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パラサイトワールド   作者: 猫の口
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初めての寄生

目を開けると、そこは異世界だった。

なんて最初はわかるはずもなく、奇妙な夢でも見ているのかと思っていた。

妙に視界が低く、ありとあらゆるものが巨大に見える。

視界の端にちらつく、メニュー欄なるものを選択し、ステータスを開く。

そこには、種族『寄生生物(パラサイト)』レベル『1』 スキル『寄生』という能力が書かれていた。

寄生生物……、寄生生物というとあれか。

フラッドとか、ネクロモーフとか、あんな感じのだろうか。

俺は知らない間に寄生生物になっていた……?

段々と脳がクリアになっていき、事の重大さを認識し始めた俺は、とりあえず現状を確認すべく、実にモタモタとした速さで、地面を這い始めた。

俺は、都内の会社で働くアラサーのサラリーマンだった。

休日なんてものがない、実にブラックな会社で、俺は口癖のようにヒモになりてーだなんて言っていたものだ。

こうなる直前の記憶を呼び起こす。確か泊まり込みで働いていて、デスクで書類の確認をしていたはずだ。

もう何日も働き詰めで、心身ともに限界が訪れていた俺は、強烈な睡魔に襲われてに机の上に突っ伏した。

それが思い出せる最後の記憶だ。

もしかすると俺は、あれで死んでしまったのか。

過労死とは、テレビで度々そういった報道を見たことがあったが、まさか自分がそうなってしまうとは。

眠眠打破が、10本を越えたあたりで流石に睡眠を取るべきだったのだ。

しかし、片付けなければならない仕事も山盛りで、どうしようもなかった部分があるのも事実だ。

しばらく這いずると、俺はあるのかないのかわからないほど小さい鼻をスンスンと動かし、微かに漂う血の匂いを嗅ぎつけた。

人間としての自分とは別の自分がなにをするべきなのか理解していたのか、半ば無意識のうちに血の香りの元へと体が動き出していた。

どれくらい這い回ったのか、俺はついに1羽のうさぎを発見していた。

一見すると普通のうさぎだが、額に一本の角が生えており、俺はやはりここは地球ではないのかもしれないと疑いを強めた。

どうやら罠にかかったらしく、後ろ左足がトラバサミにがっちりと捕まっていた。

鋭利な刃先が、肉に食い込みそこから血が流れている。

暴れた後なのか、もはやこれまでと諦めているのか、うさぎはピクリともしない。

俺はうさぎの体にゆっくりとよじ登ると、耳の穴から体内に侵入し、寄生を開始した。

脳に到達すると、無数の触手を伸ばし、脳に絡みつけていく。

触手を介して、様々な情報を読み取っていく。

種族『ホーンラビット』 レベル『2』 スキル『健脚、聴力強化、頭突き』等々。

ホーンラビットの脳を完全に掌握したところで、ピコンとメニュー欄が開き、スキルツリーというものが解放されていることを知らされた。

どうやら、経験値を得ることで、スキルポイントなるものを獲得し、それを使って自身の能力を強化していけるようだった。

スキルツリーは大まかに分けて三つ。

『暴走』、『狂化』、『感染』を主としたスキルを得ることが出来るゾンビ型。

『洗脳』、『変異』、『吸収』が軸の、フラッド型。

『強化』、『進化』、『補正』等の、宿主を強化する共存型。

他のタイプと共通するスキルもあるらしく、自由度はなかなか高そうだ。

とりあえず、初めての寄生による経験値を使い、『修復』と『再生』、『操作』を取得する。

体を少し動かしてみると、感度良好、自分の体のように動かせるようだ。

神経まで繋げたせいか、トラバサミに挟まれた足の痛みが俺にまで伝わってくるようになっていた。

俺は体を操作し、器用に前足を使い、トラバサミから足を引っこ抜いた。

前足も後ろ足もトラバサミで傷ついたが、修復と再生を発動させることで、傷はみるみるうちに塞がっていった。

修復は、俺自身の触手で治療し、再生は、うさぎ自身が持つ再生能力を促進させる効果があるようだ。

自由になった俺は、慣れない4本足での歩行に苦労しながら、ヨタヨタと進みだした。





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