男の闘い
ー3日前
「しっかしなー、俺が潜入するとかうまくいく気がしないんだけど?」
なんせ、俺は顔以外なんの取り柄もない人間だ。
まあ、その顔が良すぎるのも問題かな?ふぅ
目の前にはキースがいつもの能面ヅラで紅茶を飲んでいる
「椿、君ならなんとかするさ。君は自分が思っている以上に優秀な男だ」
・・・ふっ、わかってるじゃねーか。
「作戦はシンプルだ。我らのパトロン貴族の名前を使い君を第三王女の側近に捻じ込む。後は信頼を得て失脚のネタを掴めばいい」
「信頼を得る?どうやってだよ?ちなみに体は使えないぞ。間違いなくメリーに殺される」
「ふっ、そんなことは当たり前だ。君にはアービガルド奴隷館の情報をネタにして貰う、目下、彼女の最大の目標はアービガルドにおける奴隷制度の撤廃だ。アービガルド奴隷館の弱みは何より得難い情報のはず。
もちろん情報の真実は一割程度のデタラメなものを渡す。しかし、一割でも正確なら後は君の口八丁で信用を得ることは難しくあるまい?」
「ふーん、しかしなんで奴隷館を潰したいんだ?王女様はさ?」
奴隷館の仕事は人道的には最低だが需要と供給のバランスは取れている。奴隷に人権がないわけじゃないし、一定の権利も認められている。必要悪と言っていいラインだと思うがなー。無くなった方が困らないか?この国の司法制度では犯罪者や破産者の末路は死刑か奴隷落ちかの二択だ。それが犯罪の抑止になっている部分もあるだろ?考えてもわからんわ
「第三王女などと大層な立場だが実際にはお飾りさ。議会での力は無いに等しい。だが第三王女はどうやら次期筆頭王女の座を狙ってるらしい。今回の奴隷制度撤廃はその足掛かりだろう。300年以上続く奴隷制度を撤廃した王女ともなれば嫌でも歴史に名が残る。
民衆には奴隷制度に反感を持っている人間も少なくない。まあ、此れも想像ではあるが」
・・・勘弁してくれよ、俺に狸のばかしあいに参加しろってか?嫌な予感しかしねえわ
ー
ーー・・・
ー
ー的中やんけ!ボケキース!あのカスほんま許さんでしかし。帰ったら、あのキレイな顔スペル○だらけにしてやるからな!くそったれが!
ー内心悪態をつきながらあたりを見渡す。
拘束された俺は狭くて臭い牢屋に入れられている。
ジャラジャラ
両手は片方ずつ鎖で壁に繋がれている。キリストかよ?肩痛い。クソビッチが。話とか聞く気ないんかい。あんな直情的なやつが政治の世界で何出来んのよ?
あー地獄から抜けたと思ったらまた地獄かよ!全員死ね!
ガチャ
「あら、意外と元気そうね」
第三王女クリス様登場。しかも一人かよ。しかしこいつもツラだけは上等だな。長い金髪を巻き巻きしてお蝶夫人みたいだ。年は俺と同じくらいかな?
「さて、椿 圭介とか言ったわね?あなた、アービガルド奴隷館に最近入った男娼でしょ?大方奴隷制度撤廃を止めるための捨て駒として送り込ませたんでしょうけど、甘すぎるわ。アービガルド奴隷館の名前を出したのは失敗だったわね?」
「どういうことだい?」
「バラン伯爵が全部吐いたわ、まあ此れももっと早く吐いてくれれば殺さなくて済んだんだけど」
キース、アナ○開発したるわ。全部バレとるやないかーい!こりゃこのままじゃ死ぬな。頼むぜ、椿 圭介ペラ回せ!考えろ!いまやらなきゃ死ぬだけだ。
「確かに俺はアービガルド奴隷館に奴隷として飼われていた。だが俺はあいつらの味方じゃない!あいつらは俺の家族を殺したんだ!だから俺は復讐の機会を待っていた!屈辱に耐えながら長い間な!その時だ!あんたの言う通りあんたの側近になる密命を受けた!失脚するネタを探せってな!チャンスだと思った!嘘の情報を渡せと言われたが、俺はアービガルド奴隷館を潰して欲しいんだ!クリス女王、俺の情報は全部本当だ!俺を殺せば後悔するぞ!」
どうだ、オスカー賞もんだろ?イケメンすぎる
「よくもまあそんな程度の演技で私の前に来れたわね?恥を知りなさい、下郎」
あかーん!節子、これあかんやつや!
「嘘じゃない!ほんとうなんだ!ーがっ」
腹を蹴られた、、くそったれが、王女の癖にはしたないんだよ
「なんで私が側近を連れずに来たと思う?私ね、あなたみたいな美しい男が大好きなの。あっ、違ったわ。大好きなのは美しい男をなぶり殺すこと!ふふっ」
や、やばい、こいつはメリーよりー
瞬間、クリスの指から光の球が出た。どこか非現実的な光景に目を奪われる。その光の球がゆっくりと俺の右腕に触れて、消えた
・・・なにも起こらないー
バキッ!バキバキ
「ぐああああ!う、腕が折れ?なんだよこれええ」
「あらー?意外と魔法耐性高いじゃない?今のは腕を吹き飛ばすつもりでやったのに。いいわ、あなた!濡れてきちゃった。魔法より肌の触れ合いの方が楽しいものね」
「ーく、くそったれ、王女だかなんだか知らねえが目先の欲望に目が眩んでいいのかよ!俺の情報があればアービガルド奴隷館は潰せる!ーガッ
また殴られる、今度は拳で。歯が折れた
「どうせ、今のままでも時間の問題よ。それより楽しみましょう?私、もうぐちゃぐちゃなの?こんなの初めて」
ー
ーー・・・
ー
バキッ、グシャ、ガンガン、ドゴッ、バキバキ
どれくらい時間が経ったか覚えてない。片目は抉られ、耳は削がれた。歯は前歯数本を残して無くなり、肋骨、腕、足の骨は複雑に折られている。俺はもう声もあげられない、目の前に広がるのはー赤、垢、朱、緋、紅、赫
「すごいわ!あなたまだ死なない!すごい!イッてる!わたしさっきからずっとイッてるのよ!あぁすごい!これはSEXよ!すごいすごいすごい!」
クリスは最早正気ではない。圭介を殴りながら自分のパンツに指を入れていた。返り血を浴びるたび絶頂に達している。
「ねえ?圭介?死んだ?もう死んだ?」
「ぁ、、ぁ、ぎ、、ぉれ、、」
素晴らしい!素晴らしすぎる!これだけやって死なない男がいるなんて!クリスはもはやまともに喋れない圭介の言葉を聴こうと耳を近づける
「なに?なにを言ってるの?ダーリン」
恍惚とした表情で自分の耳を圭介の口につけるクリス。
「次は、俺の番だろ?くそったれ」
瞬間、数本残った歯でクリスの耳を噛みちぎった。
圭介は最後の力を使い切りそのまま意識を失った。
「~~!!ぃぎゃああああああああ!ああああああああああ!あ、あ、あは、あははは!あなたそうなのね?私と一緒なのね!すごいわ神様!素晴らしいわ!まさかいたなんて!私と同志がいたなんて!ビー!サザビー!今すぐきなさい!」
ダダダダダッ
「クリス様!ーうっ!こ、これは?クリス様お怪我を?」
筆頭側近のサザビーマクスウェルは女王の声に反応し拷問部屋に入った時の事をいまでも悪夢に見るという。
そこにはほぼ原型を留めていないグロテクスな男と耳から大量の血を流しながら恍惚の表情を浮かべる王女がいた。
壁という壁に肉片が飛び散り、排泄物が散乱している。
「ビー、治療師を呼びなさい。この男を治して。死んだらあなたを殺すわ」
生きているのか?これが?
「はっ!はい!しかし、クリス様のお怪我の治療を先に!」
「バカね、ビー。これは愛よ。あたしこの男を愛しているの。治療なんか必要ないわ」
希望のロープは切れていた。
後は堕ちるだけだ。
この地獄の底まで