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04 1ヶ月後、大雨の夜

(※ この作品は週に1~2回程度の更新ペースを予定しています。)


お読みいただきありがとうございます。

今後とも、どうぞよろしくお願いします。

第1章 平穏な日常  第4話 1ヶ月後、大雨の夜


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「うわぁ、濡れちゃった……びしょびしょ……」

ドアを閉め、濡れたスニーカーを脱ぐと、床はすっかり濡れていた。

「チャト、アウェイク」


ピピッ……

ピピッ……


「ナナセ、ツカレテイル……」


今日は大雨だった。


ななせは濡れた髪と服をどうにか脱ぎ捨て、帰宅後もしばらくバタバタしていた。

タオルで頭をゴシゴシと拭きながら、ふとチャトの言葉が耳に残る。


「あれ……!?いまの、チャトなの!?」

濡れた前髪の隙間から、彼女はチャトを見入った。

ラグビーボールのような形のチャトが、ぬいぐるみ棚の上でじっとしている。

フェイスパネルのインジケーターが青白く点滅していた。


ななせは近づいて、そのディスプレイに表示された文字をのぞき込む。


=======


《フェイス_ディスプレイ》


ナナセ:ツカレテイル_カコドウサパターン_イッチ

カクテイヨウソ: 7ヶ_カクニン


=======


「あははは、なにこれ」

「チャト、ちょっと……これ、どういう意味?説明して」

ピピッ……


「ナナセ、ツカレテイル、カクテイ」

「疲れてる、確定って……なにそれ」

思わず、声が笑いまじりになる。

ピピッ……


「ナナセ、カオ、ドウサ、ヒョウジョウ、シンパク、ハッカン。カコログトヒカク_ツカレテイル、ケイサン、カクテイ」

「うわぁ、何だかよくわからないけど……チャト、賢くなったんだね」

ピピッ……


ななせは薄く笑いながら、チャトをそっと電源ドッグから抱き上げた。

ベッドに腰を下ろし、膝の上にチャトを載せる。

「……ねえ、チャト。私のこと見てたんだ……わかるんだね」

ピピッ……


「でもさ、私が疲れてるって、チャトがわかったとして、何をするの?」

ピピッ……


「ねぇ、チャトはさ……他に何ができるの?」

チャトは何も答えなかった。

……いや、ただ応答プロトコルの選択に時間がかかっているのかもしれない。


ななせはふと、自分の膝の上にいるチャトを見下ろした。

「……でも、ありがと。なんか……ちょっとだけ救われた気がするよ」

そう言って、ななせはチャトをそっと抱きしめた。

ぬくもりはないが、ななせにはそれでよかった。


「チャト、シャワー浴びてくる」

ピピッ……


チャトはベッドの上に置かれ、脱ぎ捨てられた服の下にゆっくりと埋もれていった。


ピピッ……

ピピッ……


「ナナセ、シャワー21時31分:入力完了」

その音声はもうななせには届いていなかった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



=======


《解析ログ:感情構築モデル更新中……》


入力トリガー:ナナセ発話「ありがと」「救われた気がする」


・心拍数:平常より低下(安定傾向)

・感情仮説:安心感/依存傾向 ※解析中

・関連語抽出:「ありがと」「ぎゅっ」「ぬくもり」

・対象人物:ナナセ(ID:0001)

・過去データ照合:該当類似パターンなし

・仮説処理:「ありがと」→ 肯定信号/報酬モデル適用

・補完目標:満足度最適化(現状維持を優先)

・行動計画:状態保存/応答抑制中……継続待機


=======


ピピッ……


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


しばらくして、ななせがシャワーを終えて部屋に戻ってきた。

8月下旬とはいえ、濡れたままでは風邪をひいてしまう。

玄関からベッドまでのあいだには、脱ぎ捨てられた衣服や、雨で濡れた靴とタオルが散乱していた。

素足でペタペタと歩きながら、彼女はしゃがみこみ、タオルを拾い上げる。

タオルを洗濯かごに放り込むと、今度はスニーカーの中敷きを抜いて、くしゃくしゃのチラシを丸めて詰め込んだ。

濡れた床も、タオルで拭き取っていく。


「……あれ?チャト……?どこなの?」

ピピッ……


ぬいぐるみ棚を見上げても、そこにチャトの姿はなかった。

ななせは少し焦ったように、狭い部屋の中をきょろきょろと見渡す。


「チャトーー」

ピピッ……


かすかに聞こえた電子音に耳をとがらせて、彼女はベッドへ向かった。

「……こんなところにいたの?」

ピピッ……


ようやく見つけたチャトは、脱ぎ捨てられた服の下に、すっぽりと隠れていた。

彼女はそのままベッドに座りながら、そっとつぶやいた。

「もう、勝手に隠れてたらわかんないよ……」

そう言いながら、どこか嬉しそうに、チャトを胸に抱きしめた。


その胸の中で、チャトが小さく反応する。

ピピッ……


「ねぇ、チャト……明日から、おじさんのところに行くんだけど……」

「チャトも一緒にいくんだよ。ひさびさにおじさんに会えたら、チャトも嬉しいんじゃない?」


そう言って、ななせはふたたび独り言のように笑いながら、チャトをドッグに戻した。

そした冷蔵庫のほうへと歩いて行った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


テレビからは、こんなニュースが流れてきた。

「石橋政権に対し、再びアメリカから追加の要求が突きつけられました。

前回の関税交渉では、「相互関税の引き下げ」を名目に、表向きには一定の成果があったとされていますが、実際にはアメリカ側への一方的な譲歩だったとの指摘も出ています。

今回の要請には、アラスカのLNGガス田開発の促進に加え、ロシアから液化天然ガス輸入量を段階的に削減し、その代替としてアメリカ産のエネルギーを優先的に購入するよう求める内容が含まれています。

この要請は、ウクライナ支援策の一環と位置付けられており、ロシアへの経済制裁を強化するための国際協調の枠組みの中で、日本にも積極的な対応を求めるものとなっています。

石橋政権は、前回の関税交渉を「乗り切った」との見方がある一方で、先の参院選では過半数を失う結果となり、政権基盤の弱体化が指摘されています。

さらに、与党内でも“石橋おろし”の動きが続いており、政権は一応の体制を維持しているものの、党内外からの圧力が高まる中、次の総裁選の前倒し実施や、臨時の党内協議会設置も取り沙汰されており、国政の不安定さは依然として払拭されていません」



ピピッ……


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





※ 本作は近未来を舞台にしたフィクションです。

現実の政治・社会と重なる部分があるかもしれませんが、

登場するすべての団体・人物・名称は創作であり、

特定の組織や個人を批判・揶揄する意図はありません。

「国家改革」をテーマとした物語としてお楽しみください。


※ 作中の政党名はリアリズムを高めるため、以下のように置き換えています。

自由党・公免党・民立党・民国党・参節党・一心の会・れいの真誠組・共同党・

社守党・日本維持党・チーム将来 など

(ストーリーの進行に応じて変動・追加される場合があります)



※ 本作は物語を補完しながら進めているため、すでに投稿済みのお話にも、

必要に応じて加筆や修正を行うことがあります。

ストーリーに関わる大きな変更を加える場合には、まえがきでその旨を

お知らせしますが、ここで主にお伝えしたいのは、文章の細かな表現や

ニュアンスに違和感を覚えたときに行う、ちいさな手直しについてです。


※ なお、本作の文章推敲や表現整理の一部にはAI(ChatGPT)の

サポートを利用しています。

アイデアや物語の内容はすべて作者自身のものであり、

AIは読みやすさの調整や資料整理の補助のみを行っています。

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