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ロジック  作者: なかじまこはな
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真実までの距離6

「良かった…崇を裏切ってなくて、本当に良かった…オジサンが小さい頃から知ってるオジサンで本当に良かった」


鼻をすすりながらに言う朗をエディは思わずギュッと抱きしめた。


「本当に君はバカがつくほどにイイコだね…自分の事より他人の為に喜ぶ…本当に華は見る目があるんだな」


抱きしめる腕に力が入る。


「オジサン苦しい…」


「あ、ごめん」


慌てて朗から離れる。


「じゃぁ、オジサンって何者なの?」


「私?私はね…潜入専門の警察だよ、潜入捜査官ってヤツ」


と身分証を見せた。


「潜入捜査官…?」


映画やアメリカドラマでよく出てくる… あれ?

身分証をマジマジと見てしまう。


ヤバイ…カッコイイ!


朗は心でそう叫んだ。


「もう5年も潜入してた…やっと辿り着けたよ、捕まえたい奴を辿る為にウォンの兄に近づいたけど、彼は何かを感じ取ったのかな?確信に迫る前に日本に逃げられた…そこで、崇に会ったんだ。騙してる事に変わりはないけど…守る為に側に居たんだよ」


「守る為…そっか、そんな騙しならいいよ…でも、あのサイトはオジサンが作ったって」


「そりゃぁ、潜入捜査だからね…相手を信用させなきゃ」


「そうか…」


納得するように頷く。


「じゃ、SDを渡して貰おうかな?」


と手を出す。


「分かった」


エディが警察と分かった安心からか素直に携帯を出し、SDを取出して渡した。


「素直な子で良かった」


また子供扱いするように頭を撫でる。


「君は頭が良いね…用意周到だし」


朗はちょっと、照れ笑いをした。


「そうだ、あの写真…」


そう言いかけた時にエディの携帯の着信が鳴る。


彼は、早口の英語で相手と暫く話していたが段々と顔が険しくなっていく。


彼が電話を切ると待ち構えたように朗はどうしたのかと聞く。


「崇が誘拐された…」


「えっ?」


朗は眉を寄せる。


「SDと交換だと言われた」


エディは上着を手に取る。


「誰に誘拐されたの?崇は無事なの?」


縋り付くようにエディの上着を掴む。


「私が今1番会いたい奴に誘拐された…崇は無事だと思う…大事な人質だし」


「行くの?」


「もちろん、彼を守ると決めたから」


エディの顔は息子を心配する父親の顔だった。


「俺も行く!」


「ダメだ、朗はここで待ってなさい」


「ヤダ!絶対に行く!連れて行かなきゃ本物のSDは渡さないから」


エディはえっ?と目を丸くした。


「渡したのは偽物で、これが本物」


朗は得意げにポケットからSDが入ったケースを出す。


「全く…君は」


エディは完全にやられた…と苦笑いをすると、


「行くぞ」


と一緒に部屋を出て、駐車場に着いた。


数分、その場に立っていると一台の車が目の前で止まった。


「朗は後ろに乗って」


エディに促され、朗は後部座席へと乗り込んだ。


運転席の外国人を何となく見た事があるような感覚を覚え、首を傾げながらに運転手を見た。


「朗、彼はジェイだよ…もちろんジェイも潜入捜査官だよ」


紹介され、朗は軽く会釈をする。ジェイは白人で明るいブラウンの髪をしている。なかなかのイケメンだった。


『あの…朗です、どこかで会いましたか?』


英語で話しかける。


「日本語話せるよ、よろしく朗…それと首…ごめんね」


ジェイは運転席から手を伸ばし、握手を求める。


朗は握手を交わしながら、首?なんで首?と考えた。


「あっ!」


スタンガン…!


朗はスタンガンをあてられた相手だと要約気がついた。


ジェイは笑って誤魔化す。そして、車は走りだした。


「俺さ、この事件が解決したらちゃんと定職に就こうと思ってるんだ」


「探偵…してるんだったね…どうして?」


「俺さ…現実から逃げてた…過去にずっと囚われてて、未来を見てなかった…崇はさ、過去から逃げてないだろ?ちゃんと少しづつ前に進んでる…まるで、過去が未来をくれたみたいに…俺もさ、ちゃんと地に足をつけて歩いて行きたい…」


ずっと、誰からも愛されていないと思ってた。


いや、気付かない振りをしてた。無くした時に倍に傷つくから。


それが怖かった。でも、今は違う…。竜太朗は息子みたいに可愛がってくれる。マキコも同じ。


蓮も竜之介も凜も…そして華も。沢山の人達が自分を大切だと言ってくれる。


愛せないんじゃない、愛さなかっただけ。


それだけ…今は違う、愛せる…未来へゆける…。


「君は良い子だよ、崇も凜も皆…毎日必死で生きている、そして…皆、不器用…朗は朗の好きなようにすればいい、これは突き放してはいないよ、君が選ぶ道は君だけのモノだから、泣くのも笑うのも選び方次第だよ、大丈夫!君は笑って歩けるよ、自分を信じて、そして怖くなったり進む道が分からなくなったら、誰かに背中押してもらえばいい、君にもその誰かは居るんだから」


エディの言葉に朗は強く頷いた。




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