IDZ
ーこ、こんな状態で生きているのか?し、信じられない。
ー先生、欠損箇所が・・・
ー自己再生だと!?す、すごい。ははは素晴らしい!
ーふ、復元した?
ー回復班、魔力切れならもうやらなくていい。こ、こいつは・・・こいつは
ー化物だ
ー
ーー・・・
ー
ー「はっ」
目が覚めると、そこは知らない部屋だった。
メリーの部屋ほどじゃないが豪華絢爛な装飾品が所々にあり、この場所が普通の場所じゃないことを物語る。
「生きてる・・のか?」
問いかけるように呟く。目も見える、耳もついてる、腕も足も痛みなく動く。
「た、助かったのか?」
あまり覚えてないがぐちゃぐちゃにフルボッコ喰らったよな俺。なんで傷がない?、、魔法の力か・・・
自分の腕をぐちゃぐちゃにした光の球を思い出す。
あんなもんが成立する世界だ。治すのだってできんだろ?
ーなんだかいろいろ麻痺しちまってるが、そもそも俺は普通の会社員だ!いかれた奴らといるのはもう限界だ!
俺は逃亡の覚悟を決めた!そうだ!俺は自由だ!フリーバード!アイムフリーバード!
おっ?なんだか体が軽いやんけ!いける!今ならいける!この無敵感!さあ踏み出せ!自由への一歩だ!
ガチャ
「あら?思い人のお目覚めね。怪我の具合はどう?」
ジーザス!ごめんなさい!無力な屑です。
「やあ、体はなんとか大丈夫だよ、君は?」
極めて冷静に返事をする。立場を見極めなくては
「あの怪我を一晩で?ふ、ふふさすがは思い人ね!私、あなたを気に入りましたわ。あなたにつけてもらった傷もそのままにしたかったけど、公務に差し支えるってサザビーがうるさかったの。あなたの愛を消したわけじゃなくてよ」
「そう、よかった。またつけてあげるよ」
ーこ、こんな感じか?
「ぁあ、もう今日は挨拶だけよ。またしたくなってきちゃうー「王女」わかってる、下がりなさい、ビー」
「そういうわけでまたね、思い人、ゆっくりするといいわ」
ーバタン
いかれてやがるぜ、くそったれ。
どうやら王女はプロSM嬢だったってわけな。女王様違いかよ、笑えねえ。
まあ、やぶれかぶれではあったが一命は取り留めた。
だけど、また狂気の宴がいつ始まるかわからない。
ここは今日中に逃げるしかないな、ふぅ
ーコンコン
窓の外からノック音がする。
振り返るとそこにはー
「キース!」
急ぎ駆け寄り窓を開ける。ここ何階だよ?
「椿、どうやら成功したようだな。さすがだ」
「キース、俺、おまえのこと殺したいんだけど」
「バラン伯爵の件は聞いた。よくも生き延びたな」
「殺されかけたわ!ていうかやばいぜ!一応ごまかしたが、俺がアービガルド奴隷館の人間なのはバレてる。王女も俺に興味があるから生かしてるだけだ。恐らく弱みを掴むのは難しい」
「そうだな、イレギュラーだ、しかもだ、こちらもイレギュラーな事態が起きた」
「あ、あん?なんだよ。メリーか?」
「左様。明日、クリス王女が奴隷館を視察される」
「は、はあ?なんでまた?」
「恐らく、メリー様を挑発し事件を起こさせる気だ。既に議会は奴隷撤廃の方向に進んでいる、一気にカタをつける気だろう」
「ど、どうする?」
やべえ、逃げ時か?
「いいか、明日の視察の同行メンバーになれ。後はこちらでなんとかする」
「ほんまかいな?」
「いいな、もういく」
バタン
ーガチャ
「椿様、お食事の用意が・・・椿様?どうされたんですか?外に何が?」
「ああ、すまない、少し外の空気を吸いたくなってね。」
「は、はあ」
「それより君の名前は?」
「ユイです。この度椿様付きのメイドに任命されました」
「ゆ、ユイね。よろしく」
ふざけんなよ、俺を刺した女と同じ名前かよ!顔も少しにとるわ!ちっ!まずは情報収集だ。
ー
ーー・・・
ー
「つ、つばきさまぁ、ゆ、ユイもう」
ーあれ?情報収集予定が彼女の恋心まで収集してしまったか?ふっ
ー
ーー・・・
ー
メイドのユイの情報によると毎日夜中にテラスで酒を飲むのがクリス王女の日課らしい。
はあああ、会いたくねえが、直で頼むしか道はないだろう。
逃げたいわ、くそったれ