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第1話


「好きだ」


 不意に出たその言葉に、自分自身が衝撃を受けた。考えていた告白プランをすっ飛ばして、いきなりその言葉が出たからだ。


 目の前に居る女子、姫代(ひめよ)は特に表情を変えることもなく、こちらを見ていた。



 え、聞こえなかった?

 

 荷物を一つ挟んだ至近距離なのに?


 それともアレか、言葉の意味を理解できなかったとか、そんな感じだろうか…?


 それなら、まだ誤魔化せる!


「あ、あーお腹が空いた、なー」


「さっきお昼食べたじゃない」


「あー、と……少なかった、のかも…ちょっとその辺で木の実でも探してこよっかなー」


 俺はわざとらしいと判りつつも、その場を離れようと彼女から視線を逸らした瞬間



 目が合った



 同じ班の仲間である女子、トモセと。


 割と近い木の影に隠れながらこちらを見ていたのだ。


 いや、告白…聞かれて、ない…よな?


 そう願いながら彼女(トモセ)を見ると口元に手を当てて悶えていた。



 聞かれてるうぅぅうぅぅぅ!!??



 あまりの衝撃に変顔をしていると、姫代がそれに気付いて俺の視線の先を見た。


「トモちゃん! お帰り」


 パッと満面の笑みでトモセの方へと駆けて行く姫代を見ながら俺は頭を抱えた。


 いや、アイツに聞かれてないだけマシか…。


「すきだ」


「!?」


 突然背後から聞こえた声に驚いて振り返ると、草をこちらに差し出しているゴーエイが優しく微笑んでいた。


「ななななななななななななななな何だよっ」


「何をそんなに慌てているんですか? ほらコレ、スキダって言う草なんですよ」


「そんな草知らねーんだが」


「教科書や図鑑にも載ってますよ? ほら」


 ゴーエイは空中にポンっと図鑑を出現させ、こちらに該当のページを見せて来た。


 さすが魔法使い、分厚い本の中のページを簡単に開いてみせる。


「で、その草が何だってんだ?」


「お腹が空いているのなら食用にどうかと思いまして」


「……聞いてやがったのか…っ………で、その草で腹が膨れるって?」


 ずっと差し出されている草を俺は受け取って眺める。さっき見たような…


「これを食べると、好きな人に告白できるんですよ」


「ぶふぉわっっ!!?」


「想いを伝えたいのに言葉が出てこない、そんなアナタにこの″スキダ″を食べさせるだけで、たちまち言葉が出るんですよ」


「そんなもん俺に食わせようとすんなや!?」


「姫代さんの事、好きなんですよね?」


「!? な、そんな訳ねー(好きに決まってん)だろ」


 んんんんんん?????


 俺の意思とは関係なく何かを口走ったような


「嘘はつけないんですよね、食べた後、効果が切れるまで」


 そんなもん食った覚え———


「昼飯かよ!? 何の為にっ」


「それはユシヤさん、アナタの気持ちを確かめる為です」


「はああっっ!?」


 全く意味がわからない


 コイツが俺の好きな人を知った所で何になる?


 班で合流した時に初めて顔を合わせて初日だぞ?!


「まさかお前…俺の事が好きでワンチャン賭けたとかじゃねーだろうな??!」


「そんなわけ無いじゃないですか」


 冷たい視線で否定された。


 ゴーエイは眼鏡をくいっとあげてから、改めて俺に向き合った。


「僕はあなたの恋を応援します」




「———なんで?」



「詳しい理由はまだ話せません、生死に関わることなので」


「急に重いな!? 話が飛躍し過ぎじゃないか??」


「卒業試験の旅は長いんです、じっくり行きましょう」


「誰かさんのせいで初日にいきなり告っちまったんですけど?!」


 言いながら、俺とゴーエイは姫代たちと合流するべく歩き出した。実際そんな離れてないけどね。




 冒険者等を育成する学校、2年間のカリキュラムを経て1年をかけて実習形式の卒業試験が始まった。


 各学科からランダムに集められたメンバーで班を作り旅に出る。


 だから、偶然彼女(姫代)と同じ班になれたのはもの凄い幸運な事なのだ。


 校内で見かけるだけで、まともに喋った事も今日が初めてなのだがね。



 そう、旅は始まったばかりだ。まだ———



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