(5)家の暖かさ
風呂から上がり先程のベットがあった部屋に戻るとリアスはデスクで何やら書き物をしている。
現在、令和の時代には書き物をする機会が勉強以外にほとんどない、本来スマートフォンやパソコンなどデジタル機器を使ってメモなどをするが、今の日本が何者かによって乗っ取られた状況で、ほとんどのインフラが整っていても通信が一切行えない、つまりウインドウ以外に連絡手段がない。
「――あら、あがったのね」
「おかげさまで風呂に入れてます…」
「いいのよ、あなたと私はもうフレンド関係でしょ!それに敬語じゃなくていいわよ」
相変わらずめっちゃ優しい。相手が同い年の女子なのもあってまともに同級生の女子と話したことない自分にとっては何話せばいいかわからず気まずい。しかも自分より身長が高い美少女だ。
そうして脳内であたふたしていると向こうから話を振ってくれた。
「あなたは、この世界についてどれくらい知ってる?」
「いやほとんど何も…クエスト通りに家族を◯してしまったり知らない人に通り魔かけたりモンスターに挑んでぼこぼこにされたり…」
「あー…、じゃあ私が教えてあげる!」
「いいんですか?裏切られるかもですよ」
「だって君弱いじゃん」
「ウグッ」
かわいい顔と声して真正面から事実突きつけられた。この女やりおる、、なんて思ったが目の前の笑顔がそれを忘れさせる。
「じゃ、じゃあ教えてください」
「いいよ〜まずはデスゲームの運営のお話から」
――聞いた話を要約すると日本だけでなく世界各国でもこのデスゲームが始まっているということ。
そしてデスゲームで死んでしまった場合’’月’’と呼ばれる場所に強制送還されるという2点が印象に残った。
「つまり、ゲームの運営は月に大量の人々を送り込む技術を持っている、ということですか?」
「いや地球のまわりを自転している月ではなくて、具体的な場所はわからないが地球上に’’月’’と呼ばれる場所があるらしいのよ。」
「なるほど…じゃあ死んだように見えても蘇生して閉じ込められるという解釈ですか?」
「おそらくはそう。ただ全員がそこに送られているという確証もないし私達が死体が蘇生されて送還されているという現場を見たわけでもないからなんとも言えないわ。」
「あとひとつ、関係ないことで質問なんですけど」
「なあに?」
「武器とかポーションの仕組みって解明されているんですか?」
「専門家とかも一生懸命分析しているらしいんだけど全くわからないと今朝知り合いから聞いたわ」
「これで最後です、あの、その」
「?」
「俺を、あなたの、弟子にしてくれませんか?」
「わ、わたしの!?」
うんうんと頷くと
「えっと、私なんかが師匠でいいの?」
「いやリアスさん、いやリアスだからこそ自分の師匠になってほしいんです!」
「あの…急すぎて話が全然わからない、ごめんね…この話は一旦保留でいい?」
「ぜんっぜんだいじょうぶです!」
やっぱそうなるよなぁ。フレンド関係になって親切にしてもらってもいきなり弟子にしてくれるような都合のいいことはないだろう。
「えっと…じゃあ私隣の部屋にいるからなんかあったら呼んでね」
困らせてしまっただろうか。相手との距離感を完全に間違えたって感じだ。
リアスが部屋から出たタイミングで急に眠気が襲ってきたのでベットに入ることにした。
一日ぶりの布団だ…なんて考えながら意識は闇に落ちていった。