隠された謎5
「だから何で?」
「言えるわけない…凛がお兄ちゃんって呼ぶ度に自分は兄で居なきゃダメだと思ってしまうんだ、俺の過去知ってるだろ?自分の親を殺した奴が幸せなんかになれるかよ、凛を傷つけたくない…お前なら凛を任せてもいいって思ったんだ」
泣きそうな瞳で朗を見つめる。
「ばーか」
嫌味タップリのばーかだった。
「バカ?」
「本当にバカ!カッコつけ野郎!何が幸せになれないだよ、何が傷つけたくないだよ、違うだろ?自分が傷つきたくないだけだろ?凛が自分のせいで泣いてるのを見たくないだけだ、自分のせいだと傷つきたくないだけ…崇が父親を殺した事で苦しんでいるのは凛も同じだよ、凛も苦しんでいる…それを助けてやれるのは俺じゃない…崇だよ、崇にしか救えない…もっと素直になれ!凛を幸せにしたいなら素直になれよ」
「そうだよ、幸せになりなさい…どうして幸せになっていけないのか私には分からない。好きな人を守る為には必ず傷つかなきゃいけないものなんだよ、…君は不器用過ぎるから…見てて歯痒くなるよ。…私もそうだった…、息子が幼くて死んでしまった時に泣いて自分を責めるマキコを慰めるのに懸命で私は泣かなかった…私が泣いたらマキコがもっと苦しむと思ったから、けど違う…今なら分かるよ…私も泣くべきだった、一緒に抱き合って泣くべきだったんだ、だから崇も凛と泣いて一緒に乗り越えなきゃ…彼女は君を愛しているよ、それさえも突き放して彼女が幸せになれると思っているのなら…それは君の間違いだよ」
エディの言葉で崇は黙り込み…俯いている。
心の中では既に答は出ていた。
でも、凛も自分を愛してくれている自信が無かった。朗の言う通り、傷つくのが怖かった。
その為に凛の気持ちさえも気付いてあげれなかった…自分を守る事に必死過ぎて、辛さにも気付いてやれなかった。何て…自分は愚かでバカなんだろう?
「オジサン…崇を泣かした事、凛には言わないでよ、本気で嫌われる」
「私も同罪だよ」
エディはそう笑うと泣いている崇を抱きしめた。
「青春だな」
エディが笑う。
「そうだね」
朗も笑った。
◆◆◆◆
崇が落ち着くのを待って、エディは改めて携帯を渡すように朗を説得した。
「オジサンだって危ないよ…何かあったら俺が華とマキコさんに殺される」
「いや、私が華に殺されるよ…いいから大人に任せなさい」
「大人?俺も大人なんだけど…そりゃぁ、竜太朗さんも俺を子供扱い…」
といい掛けて、竜太朗を図書館に忘れて来た事を思い出した。
そうか…何か忘れていると思ってた…。
その頃、竜太朗は図書館に来ていた女子高生とワイワイと楽しくやっていた。
◆◆◆◆
「酷いぜ朗、置いて行くなんてさ」
と竜太朗は近くのソファーに座る。
朗は彼に携帯で連絡を入れ、ホテルまで来て貰った。
「ごめん…置いて行くつもりは無かったんだよ」
「ま、そんな事情なら仕方ないけど」
大体の説明はし終わっていて、竜太朗も納得してくれているようで朗は安心した。
「けど、随分腫れてるな…大丈夫か?」
竜太朗は痛々しい朗の頬を触る。
「痛ッ…さわんなよ、痛いんだから」
触られただけで痛みが走り、朗は顔を背ける。
「崇君もなかなかヤンチャさんで…見かけ王子様なんだけどなぁ」
竜太朗の目の前に座る崇は、視線のやり場に困り仕方なく俯く。
「気強いぜコイツ!初対面の時だって腕を捩上げられたし」
「それは仕方ないだろ?お前が怒らせる事ばっかりするから」
竜太朗の指摘に朗は口を尖らせる。
「さて、帰ろうか…天気が荒れる前に」
と竜太朗は立ち上がる。
「へっ?」
「へっ?じゃない、夕方から大雨注意報が出てるぞ、だからわざわざホテルまでお前向かえに来たんだよ」
「そうなの?」
と朗は帰る為に上着を着る。
「携帯」
エディがニッコリと微笑み朗の前に手を出す。
「忘れてなかったんだ…」
朗は苦笑いをする。
「君が持っていても仕方ないだろ?それとも警察に持って行く?…でも、それじゃぁウォンの行方は分からない…さて、どうする?」
選択を迫られる。
「オジサンはどうするの?」
「大丈夫だよ、もし嫌だと言うなら力づくになるけど…」
朗は悩んだ結果、素直に携帯を渡す事にした。確かに自分が携帯を持っていても、ウォンを助ける事は出来ない。
「いい子だな」
エディは笑顔でウォンの携帯を受け取った。
「この携帯どうするの?」