真実までの距離
「私なりに調べてみるよ」
「じゃぁ、俺も一緒にやりたい!写真に見覚えある感じがするし」
「写真?」
「うん、ウォンの携帯に写メが保存されていて…気になってプリントアウトしたんだ」
そう言って竜太朗が持って来てくれた写真を広げる。写真は建物の中のようで薄暗かった。
「角度からいって、寝転んで撮った感じだよね、天井写ってるし」
朗の説明にエディと崇が身を乗り出す。
「携帯のカメラで撮ってるのなら日付分かるだろ?」
とエディはウォンの携帯を扱い出す。
「あれ?どうも機種が違うと……」
「貸して、おじさん」
悪戦苦闘に朗が助け船を出す。
ウォンの携帯からさっきの写メを出そうとするが出て来ない。どうして?と思ったが直ぐにSDを自分の携帯に入れた事を思い出した。
「間違って消したかも…でも日付は覚えているよ…確か、ウォンが居なくなった日…」
とSDの事を黙っておいた。
「消したってお前な!」
崇が怒ったように朗を睨む。
「崇、大丈夫だよ、写真はプリントアウトされているし」
エディが直ぐに崇を止めた。
「他に気付いた事は?」
「うん、オジサン、パソコンある?」
「あるよ」
エディは仕事用のノートパソコンをテーブルの上へと置いた。
朗は先程のロジックのスペルをパソコンに打ち込み、サイトを出した。
「これ…何?」
崇が神妙な面持ちでパソコン画面を覗き込んでいる。
「ウォンの携帯に入ってたメールアドレスを打ち込んだらここに繋がるんだ」
ウォンの携帯のメールを開く、崇に以前送ったものが一つだけ残っていたのを思い出し、それを出した。
「これって…俺のとこに来た文字化けのメール…」
崇は自分の携帯を開き、その同じメールを出す
FWが件名にある…、この送られたメールをコピーしてウォンは崇に送ったのだろう…
SOSの意味合いをのせ。
「転送したんだな」
エディはそう言いながらEnterを押すが弾かれる。
「パスワードがないと無理だよ」
朗が物言いたげにそう言う。
「分かった、調べてみるよ」
「分かったら教えてよ、俺も写真の場所思い出したら言うから」
「分かったよ」
そう言うとエディは、パソコンに夢中になる。
「崇は凛を迎えに行けよ…危ないだろ?」
朗の言葉に素直に頷くと崇は凛を迎えにと部屋を出て行った。朗も竜太朗と数分違わずにホテルを出ると車に乗り込む。
「お前さ…SD変えたままじゃね?何で言わなかったんだ?」
さすがに竜太朗も気付いていて何も言わなかったようだ。
「うん…そうなんだけどさ、凄く気になる事があってさ…」
「またかよ、今度は何だ?」
竜太朗はエンジンをかけ、車を走らせる。
朗はずっとある疑問が頭にあった。
「オジサンって仕事何してるんだっけ?」
「エディ?さぁ?昔は軍に居たってマキコちゃん言ってたなぁ」
「今は?」
「さぁ?知らない…何で?」
「タイミングが良すぎるんだよな」
そう…全てタイミングが良すぎた。
「タイミングがどうした?」
「今日もタイミングが良すぎた、確かに助かったけど…どうしてオジサンはあの時俺らの先回り出来たんだよ…」
「今日?崇君に聞いたんだろ?」
「違うよ…崇は俺と一緒とは言ったけど場所までは言ってない…俺が誘拐されそうになった時も偶然にしては出来過ぎる程にタイミングが良かった…」
竜太朗もうーん…と考えているようだ。
ポツン、ポツン、と雨粒がフロントガラスにあたりだした。
大雨注意報…と竜太朗が言っていた。外に目をやるとポツリ、ポツリだった雨が次第に強くなりだした。
「…ねぇ、オジサンはどうしてウォンの携帯を欲しがるんだろう?警察に任せればいいのに…」
「確かになぁ…エディは警察でもないのに」
「それに何で崇を通訳として側に置くの?オジサン日本語話せるのに」
「そりゃ、読み書きが出来ないからだろ?」
「…………違う」
朗は遠い記憶を蘇えさせた。
「違う?」
「思い出した…オジサンと華が英語で会話するのは華が英語を忘れない為だってマキコさんが言ってた…それにエディは読み書きも出来る…日本の大学にちゃんと通って勉強したって…俺、小学生の頃にエディに漢字とか教えて貰った事あるもん…難しい漢字ばかりの小説も読めるんだよってその時、言ってた…」
思わぬ真実を思い出してしまった。
「マジかよ…じゃぁ崇君の通訳要らないはず…」
竜太朗の言葉に朗はしっかりと頷く。
ワイパーが段々と激しくなる雨を弾いていた。