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ロジック  作者: なかじまこはな
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真実までの距離2

「凛」


傘をさして病院から出て来た彼女に崇は声をかける。


「お兄ちゃん?」


迎えに来るという意外性に凛は疑問形で崇を呼んだ。


「雨酷いからさ、迎えに来たんだ、早く乗れよ」


いつもの仏頂面ではなく笑顔の崇に凛も思わず笑顔になる。


「うん」


明るく返事を返すと急いで車に乗り込んだ。助手席に座り、シートベルトを着ける。


「お兄ちゃんが迎えに来るなんて珍しいね…だから雨なんじゃない?」


「お前な、降ろすぞ」


と笑うと車を走らせる。


「メシ食って行こう」


崇の言葉に凛は黙り、じっと崇の顔を見ている。


「何だよ?」


「今日…季節外れの嵐になる」


真顔で答えた。


「凛…お前なぁ」


「どうしちゃったの?熱まだ下がってないんじゃない?」


意地悪を口にしているが凛は嬉しくて堪らなかった。


崇が優しく笑う、ただ…それだけの事なのに嬉しくて泣きそうになる。


「もちろんオゴリだよね?」


「えっ?割り勘だろ?」


「ケチ…」


「嘘だよ、おごるよ…マックだけど」


「はっ?やっぱりケチだ」


凛は笑う…ずっとこのままでいたい…そう願った。


「雨凄いね」


窓硝子を叩きつけるような激しい雨を見ながら竜之介は呟いている。


「季節外れの台風みたいだな」


朗は竜之介の側で寝転んでいる。


「明日は遊んでよね、今日はちゃんと大人しく留守番してたんだから」


今日一日置いてけぼりだった竜之介は口を尖らせている。


「いいよ、何して遊ぶ?」


朗が起き上がると同時に部屋の電話が鳴る。


「はい。もしもし…あ、オバアチャン?うん、分かった」


電話は竜太朗の母ちゃんからのようだ。


「朗、オバアチャンが大人に代われって」


と子機を朗に手渡した。


「もしもし、母ちゃん?何?竜太朗さんなら珍しく仕事してるよ…えっ?そうなの?分かった伝える」


電話を切ると。


竜之介が待ち構えたように、「どうしたの?」と聞いてくる。


「公園の裏山がとうとう壊れたらしい…明日、作業するから竜太朗さんに手伝いに来いって」


「ふ~ん、じゃぁ、ゲームしよ?」


竜之介は嬉しそうにテレビゲームをセッティングし始める。


ゲーム三昧をした後、竜之介はちゃっかり朗のベッドに潜り込んで眠っている。


時計は午前2時過ぎ…眠れない…


何度も…何度も…寝返りをうつ。


ある疑問がずっと頭に浮かんでは消えて…睡眠を妨げる。


あ~もう!明日…聞いてみよう…もう、それしかない。




◆◆◆


朝、崇は出勤前にウォンの上司のドノバンに会いに来ていた。もちろん、昨日の事を話しに。


『それは手掛かりになるのか?』


ドノバンは崇の話に興味を示すように身を乗り出している。


『これ…、前にウォンから貰ったメールなんです、その時は文字化けだと思ってて、でもウォンは自分の携帯に送られて来たモノを俺に転送してくれたんです…きっとウォンからのSOSだと思います』


崇は携帯を出し、転送されたメールを見せる。


『これは…』


メールを見たドノバンは目を見開く。


『何か分かるんですか?』


『前に話しただろ?』


『麻薬密売ですか?』


『…そう、軍が関与してるかも知れない…武器売買もそうだ、どの国もやってる事だよ、そうじゃなきゃ…大金は手に入らない…軍と手を組めばいくらでも運べるからな』


『やっぱり…ウォンは巻き込まれてるんですね』


崇の問い掛けにドノバンは頷く。


部屋のドアがノックされ、ドノバンが返事をすると若い兵士が書類を抱え入って来た。


崇は…ふと、彼の歩き方が気になった。


足を引きずるように歩いている。


その時…竜之介の言葉が脳裏を過ぎる。


「僕を追い掛けて来た人がね、足を撃たれたんだ」


崇は立ち上がる。


『どうした?』


急に立ち上がった崇にドノバンがキョトンとしている。


『いえ、…もう時間なので…遅刻になってしまう』


崇は軽く会釈をしてドアの方へ急ぐ。


何故か…何故か心がざわつく…ココハキケンだと誰かが急かしてくれているかのように早く部屋を出たかった。


ドアノブを掴む寸前にガチャリとドアが開いた。開いた…と言うより、誰かが開けたのだ。


崇の目の前に立ちはだかる男には見覚えがあった


『彼が崇だよ…間違えてただろ?』


崇の後ろからドノバンの信じられない言葉が聞こえた。


立ちはだかる男は朗に『頭、大丈夫か?』と聞いた男で崇が全てを理解するのに時間は掛からなかった。


早く逃げなきゃ…頭で理解出来ても体が言う事を聞いてくれない。


『こっちのカワイコちゃんが崇か』




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