その一 ハードロックは辛くない?
「お疲れ様で〜す!」
金髪のロングヘアにサングラス。つばの小さいベレー帽。
真っ赤なミニスカートにレンガ色のロングブーツ。
靴や衣装、そしてゴールドのマイマイクがはいった大きなかばんを持って
ライブハウスの機材搬入口から中にはいる。
もう何回も何十回も、いや、何百回もやってきたこと。
あけみの自慢は、20代から変わらないBWHのスリーサイズ。
40でミニスカートが着こなせる体型は自慢だ。
サイズは変わらなくても張りとかつやが微妙に変わった気もするけど
目をつぶる。
今日のライブハウスは地元では有名なハードロック&ヘビーメタル系のハコ。
ライブハウスをハコというのはミュージシャンだけなのかな?
なにしろ幕が下りる代わりに分厚いシャッターが下りる。
昔メタルのライブで興奮した客がステージにビール瓶なんかを投げつけたから、
そんな危険からミュージシャンを守るため、
危ないことがあったらいつでも下ろせるようにシャッターをつけたって話。
しかしね、シャッターが完全に開くまでに一分ってどうよ。
中途半端にステージが見える時間としてはかなり長い。
しょっぱなで客の気持ちをつかみたいし、
このシャッターが開いていく一分はすっごい大事。
今日歌うバンドはレギュラーで毎週リハしてるバンドじゃなくて
ライブ前にあわてて一度合わせただけのセッションバンドだから
シャッター開いてる間どうするか決めてなかった。
あのリーダーやってるベーシスト、オープニングのサウンドエフェクトなんて
つくってくれてないだろうなぁ。
曲の前奏をギタリストが長々とソロっぽく引き続けるのかなぁ。
ベーシストは長身。やせて無口で、結構タイプ。
ギタリストはかわいい系だな。もうちょっと若かったらジャニーズでもいけるかも。
ま、どっちも私の半分くらいの年だけどね。




