隠された謎
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次の日、朗は竜太朗と共に図書館へ来ていた。
建てられて間もない図書館は綺麗で新築独特の匂いがする。
パソコン室へと二人で入る、大型…いや、体がデカイ竜太朗と二人では2人用のパソコン室は狭く感じた。
「な、気になる事って何だよ、勿体ぶらずに教えろよ」
「あ~もう、うるさいな竜太朗さんは~待てってば」
朗は、持参したコードを繋ぎウォンの携帯とパソコンを繋ぐ。
「携帯ってさSD付いてるだろ?ウォンの携帯のメールをチェックしてたらさ、ワザワザSDに読めないメールが沢山保存されてたんだ…数字とローマ字と漢字が入り交じったのが…始めは文字化けかな?と思ったんだけど、そんな読めもしないメールを保存なんかしないだろ?それにパソコンからのメールばかりだったから気になってさ。それと写真もSDに入ってて、小さくて見づらいからパソコンで拡大出来ないかな?って思って」
朗は手際よく作業を進める。
朗はアホそうに見えて、実は機械系に強かった。
竜太朗もへ~凄い…、と口には出さないが手際のよさに感動して、目を真ん丸にしている。
ガシャン…と音がしてプリンターが動き出した。
写真を上手くプリントアウト出来たようで。
「どこかの建物の中なんだよな…見た事あるような…ないような」
朗はプリントアウトした写真を見つめている。
「朗…お前、アホだ、ガキだと思っていたけど、やる時はやるんだな」
竜太朗は、誉めてるのかけなしているのか分からない事を言っている。
「なんか…カチンと来るな…、それと、メールアドレスが気になってさ」
「気になるって?」
「ロジックなんだ…メールアドレスが」
「えっ?」
竜太朗は思わず声がでかくなり慌てて口を塞ぐ。
「スペルが違うけどね…マキコさんのロジックはIogicで理論とか道理とか説得力とか意味があるんだけど、こっちのロジックはLOGIQUL」
朗はパソコンにスペルを入れ、検索をする。
一件ヒットした。
「なんだ…これ?何かのサイト?」
竜太朗がパソコン画面を覗き込む。
画面にはEnterの文字が出たが、クリックしてもパスワードがないと入れなかった。
「パスワードか…」
朗はため息をつく。
「な、一つ聞いていいか?」
竜太朗が珍しく真剣な顔をしている。
「何?」
「SDって何?」
朗はあからさまにため息をついた。
「メモリーチップみたいなもんだよ」
とウォンの携帯からバッテリーを外してSDを抜いてみせる。
「機種変とかしたら写メとかアドレスとかメールとか新しい携帯でも見たいだろ?それをSDに保存するんだよ、そして新しい携帯に入れると見れる。まあ、今はネットに預けられたりするけどね」
と今度は自分の携帯のバッテリーを取り外しウォンのSDを入れて、またバッテリーを戻し電源を入れる。
竜太朗は小さい子供が玩具の説明を聞いてるかのようにキラキラした目で携帯を見ている。
朗はダメダこりゃ…とため息をつく。
「ちなみに竜太朗さんの携帯にもついてるけど?」
「嘘~マジで?」
竜太朗はポケットから携帯をだして、確認をしている。
その情けない姿を見ていると手に持っていた朗の携帯が振動した。
知らない番号が表示されて、躊躇したが、竜太朗にここに居るようにとウォンの携帯をポケットにしまい、外へ急いで出た。
「…もしもし、」
恐る恐る電話に出る。
「朗か?私だよ…エディだ」
電話はエディからだった。
何故だろう?一瞬、ギクッとなった。
「オジサン…どうして俺の番号知ってるの?」
「華に聞いた」
「何か用事?」
「朗、質問に答えてくれ…君は崇と間違えられて、ウォンの友人から何か預かっただろ…」
ドクン…
心臓が波打つ。
「なんで?」
「君は殺された韓国人に携帯を拾って貰ったって話してくれただろ?あれはウォンの携帯だろ?」
ドクン、ドクン…と心臓の打つ回数は増えていく。
「聞いてるか?それを持っているから崇も君も狙われてるんだ、ウォンの兄も友人も殺された…もう何人も死んでる…分かるだろ?危険なんだ!ウォンの携帯を持ってるなら」
「持ってない!」
エディの言葉を遮り咄嗟に嘘をついた。
「本当に?」
エディの声は疑っている…とはっきりと分かる探りを入れる声だ。
「ほ、本当です」
「君は…華の言う通り、嘘がつけない子だね」
「本当にし、知らないから」
朗は裏返った声で下手な嘘をつき、電話を一方的に切った。
そして、電源をオフにした。
「ヤバイじゃん…何でオジサンにバレてんだよ」
冷や汗を拭うと携帯をポケットに入れる。
図書館へ戻ろうと方向を変える。