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45 護憲派 対 改憲派

日頃よりご愛読いただき、心から感謝しております。

当面のあいだ更新が不定期となりますこと、何卒ご容赦ください。

今後ともよろしくお願い申し上げます。

第6章 浮かび上がる輪郭  第45話 護憲派 対 改憲派 


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


交錯する各国の思惑は、

なおも、その緊張度を高め続けていた。


日本もまた、その例外ではない。


護憲派 対 改憲派——


いま国は、

いまなおその一点において、深く分断されている。

そして、日本近海における開戦すら、現実味を帯び始めた今、

アメリカ海軍第7艦隊出動に対し、日本は同行するべきか否か。

その是非が、激しく論じられていた。


中国は、日本にとって、極めて重要な貿易相手国である。

その現実を前にして、安易な敵対は許されない。

——許されるべきではない。


だが、それだけではない。

日米安全保障条約の解釈。

アメリカ軍が攻撃を受けた場合、

たとえそれが、自ら東シナ海へ進出した結果であったとしても——

日本は、どこまで関与すべきなのか。

その問いは、多くの世論を巻き込みながら、波紋を広げていた。

さらに、アメリカからの要請を拒むことは、

同盟関係に亀裂を生むのではないか。


応じれば、対中関係が揺らぎ、拒めば、対米関係が揺らぐ。


いずれを選んだとしても、代償を払うことは避けることはできない。

もはや問われているのは、個別の是非ではなかった。

日本は、どこまで国際社会に関与するのか。

それは経済の話ではない。

軍事という現実に、どこまで踏み込むのかという問いだった。

安全保障という概念において、

その領域は、すでに切り離せないものとなっている。


これまで通り——

後方支援に留まり、実戦から距離を保ち

平和憲法によってやり過ごすような立場は、

もはや許されなかった。


不思議なことに、国内の分裂が深まるほど——


両者の思惑は、同じ方向を向いてるはずだった。

国を憂い、

不安や恐れを取り除こうとしているはずなのに。


それでも、同意も、妥結も成立しない。


なぜか——


どちらも恐れている。

しかし、その見ている未来は、決定的に異なっていた。

護憲派にとっての脅威は、

国家が戦争へと手を伸ばす、その「瞬間」にある。

改憲派の脅威とは、国家が崩れゆく、その「過程」にある。


本来であれば、その差異こそが、

一つの構造として、繋ぎ合わされるべきものだった。

たが、現実には——

それは共有されることもなく、

国家の進路として整理されることもなかった。

ただ、「選択の違い」として処理されるのみだった。


その結果、対立だけが際立ち、

やがて、制度の外側に押し出されていく。


決断が迫る中で——

残されたのは、

互いに自らの正当性を、証明しようとする衝突だけだった。

そして、そのどちらもが、

国民のためであると、疑ってはいなかった。


ただ、誰もが薄々、感じていた。

目の前に暴漢が現れたとき、

国家に求められるのは、

暴力に向き合う覚悟なのか。

それとも——

外交による、議論の時間を引き延ばす選択か。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


アメリカの強硬な動きを察知したのだろうか、

台湾海峡に展開していた中国海軍は、

その規模を、少しずつ縮小していった。


さらに——


中国は、あえて異なる一手を選ぶ。

武力ではなく、融和という手段を。

台湾に対する姿勢は、明確に“変化”を伴って現れ始める。


これまで制限されていた輸入出品目は緩和され、

経済的な往来は、再び静かに開かれていく。

それは単なる政策転換ではなかった。


「一つの中国」——


その理念を、

武力ではなく“利益”として提示する試み。


台湾市民に対しては、対立ではなく共存を。

圧力ではなく、選択肢を。


そして同時に——


国際社会に向けても、別の物語が語られ始める。

中国は争いを望んでいない。

地域の安定を乱しているのは、

むしろ外部から軍事的圧力を持ち込む勢力である、と。

暗に示される“その対象”は、言うまでもなかった。


——アメリカ。


武力を前面に押し出す国と、対話と経済を掲げる国。

その対比は、意図的に、そして慎重に、

国際世論へと投げかけられていく。

戦いは、すでに始まっていた。


だが——

この動きの本質は、別のところにあった。


南シナ海。


その海域において進められていた、

中国による海上警備の強化。

それは“安全確保”の名の下に、

航路の管理を、より強く、より広く掌握していく動きでもあった。


臨検。

進路変更の要請。

通過に対する事実上の監視。


それらは一つひとつは小さくとも、

積み重なることで、確実に流れを変えていく。


海上輸送は、目に見えぬ形で滞り始めていた。


到着の遅延。

航路の迂回。

そして——保険料の上昇。


その影響は、

やがて静かに、しかし確実に、

各国の経済へと波及していく。


中国は「争いを望まない」と語りながら、

自国の正当性を国際社会に提示する。

その足元で——

“海”という基盤そのものを、書き換えようとしていた。

それはもはや、軍事行動ではない。

制度を盾に、支配構造を再定義する行為だった。


あるいは——


東側諸国が裏で連携し、

広大な海に、見えない糸を張り巡らせていく。

それは、巨大な蜘蛛の巣を仕掛け続ける行為なのかもしれない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


中国が海を制度で囲い込み、

アメリカは、それを軍事で押し返そうとする。

その狭間で——

日本は、そのどちらにも巻き込まれずに済むことを、

ただ望んでいるように見えた。


目の前で事件が起きても、

「厄介ごとに関わらず、目をそらし、やり過ごす」

それは、どこにでもいる一個人の振る舞いでありながら、

同時に、日本という国家そのものを映していた。


だが——


海に依存する国家である以上、無関係ではいられない。


護憲派と改憲派で割れたように、世論は再び分裂されていく。

中国の行動を、秩序の再構築とみるもの。

あるいは——

それを単なる懐柔策と断じ、拒否すべきだとするもの。

解釈をめぐり、亀裂だけが深まっていった。


専門家たちは、その差異を丁寧に、そして延々と解説し続けた。

時に、それぞれに名称すら与えながら。

メディアはこぞってその分裂に光を当て、

視聴者に「どちらが正しいのか」を問い続けた。


だが——

日本は、何を望んでいるのだろうか。


「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」


そう説かれて久しい。

だが、日本は己を知っているのだろうか。


相手を分析し、その動きに応じて、自らの立場を変え続ける。

それは、臨機応変とも言える。

だが同時に——

自らの軸を持たぬ、優柔不断にも見える。

国家としての意思、誇り、守るべきものは

いったいどこにあるのだろうか。


日本国が主体となって、

国家像を描き、国家の行く末を導いていく。

そのためには、明確な未来を見定めたビジョンが必要だ。


計画には、徹底した具体性が求められる。

困難も伴うだろう。

幾度も見直しを迫られるはずだ。


だが——

その長期的な展望を、いかに維持し続けるのか。

そのための体制そのものを、同時に設計しなければならない。


上善如水じょうぜんみずのごとし


老子の言葉であり、

孫子もまた、その思想を兵法に取り入れていた。

柔軟であること。

それは、折れないための条件でもある。


水とは、全てを潤すが、争わない。

低きに流れ、濁流すら受け入れ、

やがて大海として、すべてを内包する。

見えない統治こそが、最も強い統治とされた。


だがそれが、国家の核心というのなら、

なぜそれは、どこにも記されていないのだろうか。


秘めたる野心なのか。

あるいは——

最初から、存在していないのか。


国内の論争は、依然として——

明確な対立を除けば、税と数字。

そして、人の行動の是非を裁くことに終始していた。


だが——

そのどれもが、

「何を基準にしているのか」

その一点には、触れようとはしない。


戦後、日本は復興へと向かい、

やがて経済大国へと至った。

その過程においては、

官も民も、同じ方向を見ていた。


しかし、豊かさを手にした今、

かつての夢や目標は過去のものとなっている。

それにもかかわず、

この現状こそが到達点であるかのように扱われ、

誰一人として、国民にとっての

「さらなる幸福な未来」を描けてはいなかった。


先人の遺した偉業を前に、

誰もが足を止め、

その延長線の上でしか、物事を語ろうとはしない。


QOLクオリティ・オブ・ライフ——

それは、物質的な豊かさを超え、

生きる喜び——すなわち、精神的な充足を

重視する生の在り方である。


だが、この本質に気付き、それを求めるのは、

多くの場合、余命を宣告されたときに限られる。


なぜ——

人は、若く健康なうちから、

そうした生き方を選ぼうとしないのか。


いや——

なぜ国家は、

そのような生き方を前提とした社会を、

構築しようとしないのだろうか。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



※ 本作は近未来を舞台にしたフィクションです。

現実の政治・社会と重なる部分があるかもしれませんが、

登場する団体・人物・名称はすべて創作であり、

特定の組織や個人を批判する意図はありません。

本作は『国家再編計画書』の理念と制度設計を参照し、

国家構造の再構成をめぐる可能性を探る仮想的シナリオとして

構成されています。


※ 作中の政党名はリアリズムを高めるため、以下のように置き換えています。

自由党・公免党・民立党・民国党・参節党・一心の会・れいの真誠組・共同党・

社守党・日本維持党・チーム将来・中革連 など

(ストーリーの進行に応じて変動・追加される場合があります)



※ 本作は物語を補完しながら進めているため、すでに投稿済みのお話にも、

必要に応じて加筆や修正を行うことがあります。

ストーリーに関わる大きな変更を加える場合には、まえがきでその旨を

お知らせしますが、ここで主にお伝えしたいのは、文章の細かな表現や

ニュアンスに違和感を覚えたときに行う、ちいさな手直しについてです。


※ なお、本作の文章推敲や表現整理の一部にはAI(ChatGPT)の

サポートを利用しています。

アイデアや物語の内容はすべて作者自身のものであり、

AIは読みやすさの調整や資料整理の補助のみを行っています。

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