隠された謎2
「朗」
と名前を呼ばれ思わず振り向く。
「崇…なんで…」
崇が立っていた。
何でこうもタイミングよく…きっと崇も知ってる?こうなりゃ白を突き通すしかない…そう覚悟した。
「どうしたんだよ?寝てなくて大丈夫なのか?なんでここ分かったんだ?」
なるべく自然な態度を装うが、何となく発した言葉は棒読みな感じが自分で分かった。
「竜之介に聞いた、体はもう平気」
「…そうか、なら良かった、じゃぁ、また!」
棒読みな返事を返し逃げるように図書館へ行こうとするが崇に腕を掴まれた。
「なんだよ、なんか用かよ?」
朗は白を突き通す覚悟を決める。
「凛の事だよ」
「凛?へっ?凛?」
突き通す覚悟の朗は少し拍子抜けする。
「へ?じゃない!どういうつもりだよ」
崇は掴んだ手を離す。
明らかに崇は物凄く怒っているようだ。
「どういうつもりって?何で崇が怒ってるんだよ」
「当たり前だろ?遊びだったのかよ」
凛の為にワザワザ自分を探しにここまで来たんだろう…何故か無性に意地悪をしたくなった。
「だったら?どうする?」
挑戦的な言葉を返す。
「ただじゃ済まない」
朗を睨みつける崇の声は低い。凄く怒っているのは手に取るように分かる。
「ふ~ん、随分怒っているように見えるけど、崇に怒りを買う理由が分からない」
「バカか?妹なんだから怒って当然だろ?」
「血繋がってないじゃん、血の繋がってない妹の為にそこまで怒るのか?崇も随分優しいな」
血が繋がってない…と言う言葉に崇は一瞬戸惑ったように見えた。
「繋がってなくても妹だよ…ずっと妹として暮らして来た…だから心配もするし、悪い男に騙されたと知ったらソイツを殴る事だってする」
その言葉に朗は苛立ちを覚えた。嘘つき!そう叫びたかった。
「ふ~ん、悪い男って俺の事?…確かに、凛ってカワイイしスタイルもいいだろ?だから、エッチしたかっただけなんだよな…何回かしたら飽きたけ…」
言い終わらない内に崇がおもいっきり、朗の顔を殴り付けた。
朗は勢いでその場に倒れ込む。頭がクラッときた。
「痛ってぇ…口の中切れただろ」
口の中に血の味が広がる、手で触るとヌルリと血の感触がした。
崇は直ぐさま朗の胸倉を掴む。
「ふざけんな!妹をなんだと思ってんだ」
崇はもう一発朗の顔を殴る。
手加減無しの崇に朗も流石に切れてしまった。
「俺の凛だろ?妹じゃなく!ちゃんと俺の凛と言えよ」
朗は崇の手を振り払うと、
「そんなに心配なら泣かすな!お前は知らないだろうけど、凛は俺に崇が笑わないのは自分のせいだって泣いてた、凛はいつだってお前の心配ばかりしてた、お前の為に泣いて、傷ついて、お前には自分の心配させまいと我慢して…壁作るなよ、凛が可哀相だろうが!」
力いっぱいに怒鳴った。
「ちくしょう…怒鳴ったら痛い」
と殴られた頬をおさえる。
「ムカつくのはこっちだバーカ!俺は本気だったんだ」
と立ち上がり、側のブロック塀に寄り掛かる。
崇が急に静かになったので、顔を上げた。が…いつの間にか崇の姿がない。帰ったのか?と思っていると、暫くして目の前に濡れたハンカチが差し出された。
顔を上げると崇だった。
ワザワザ、ハンカチを濡らしに図書館まで行って来たようだった。
朗は黙って受け取ると。
「冗談くらい分かれよバカ!何か言う事あるだろ、2発も手加減なしで殴りやがって」
と文句を言った。