれる大人が居るっていいね」


笑顔を見せる朗にエディもつられて笑った。



◆◆◆



横瀬で死体が発見されたニュースは昼過ぎには流れていた。


ロジックのドアが勢いよく開いた。


「あら、竜太朗どうしたの?そんな血相変えて」


店内へ飛び込んで来た竜太朗は尋常じゃない様子だ。


「ニュース見たか?」


マキコの問い掛けにも答えず息を切らし言う。


「ニュース?何かあるの?華、テレビつけて」


華がテレビのスイッチを入れたと同時に竜太朗はリモコンを持ち、チャンネルを次々と変えて行く。


マキコと華は不思議そうに竜太朗の行動を見ている。


「あっ」


彼は短く声をあげ、チャンネルを変えるのを止めた。死体発見のニュースが流れていた。


死体は20代の女性と死体の側に身分証があった為に名前も公表されていた。マキコと華はニュースに呆然となる。


「竜太朗…何、このニュース」


マキコはゆっくりと竜太朗の方へ顔を向ける。


「今朝…発見されたんだ、公園の裏山に埋められてて…身分証が側にあって」


竜太朗の目からは大粒の涙が流れている。


「朗は?竜太朗さん朗は知ってるの?」


華が竜太朗にしがみつき必死に叫ぶ。


「あいつは…多分知らない…携帯も繋がらないし」


「どこにいるの!」


華の必死の問い掛けに竜太朗は首を振る。


マキコは、ショックで立っていられなくなったのかヨロヨロと近くの椅子にもたれた。


「アイツ…もう立ち直れないかも…俺はもう、アイツの泣く顔見たくないんだ…何て言えばいい?何て声かければ…」


竜太朗は顔を両手で覆い泣いている。


「アタシ、朗を探してくる」


と華はエプロンを脱ぎ捨てる。


「探すってどこを?」


「分かんない、分かんないけど、黙って待つよりよっぽどいいよ」


マキコの問い掛けにそう返すと勢いよくドアを開け、華は外へ駆け出して行く。


「竜太朗、店閉めるから手伝って!今日は臨時休業よ」


マキコも何か決意したかのように立ち上がった。



◆◆◆



「朗はジェイと車に居なさい、危ないから」


エディはシートベルトを外しながら言う。車は約束の場所の近くに停められている。


「俺はともかく、ジェイまで置いて行って大丈夫なの?」


「一人で来いと言われてる…約束を破ったら崇が危ない」


「でも…」


朗は納得出来ないかのように引き止めようとする。


「エディは大丈夫だよ、素人じゃない、彼を信じて」


ジェイが微笑む。その自信タップリの笑顔に朗も納得するように引き下がる。エディがドアを開け、車を降りると朗は慌てて窓を開け。


「ねぇ、やっぱり1時間して戻らなかったら警察に言うの?」


と聞いた。


エディは目を細め笑うと


「朗、君はいいね…緊張が解れる…私とジェイは警察だよ、安心して」


朗の頭を撫でた。


「だって、よくテレビドラマで言ってるし…」


エディに笑われ、朗は顔を赤らめそう言った。


「テレビの見すぎだから…ジェイ、朗をよろしく」


ジェイが頷くとエディは建物の中へと入って行った。


「首、本当にごめんね、痛かっただろ?誰も来ないと思ってたから咄嗟だったんだ」


エディが居なくなった車内でジェイが朗の緊張を解すように会話を切り出した。朗がずっと緊張しっぱなしだったのを気付いてくれているようだ。


「あ、うん…今は平気、ジェイはオジサンとコンビ組んで長いの?」


「7、8年くらいかな?」


「へぇ~、あっ、この前俺が誘拐されそうになった時に助けてくれたのはジェイ?」


「うん、そうだよ、君を守るようにってエディに頼まれてたから」


「オジサンに…」


朗は嬉しくなった。


「携帯を持ってるって何で知ってたの?」


「ウォンの友達を確保して聞いたんだ、でも…目を離した隙に逃げられて、その後に殺された…可哀相な事をしたよ、本当は助けたかったのに、信用されてなかったんだ…殺された彼は彼なりにウォンを助けようとしたみたいだ…」


ジェイの瞳は悲しそうで、本気で助けようとしていたんだと朗に痛いくらい伝わった。





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