隠された謎3
「お…お前があんな事言うから…」
崇は罰が悪そうに俯き、朗の隣でブロック塀に寄り掛かる。
崇は朗を少しは気に入っていた…彼になら凛を任せてもいいかな?と…でも、そんな朗からあんな台詞が出てショックだったのだ。
「確かに…冗談にしては質が悪いけどさ…手加減なしだもんなぁ」
冷たいハンカチを頬にあてる。
「…ごめん」
崇は小さい声で謝った。
「えっ?聞こえないんですけど?」
朗はわざと耳を崇の方へ寄せる。
「ごめんってば!シツコイ…んだから」
「俺は器の小さい男だからな…何時までも言う」
その言葉に崇が反論しようとした時に自分の携帯がなり、慌ててポケットから出し電話に出た。
電話はエディからだった。
『どうかしたんですか?えっ?朗ですか?一緒にいますけど…はい。分かりました』
崇は首を傾げながらにエディに指示された事を実行にうつした。
自分の携帯からウォンの番号をおしてみる。
プップーッと音がなり…着信音が朗のポケットから聞こえて来た。
崇は信じられないと言う顔をして朗を見た。
やられた!!と朗は焦った。
バッテリーを取り外した後、つい、癖で電源を入れてしまっていた。あのまま携帯の電源は落としておくべきだった。
「なんで…電話出ないんだよ」
崇は何か言いたそうに朗の前に立つ。
「いや、ほら、嫌いな奴からだから…ねっ?」
朗は笑って、誤魔化そうとするが崇には通用しないようだった。
崇は朗の上着のポケットに手を入れようとする。
「やめろって!」
朗は崇の手を振り払う。
「なんでお前がウォンの携帯を持ってんだよ…」
崇に詰め寄られる。
「ち、違うよ…俺の携帯だってば」
すでにバレている嘘を懸命に貫き通そうとする。
「じゃぁ、電話に出ろよ!今すぐ」
もう…言い逃れは出来そうになかった。
朗は観念してポケットから携帯を出した。
「返せよ、俺が受け取るはずだったんだろ?」
朗の前に手を出した。
勘がいい崇は携帯を見た瞬間から全ての原因が携帯であると直感した。
携帯から全てが始まったのだ。
だから朗は、自分と間違われて誘拐されそうになったんだ…。
「嫌だ!絶対に嫌だ!」
朗は、返すどころか返さないと後ずさる。
「何言ってんだよ、お前が持ってても仕方物だろ?」
「崇が持ってても仕方ないだろ?凛まで巻き込まれる」
凛と言う名前で躊躇したが、崇は朗に詰め寄る。
朗は携帯を握りしめ、図書館へ逃げようとするが目の前を塞ぐように外国人の男が、二人立ちはだかる。
朗はマズイと後ろを振り返る。
崇も、同じようにヤバイと感じたのか後ろを確認する。
タイミングを二人で計り、一気に走り逃げようとするが、遠巻きにいた外国人らが仲間だと気付くのにそう時間はかからなかった。
しくじった…、外国人に慣れてしまっていた自分らに腹が立つ。
基地がある街だから外国人は気にもしない。
いつから奴らは居た?
朗は、見覚えがある顔を見つけた。
自分を殴りつけた男だ。
『可愛い子ちゃん、頭平気か?』
男はニヤニヤと笑った。
逃げるタイミングを計るように崇と朗は互いに目配せをする。
なんとか…不意を打ちたい。
『その携帯をこっちに渡して貰おうか?いい子にしてればもう殴らないよ』
男がゆっくりと朗に近づいて来る。
渡せと言わんばかりに手を前に差し出す。
朗はチラリと崇に、目で合図をし携帯を男に渡そうとする。
『よし、いい子だな』
男はニヤッと笑うと携帯を取ろうと手を伸ばした。
―瞬間―
朗は携帯を上に放り投げる。
男は一瞬の出来事に目で携帯を追うように顔を上にあげ、崇と朗から目を離した。側に居た外国人達も思わず上に視線を投げた。
崇はその隙を見逃さず、回し蹴りで男を倒した。
朗が、携帯をキャッチしたと同時に二人は、全力疾走する。
倒れた男が甲高い声で、二人を追うように他のマヌケな外国人に指示している。
数人の走る音が後ろに近づいている。赤になりかけた信号をギリギリで渡り終える。
後ろから沢山のクラクションが鳴り響いているので、奴らが追って来ているのだと振り返らなくても二人にも分かる。
そのままアーケードの中に入った。こんなに全力疾走するのは、高校の頃以来だ…朗はそう考えていた。